2018年卒の大学生は企業選びの際に「安定している会社」「給料の良い会社」を重視する傾向が強い。売り手市場が続くなか、大手企業志向の学生が増加している——。そんな実態が、マイナビが毎年行っている「大学生就職意識調査」から分かった。
調査対象は1万5621人(文系男子3365人、文系女子6934人、理系男子2763人、理系女子2559人)。企業選択のポイントは「安定している会社」とこたえた割合が30.7%(前年比2ポイント増加)、「給料の良い会社」が15.1%(同2.3ポイント増)で、どちらも過去最高となっている(比較できる同じ調査形式の2001年以降)。
「安定している会社」「給料の良い会社」が増加
「企業選択をする場合、どのような企業が良いか」という質問は、20選択肢から2つ選ぶ形式で回答。「やりたい仕事ができる会社」を選ぶ学生が38.1%と最も多かったが、前年調査(17年卒)の38.4%から0.3ポイント減、5年連続の減少だった。
一方、全体で2番目に多い回答は「安定している会社」の30.7%だった。前年に比べ2.0ポイント増で、2001年の調査開始以来、初めて30%を超えた。また「給料の良い会社」は15.1%で全体4位、前年から2.3ポイント伸ばしている。
2018年卒の大学生は、例年よりも大手企業志向が強いことがうかがえる。「大手企業志向か、それとも中堅・中小企業志向か」の質問では、「絶対に大手企業」もしくは「やりたい仕事ができるなら大手企業」を選んだ学生は全体の52.8%で、過半数を占めていることがわかった。大手企業志向の学生が50%を超えたのは、2010年卒以来8年ぶりだ。
「個人の生活と仕事を両立させたい」が急増
「あなたの就職観に近いものはどれか」の質問では、最も多い回答が「楽しく働きたい」(前年29.9%→29.7%)、次いで「個人の生活と仕事を両立させたい」(前年24.5%→26.2%)、「人のためになる仕事をしたい」(前年17.7%→16.1%)となっている。
「楽しく働きたい」「人のためになる仕事をしたい」は前年に比べ多少割合を下げているが、さほど大きな変動はない。一方、「個人の生活と仕事を両立させたい」が大きくポイントを伸ばしている。
「個人の生活と仕事を両立させたい」を選んだ学生を文理・男女別に見てみると、文系男子は22.2%(前年22.1%)、理系男子は24.9%(21.3%)、文系女子は29.5%(28.7%)、理系女子は30.4%(26.1%)だった。とくに女子での割合が大きく、文理とも30%前後となっている。
安定志向を生み出している要因とは
大手企業志向とともに顕著なのが、安定志向だ。大手企業志向と安定志向はイコールではない。たとえば2006年から2008年頃も新卒採用は売り手市場であり、大手企業志向は見られたが、安定志向はそれほど強くはなかった。当時は「働きがいがある」「社風が良い」といった指標の人気が高く、「安定している」「給料が良い」については今ほど重要視されていない。
時代背景で言うならば、リーマンショック後の経済危機、東日本大震災を始めとする大災害など、2018年卒の学生たちは厳しい現実を目の当たりにしながら生きてきた。そういった環境が、「安定志向」を生む要因になっているのかもしれない。「個人の生活と仕事との両立」を望むのも、さまざまな体験や見聞があったからこその選択かもしれない。
また2018年卒の学生たちはまさにスマホ世代だ。指1本で多くの情報を得る術を知っている。情報過多とも言える環境にいながら、選択肢を狭めている学生が多いのではという懸念もある。最大公約数的な答えを見つけることで安心してはいないだろうか。就活においては、それが「安定志向」に見えているのかもしれない。(渡邊祐子、フリーライター)