2016年における国内REIT(不動産投資信託)の配当を含めない年間騰落率は、住居系が+9.0%、オフィス系が+7.7%だった。少なくとも2016年のREIT市場に関しては、オフィス系より住宅系が選好されたようだ。一部の地域で起こりうるレントギャップに関係があるのかもしれない。

レントギャップとは

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(写真=Roberts Photography/Shutterstock.com)

レントギャップとは、ある地域においてオフィス賃料が同じ地域の住宅賃料を下回る状態になっていることを指す。レントギャップが発生している地域では、オフィス所有者にとってはレントギャップが機会損失となるため、歓迎される状態ではない。

このような地域での投資戦略としては、コンバージョン(全面改装し、建物の用途を変更すること)が効果的だ。オフィスビルを改装し、住居に転用すれば、賃料の増加が期待できる。

レントギャップが発生するときはどのようなときなのか

従来は、オフィス賃料が住宅賃料を上回るのが一般的と言われていた。両者の立場が逆転するレントギャップが発生するカギを握るのは、賃貸オフィスの供給量だ。需要を上回る供給になればオフィスの空室率が上がり、オーナーは賃料を下げてでもテナントを入れようとする。その結果、オフィス賃料は下落していくのだ。地価や建築価格の高騰、街のブランド力向上などによる賃貸住宅需要の増加も、レントギャップを生む原因となる。

レントギャップは都市部で生まれやすいと言われている。地価が高いため戸建てや分譲マンションを購入できないが、利便性を求めて都心の賃貸マンションに住もうとする人が多いためだ。そのため住宅賃料は高い水準を維持する傾向にあると考えられる。また、容積率が高く大規模なオフィスビルが建築可能な用途地域が多いので、賃貸オフィスの供給量が増加しやすい。

レントギャップの動向を知ることができれば、コンバージョンのタイミングを決めるのに役立つと言われている。

オフィス賃料の推移(現状と過去)

レントギャップが発生しそうな地域はあるのだろうか。国土交通省の「不動産市場動向マンスリーレポート2017年2月 オフィス賃貸市場の動向」から、探ってみよう。

東京都心5区の大型オフィス平均募集賃料は2013年末に底を打ち、下降から上昇に転じた。2017年1月には1坪あたり1万8,582円で、37か月連続で上昇した。空室率は2012年半ばをピークに低下傾向にある。ピーク時には9%を超えたものの、2017年1月には3.74%となっており、19か月連続で需給均衡の目安とされる5%を下回った。

大阪でも空室率は7か月連続で下降しており、低下傾向にある。2017年1月に2008年1月以降初めて5%を下回った。賃料の方は横ばいか、わずかながら低下がみられる。2017年1月の平均募集賃料は、前月比0.10%上げて11,062円/坪で3ヶ月ぶりに上昇したものの、平均募集賃料は15ヶ月連続して前年同月を下回った。

名古屋・札幌・仙台・横浜・福岡も、大阪と同様の傾向がみられる。空室率は低下しているものの、募集賃料は横ばいだ。現状、東京はオフィス賃料が上昇傾向にあるため、レントギャップは発生しにくい。だが、他の地方都市では横ばいになっており、住宅賃料の動向によってはレントギャップの発生の可能性があるといえる。レントギャップが発生しているということは、コンバージョンが有力な選択肢となりえるということだ。(提供: みんなの投資online

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