国税庁は毎年業種別の平均給与を発表しています。自社の業種がどの位置にあるのか知ることは、福利厚生制度を企画・運営していくうえで参考になります。2015年度の全体的な傾向と、それぞれの動きをランキング形式で紹介します。

全体的な傾向は上昇基調

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(写真=PowerUp/Shutterstock.com)

国税庁は毎年「民間給与実態統計調査」を発表しています。12月31日時点における民間の源泉徴収義務者である事業者を対象としており実際の給与台帳をもとにしているため、信頼性の高い統計です。

業種、性別、年齢階層、勤続年数、企業規模が区別されており、細かい分析が可能です。従業員1名から数千人規模の事業者まで幅広く対象にしているのも特徴です。今回は、2015年12月31日分の調査結果を紹介します。

全体的な傾向としては、所得者数と給与総額はともに微増となっています。給与所得者数は5,646万人(対前年比1.0%増、54万人の増加)、給与総額は204兆7,809億円(同0.8%増、1兆7,000億円の増加)でした。

年間を通じて給与所得者だった人は4,794万人で、その平均給与は約420万円でした。男女別でみると男性は2,831万人で平均給与は約521万円、最も多い階級は300万~400万円です。女性は1,963万人で平均は約276万円、最も多い階級は100万~200万円でした。人数は3対2とそれほど差が開いてはいませんが、給与の額には大きく差があります。

上位7業種の傾向は?

業種は14に分かれていて、それぞれ会社の人数および資本金の階級ごとに、平均給与をみることができます。

● 1位:電気・ガス・熱供給・水道業
平均給与は715万円で、全業種平均の1.7倍です。前年比9.2%増と伸び率も高くなっています。

大幅に伸びた要因として主に考えられるのは、コスト削減による利益の増加です。2016年は電気やガスなどの製造に使われる原油の価格が史上最低レベルに下がっていた時期のため、その影響も少なからずあるようです。

● 2位:金融業・保険業
平均給与は639万円で、前年比4.9%増です。潤沢なイメージがありますが、実際に伸び率も高くなっています。

● 3位:情報通信業
平均給与は575万円と高いですが、前年比-2.9%と減少傾向がみられます。

● 4位:学術研究、専門・技術サービス業、教育、学習支援業
平均給与は501万円で、前年比-1.3%です。

● 5位:製造業
平均給与は490万円です。増減率は0.4%増とほぼ横ばいです。

● 6位:建設業
平均給与は468万円で、前年比1.7%増です。

● 7位:複合サービス事業
平均給与は429万円とほぼ全業種平均と同じでした。ただし、9.6%増と大きな伸びを記録しています。

1位から6位の順位は前年と変わりませんが、複合サービス業が9位から不動産業・物品賃貸業と運輸業・郵便業を抜いて二つランクを上げています。

下位7業種の傾向は?

● 8位 不動産業・物品賃貸業
平均給与は424万円で、前年比2%増と健闘しましたが順位は変わっていません。

● 9位 運輸業・郵便業
平均給与は414万円で、前年比0.5%減とほぼ横ばいです。

● 10位 医療・福祉
平均給与は388万円で、前年比2.3%増です。医療と福祉の間にも差がありそうです。

● 11位 卸売業・小売業
平均給与は358万円で、前年比1.2%増です。

● 12位 サービス業
平均給与は345万円で、1.1%増です。

● 13位 農林水産・鉱業
平均給与は306万円で、前年に対して5.7%増と大きく伸びています。

● 14位 宿泊業・飲食サービス業
平均給与は236万円で、0.3%減とあまり変動がありません。前年と同じく最下位でした。

宿泊業・飲食サービス業が低い要因は、「平均」給与であることに留意する必要があります。アルバイトやパートなど労働時間の少ない人が平均値を下げていることが考えられます。

参考にする際には個別の事情も考慮しよう

1位の電気・ガス・熱供給・水道業と14位の宿泊業・飲食サービス業では3倍の開きがあります。ただ、これはあくまでも業種ごとの平均値です。参考にする時は、従業員数や資本金などの企業規模、自社のビジネスモデルのような個別の事情も考慮する必要があります。調査の結果には業種ごとに勤続年数や給与階級別の人数も掲載されていることから、さらに詳細な分析も可能です。

ちなみに給与総額は金融業・保険業が49兆円と全業種の1/4を占めています。2位の情報通信業は29兆円であることから突出しているといえます。

2015年の給与は前年に比べて伸びている業種が多い

2015年の給与は増加傾向にあります。給与総額、給与所得者ともに1%近く増えています。業種別にみると電気・ガス・熱供給・水道業が前年に続いて1位です。最下位も前年と変わらず宿泊業・飲食サービス業となります。複合サービス業は10%近く増加し、ランクを上げました。

さまざまな業種の平均給与を参考に、福利厚生を考えてみてはいかがでしょう。(提供: フクリ!

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