2015年1月1日から改正相続税法及び租税特別措置法が施行された。相続税の基礎控除が減らされるなど、注目度の高い改正となった。この改正によって、相続税の納税義務が発生する世帯の増加が予想される。今回は相続税の控除について見ていこう。

基礎控除

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(写真=beeboys/Shutterstock.com)

遺産総額が基礎控除額以内なら相続税がかからない。つまり基礎控除額がどのくらいなのかは最優先で確認しておくべき項目で、押さえておきたいポイントだ。

この基礎控除額は、2015年の税制改正以前は「5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)」で算出されたが、2015年1月からは税制改正により「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」へ算出方法が変更になった。基礎控除額が減ったので、実質的な相続税増税といえる。

法定相続人とは文字通り、法律で定められた相続人のことである。被相続人(亡くなった方)の配偶者は常に相続人となる。法定相続人の相続順位は、第1順位が子ども、第2順位が父母や祖父母、第3順位が兄弟姉妹である。

例えば、夫婦と子ども2人の4人家族で、夫が亡くなった場合、法定相続人は妻と子ども2人の合計3人となる。基礎控除額を比較すると、2014年12月31日以前の場合「5,000万円+1,000万円×3人=8,000万円」となる。2015年1月1日以後の場合は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となり、税制改正によりこの家族の場合、3,200万円分の基礎控除が減らされたことがわかる。

法改正前であれば相続税の基礎控除内に遺産総額がおさまっていた世帯でも、法改正後はチェックが必要だ。遺産の内容にもよるが、都内に居住用不動産があれば超えてしまいそうな基礎控除額である。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、被相続人と生活を共にしていた相続人の居住用または事業用宅地の規模が一定以下の場合、最大80%減額してくれる減税制度だ。つまり、この特例に当てはまる宅地であれば、路線価で1億円の価値があっても、相続財産評価の際は2,000万円で評価してもらえるというわけだ。

2015年1月から小規模宅地等の特例も改正された。例えば居住用宅地の場合、それまで240平米だった限度面積が330平米まで拡大された。なお、該当の宅地が居住用か事業用かなど、ケースによって限度面積や減額割合が異なるので、そもそも自分たちはこの特例に当てはまるかも含めて、税理士など専門家へ相談することをお勧めしたい。

贈与税額控除

贈与税額控除とは、贈与税と相続税の二重課税を防ぐための制度だ。相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産は相続税の対象となる。この場合、贈与税と相続税の二重課税になってしまうので、贈与税額分は相続税から控除できるという仕組みが贈与税額控除である。被相続人の死亡日から3年以内に贈与を受けた記憶がある場合は、しっかり事実確認したいところだ。

配偶者控除

配偶者控除では、配偶者の法定相続分か1億6,000万円どちらか大きい方までは相続税がかからないという仕組みがある。なお配偶者の税額軽減の特例の適用を受けるためには、たとえ控除後の相続税がかからないとしても、税務署へ相続税の申告が必要なので注意したい。

未成年者控除

法定相続人で、相続や遺贈(遺言による贈与)で財産を取得したときに20歳未満である人は未成年者控除の適用を受けることができる。控除額は、20歳に達する年数1年につき10万円である。例えば相続開始時の年齢が15歳の場合、20歳まで5年あるため、10万円×5=50万円の控除となる。それまでは1年につき6万円控除であったのが、2015年1月1日を境に10万円控除へ引き上げられた。

障害者控除

障害者控除も未成年者控除の仕組みと似ている。法定相続人で障害者が相続した場合、一般障害者に該当すれば85歳に達するまでの年数1年につき10万円の控除を受けられる。特別障害者に該当すれば1年につき20万円である。この障害者控除も2015年1月1日から、控除額が引き上げられている。

相続税の負担を減らすために

上記の控除に該当すれば、相続税が軽減されるので、自分が該当するかどうか、しっかり確認したい。なお、上記の控除の他に相続が10年以内の間に連続して起こってしまった場合については、税負担が大きくなることから、それに配慮するため、相次相続控除と呼ばれるものがあるので、該当する場合には確認しておくべきだろう。

いずれにしても細かい適用要件もあるため、自分だけで判断せず、税理士などの専門家の力を借りたいところだ。また、相続税と贈与税は関連性の深い税体制となっている。そのため相続税の圧縮を考える場合、贈与税の知識も必要になるだろう。 (提供: みんなの投資online

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