ドル円予想レンジ 108.20- - 111.00

「We're Going to Get Tax Reform Done(我々は税制改革を進めるつもりだ)」-。これは4/20のムニューシン米財務長官発言だ。1/20に誕生したトランプ政権最初の100日間、「ハネムーン期間」の終了を4/29に控えての駆け込み表明とも言えようか。


トランプ政権の野心を検証。そして現実

政権最初の100日間はトランプ公約の実現性が注視された。しかし中国への為替操作国指定は放棄され、医療保険制度改革(オバマケア)は失敗。大統領令の入国制限は米航空便削減や観光業への打撃となって跳ね返り、経済的な評価は芳しくない。シリア空爆や北朝鮮への強硬姿勢は人道・外交面で点数を稼いだ観だが、市場ではリスク回避圧力を強めた。日米同盟の堅持以外、筆者にはプラスのイメージがわかない。

では、前出の税制改革姿勢はドル円に影響を与えるだろうか。警戒すべき点はひとつ。それは減税での米景気押し上げ期待がある中、オバマケア失敗の教訓を生かせずに共和党・議会調整が難渋し、トランプ政権の政策遂行能力の低さを露呈させれば、ドルの失望に転じかねないことである。

オバマケアを巡る対立が共和党内で強まった際の調整役、ライアン下院議長は4/19に「(税制改革に向け)できるだけ早くというのは、夏の終わりまでという意味だが、きちんと決着を付けるために時間をかけるつもりだ。夏の終わりまでに成立させることは無論可能だが、さらに時間が必要ならばそのようにする」と発言。

なにやら曖昧で求心力低下も感じさせる表現であり、難度の高さは否めない。今般は国境税や輸入課税、企業減税などに対する意見対立が既に露呈しており、ドルベア派の仕掛けの有無が気掛かりだ。

GW前の指標検証。そしてドル円現実

米雇用基調の堅調さは認められるが、消費基調は鈍化傾向にあり、3月消費者物価指数(CPI)は昨年2月以降で初めて前月比で低下した。1982年以来の大幅な下げでもあり、4/28の米1-3月期GDP速報値次第ではFRBの次の一手を抑制するデータになりかねない。シカゴFEDウオッチでの6月FOMC利上げ確率54.9(4/20時点)に影響する可能性も留意しておきたい。

ドル円上値焦点は4/12高値109.88。超えれば4/11欧米市場での下落帯109.90-110.70、4/11高値110.90、週足一目均衡表雲帯上限110.982。超えれば4/3、10高値111.60。下値焦点は月足一目均衡表雲上限108.986、200日線推移の108.78圏、4/18-19安値108.31-37、4/17安値108.12。昨年11/15安値107.76が割れると11/14安値106.725、11/11安値106.041維持が問われる。

(過去、5月GW休暇前のドル円週足は2007年以降、6陽線・4陰線)

為替見通し4-21

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト