世界経済フォーラムが隔年で公表する「観光競争力ランキング」の2017年版報告書が発表され、日本は前回の2015年から順位を5つ上げて、調査対象136カ国・地域の中で過去最高の4位に浮上した。

高いランクで評価されたのは、交通インフラの至便さ、文化資源、ビジネス旅行など。また競争力を評価する1~7までのスコアでは、安全・セキュリティー、健康・衛生、文化資源・ビジネスが高得点を得た。ランキング首位はスペイン、2位フランス、3位ドイツの欧州諸国が前回同様上位に並んだ。

ランキング
(写真=SENSHIN/Shutterstock.com)

ランキング(前回) 国・地域名

20位(23) スウェーデン
19位(29) 韓国
18位(20) ノルウェー
16位(14) オランダ
15位(17) 中国
14位(15) ポルトガル
13位(11) シンガポール
12位(12) オーストリア
11位(13) 香港
10位(6) スイス
9位(10) カナダ
8位(8) イタリア
7位(7) オーストラリア
6位(4) 米国
5位(5) 英国
4位(9) 日本
3位(3) ドイツ
2位(2) フランス
1位(1) スペイン

交通システムやICTネットワークなど発達

世界経済フォーラム(World Economic Forum)の報告書は、飛躍した日本について、さまざまな面から以下のように分析している 。

アジアではもちろん1位にランクされた日本は、特に「世界で最も技術的に進歩した地上交通システムとICT(情報通信技術)ネットワーク(いずれも10位)を誇り、オンライン情報・サービスにシームレスな接続・利用が保証されている」と高く評価している。また国際的開放性、地上・港湾インフラも10位だった。

「空路接続もまた十分発展しており(18位)、質の高いサービス(18位)を提供する」「ビザ政策は厳しいが、観光誘致活動は開かれている」などとしている。

評価が低いのは環境の持続可能性

一方、評価が低かった項目から、日本の課題が見えてくる。環境の持続可能性が4.4ポイント、45位で、今後もっと好結果を実現しなければならない分野と指摘した。さらに細かく見ると、大気汚染源であるPM(粒子状物質)排出(93位)、乱獲(71位)、絶滅が危惧される動植物(129位)は、観光だけでなく日本の持続可能性の面からも心配事と指摘している。

その他主な評価項目は以下の通り。

ビジネス環境5.3(20位)、安全・セキュリティー6.1(26位)、健康・衛生6.4(17位)、人的資源・労働市場5.2(20位)、旅行・観光(T&T)優先策6.1(10位)、観光サービス・インフラ5.3(29位)など。

価格競争力の改善がパフォーマンス向上をけん引

フォーラムはさらに、「日本は先進工業国でありながら、観光誘致をおろそかにせず、観光部門の活動に国家予算のほぼ4.5%を投資している」「日本はまた、燃料価格や航空券税が大幅に削減されたおかげで、価格競争力(25位上がって94位)を付けている」などと指摘している。「文化資源を売り込み、天然資源保護と相まって、価格競争力の改善が全体的なパフォーマンスをけん引している」と結論付けている。

フォーラムは日本について、「優れた文化遺産目当ての観光客やビジネス客が世界中から訪れている」と高く評価している。

アジア太平洋地域の競争力は顕著に伸びている

アジア太平洋地域では日本に次いで、オーストラリアが7位、香港11位、シンガポール13位、中国15位などと続いている。

中国は文化資源(1位)、自然資源(5位)と上位にありながら、2ランク上がっただけの15位だった。韓国は10ランク上がって19位、インドは12ランク上がって40位、ベトナムは8ランク上がって67位だった。アジア太平洋地域は、全体として競争量が高まっている注目の観光市場である。

アジア太平洋地域は、発展途上国を中心に経済開発が進み、中産階級が目立って増え、特に日本を含む地域間の旅行が伸びている。アジア太平洋地域の旅行・観光(T&T)市場は、現在の6500億ドル規模から、10年後の2026年には1兆2000億ドルと倍増するだろうという。(ZUU online 編集部)