2009年の農地法改正をきっかけに、農業に参入する企業が増えています。戦後、農業は土地所有者が耕作する自作主義が前提でしたが、食料自給率の低下、休耕地の増加、後継者不足など、さまざまな問題への対処が難しい状態が続いていました。

法改正により、土地を賃貸する形式であれば企業や法人などの一般法人であっても農業への参入が認められるようになり、2016年6月までに新たに2,222法人が参入しました。これは改正前と比較して5倍の増加スピードです。

一方で、参入後の経営状況は必ずしも順調ではないようです。資金繰りを支える仕組みを追いました。

民間企業の農業投資を国がサポート

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(写真=PIXTA)

農業は投資の回収に時間がかかる事業です。黒字化までに必要な年数は、日本政策金融公庫の調査によると平均4.9年となっています。この期間を乗り切るために活用が進んでいるのが、官民ファンドです。

官民ファンドは、国の政策に基づき、日本政府と民間が出資して運営するファンドで企業への投資を目的としています。民間企業だけではリスクをとりにくいものの成長が期待される分野へ公的資金を供給することでリスクを軽減し、民間資金の流入を促進する狙いがあります。

出資先の事業が軌道に乗れば、配当や収益を分配できるほか、保有株式売却による売却益も期待できます。第二次安倍内閣は、成長戦略の一つとして官民ファンドの活用を掲げており、新設や機能拡充が相次いでいます。

出資を受ける側は補助金と違って資金の使用用途の自由度が高いほか、純資産額が増え、対外的な信用力を高められるといったメリットがあります。また、専門家による継続的な経営サポートが受けられる心強さもあります。

2種類の官民ファンドで生産および6次産業化を推進

農業分野の官民ファンドには出資先・出資目的が異なる2つのタイプがあります。

一つは、農業経営の改善を目的に、農業法人へ出資するものです。民間金融機関は投資事業有限責任組合等を設立し、農林水産大臣の承認を得ることによって日本政策金融公庫の出資を受けられるので、低リスクで農業法人に出資が可能となります。

このため、地方銀行など多くの金融機関が組合を設立し、農業法人へ積極的に出資をするようになりました。投資主体はアグリビジネス投資育成株式会社のほか、ほくりくアグリ育成ファンド投資事業有限責任組合、いわぎん農業法人投資事業有限責任組合などを始めとする17組合(2017年2月現在)で、全国に広がっています。

もう一つは、農業者が主な出資者となって設立した農業関連法人に出資するファンドです。原材料供給者としてだけではなく、加工(2次産業)、流通や販売 (3次産業)など経営の多角化(6次産業化)を後押しするのが目的です。

株式会社農林漁業成長産業化支援機構(略称:A-FIVE)による直接投資のほか、地域金融機関とA-FIVEが協調して組成したサブファンドによる投資があります。産地のリレーにより野菜の通年出荷の実現、規格外野菜を活用した冷凍食品事業などへの出資が展開されています。

農業関連分野のテーマ株も狙い目

現状、一般の投資家に対して農業法人へ投資の門戸が広く開かれているわけではありません。ただし、上場企業の中にも農業分野を手掛ける会社はいくつもあります。種苗・農機具・肥料メーカーなど、農業関連株の動きを追ってみるのもいいでしょう。

投資信託では、国内だけでなく世界の農業関連企業の株式を投資対象としている「三菱UFJ グローバル農業関連株式ファンド」「みずほ・ブラックロックグローバル農業関連株ファンド」などが挙げられます。食糧ファンドまでを含めると銘柄数はぐっと増えます。

また、最近注目を集めているのが「スマートアグリ」と呼ばれる分野です。コンピューターによる栽培環境のモニタリングや、ドローンを使用して行う害虫の駆除などITおよびAIを駆使した農業をサポートする企業が続々と登場しています。IoTの流れに乗った農業関連テーマ株もチェックしておきましょう。(提供: IFAオンライン

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