長引くデフレーション(デフレ)に苦しむ日本で暮らす私たちにとって、インフレーション(インフレ)対策を行っておくことの必要性についてはあまり深刻には感じない、という方も多いのではないでしょうか。ところが、デフレが長引いてきた今の段階から、インフレへの対策を行うことも検討の余地があると言えます。

インフレに強い資産にはどのようなものがあるのか、インフレがもたらす影響とあわせてご説明します。

インフレとは

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(写真=Michael Wick/Shutterstock.com)

インフレとは、貨幣の市場流通量が需要を上回ることなどをきっかけに、貨幣価値が下がり続け、それに伴い物価が上昇し続けることを言います。一般的に、健全な経済状況においては緩やかなインフレが起こるとされています。しかし、社会情勢や国家の状況によって急激なインフレが発生することもあり、「ハイパーインフレ」と呼ばれたりします。近年では、アフリカ南部のジンバブエで発生したハイパーインフレが話題になったことを覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

資産に対するインフレの影響

不動産などの現物資産を保有している場合には、インフレはプラスに働きます。ところが定期預金や定額貯金といった一定期間金利の変動が伴わない金融資産を保有している人や、消費者物価指数の変動に応じて金額が決定される物価スライド制が不完全な年金受給者の場合、インフレによって資産が目減りしてしまうのです。

例を挙げて考えてみましょう。年利1%、預入期間1年という条件で、元本100万円を定期預金に預けた場合、預金者は1年後に1万円の利子を受け取ることができます(便宜上、税金は考慮しません)。物価上昇率が0%であれば1年後に1万円の得をしますが、物価上昇率2%のインフレ下ではどうでしょう。預入時に100万円の価値があった現金が、1年後には2%目減りし、1%の受取利息を考慮してもマイナスになります。

今からできるインフレ対策

長期にわたるデフレに苦しんできた日本社会ですが、健全な経済状況に戻れば緩やかなインフレが継続する状態に転じます。そんな来るべきインフレに備えて、インフレに強い資産形成をすることが重要となるでしょう。インフレに強いとされる次の2種類の資産について紹介します。

・ 海外通貨への置き換え
現金を海外の通貨に置き換える、つまり外貨預金をすることでインフレによるリスクを減らすことができます。インフレ下では円の価値が下がるため、円安に振れる傾向にあります。円高のときに外貨で預金しておけば、インフレ下の円安・ドル高の局面で為替差益を得ることができるでしょう。

・ 実物資産への置き換え
金やプラチナなどの実物資産に置き換えることも、インフレ対策の有効な手段の一つです。一般的に金やプラチナの価値が著しく下がることは考えにくいと言われていて、社会情勢が不安なときほど、金やプラチナの値段は上昇する傾向があります。紙幣や国債のように発行元が破綻し価値がなくなってしまうリスクがないという安心感があるためです。

不動産も実物資産の一つで、価値が下がりにくいと考えられます。さらに、不動産は運用次第で家賃収入などの収益を生むこともあるため、資産を守るだけでなく増やす働きも期待できます。

長期的な視点でインフレーション対策を

インフレによる資産の目減りを防ぐには、上述のような対策をしっかりと考えておくことが重要です。それと同時に複数の手法に分散させることも大切になるでしょう。さらに、例えば外貨預金をするにしても、通貨を分散させたり、預け入れの時期を分散させたりするなどの工夫も必要になります。

長らくデフレに苦しんできた日本経済ですが、長期的な観点ではインフレ対策も考慮に入れておくことが大切です。また、特定の手法について対策が偏らないように、外部のアドバイザーを頼ることなども検討してみてはいかがでしょうか。