リーマンショック後の英国金利歪曲スキャンダルをめぐり、英政府とイングランド銀行(BoE)が英銀行に圧力をかけたという有力な「証拠」が発見された。
当時すべての責任をかぶり、約8229億円の罰金を支払った英バークレイズ銀行の事件関与者間で交わされた会話の録音記録である。新たな証拠が提出されたことで、英財務委員会は事件のさらなる追求を進める構えだ。国家を巻きこんだ一大スキャンダルへと発展する可能性がある。
金融危機が引き起こした英国金利歪曲スキャンダル
金融危機にともない世間を騒がせた金利歪曲スキャンダルとは、英銀行がライボー率(英金融市場での資金取引の際、銀行間で用いられる平均貸出金利)を不正操作していたというものだ。
当時、有力銀行が毎日報告するデータを英国銀行協会(BBA)が集計し、平均値をライボー率として発表していた。金融機関はこのライボー率を、企業への融資や住宅ローンなど資金調達コストの基準に利用していた。
しかし2007年の米サブプライム住宅ローン危機から2008年のリーマンブラザーズ破たんが原因で、債券の暴落で経営難に直面した欧米の金融機関が実際より低く金利を報告していた疑惑が浮上した。融資の需要・供給の急減が金利を押しあげている事実から、経営難の状態が世間に明るみにでることを懸念した銀行側の苦心の策であった。
不正発覚の火種となったのは、英バークレイズ銀行幹部間でやりとりされたメールだ。責任を負う形で幹部が次々と辞任し、最終的には60億ポンド(約8228億9923万円)の罰金支払いを命じられる事態に発展した。
事件はバークレイ一行のスキャンダルとして取り扱われたが、単体で行うには限界があったとの見方が強く、「大手金融機関で組織的に不正が行われていた可能性が高い」という疑惑はけっして消えることがなかった。