英国の賃金上昇率が過去210年で最低水準に低下している ことが判明した。「英国の労働者の実質賃金は2007年以降一銭も上がっておらず、2022年までは現状のまま」だという。
雇用力が拡大する反面、各世帯は2020年までに平均1万2000ポンド(約168万円)所得が減り、インフレや社会福祉制度の縮小がそれに追い打ちをかけると予測されている。

ナポレオン戦争以来の低迷が家計を直撃

英国財務省による2017年度春季予算が発表されたのを機に、様々な研究機関が独自の視点から分析・予想を報告した。賃金上昇率が過去1年間で2.3%と、4.47%の伸びを記録した米国のおよそ半分まで(米労働省2月統計)失速している状況に、悲観的な所感はおおむね共通している。

英財政問題研究会(IFS)は、「英国の労働者は15年にわたる賃金上昇凍結に直面している」 と指摘。「2020年の平均賃金が、2007年よりも高くなっている可能性はきわめて低い」との見解を示すと同時に、Brexitが火つけ役となった急激なインフレや社会福祉制度の縮小が圧力となり、今後財政難におちいる世帯が増えることを懸念している。

英シンクタンク、リゾリューション・ファウンデーションの推測では、英国の世帯は2020年までに平均1万2000ポンド相当の所得減少に見舞われることになる。これほどまでの賃金上昇が鈍化したのは、「ナポレオン戦争(1803年から1815年) に英国が参戦した時期以来」とし、「少なくとも2022年末までは、賃金上昇率を2008年の金融危機の水準に引きあげることはできない」との見解を述べた。

IFSは「あくまで低賃金職の雇用が伸び続ける」と予想