訪日外国人観光客の増加で注目が集まる民泊に、徳島県阿南市新野町の四国霊場22番札所・平等寺が参入した。平時はお遍路さん向けの民泊施設、災害時には避難所となる「シームレス(つなぎ目のない)民泊」で、住職らが居住する庫裏(くり)の客間を客室に活用している。

4月の開設から約1カ月で50人ほどのお遍路さんが宿泊するなど、利用者の反応は上々。お遍路さんの宿確保、南海トラフ巨大地震への備え、交流人口拡大による地域の活性化という一石三鳥を狙った取り組みとしても話題になりそうだ。

ふろ、台所、Wi-Fiなど完備で週6日営業

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お遍路さん向けの民泊に参入した徳島県阿南市新野町の四国霊場22番札所・平等寺(写真=筆者)

平等寺の客室は8畳と10畳の2部屋で、宿泊所名「坊主の宿」と命名された。トイレやシャワー付きのふろ、台所、フリーWi-Fi完備で、週6日営業している。宿泊できるのは1日2組まで。料金は朝夕食付き7000円、素泊まり4000円と民宿並みに設定した。前日に申し出れば、朝のお勤めに参加できる。

徒歩で霊場を回る「歩き遍路」は年間に6000人と推計されているが、平等寺周辺は宿泊施設が1軒しかなく、年間1400人ほどしか受け入れられていない。このため、遠くの宿に泊まっていったん平等寺まで宿の車で送ってもらい、歩き遍路を続ける人が少なくなかった。

百戦錬磨グループが運営する民泊仲介サイト「ステイジャパン」で物件を紹介したところ、開業以来予約が殺到し、休業日を除いて部屋が埋まっている状態。満室で予約を受け付けできないこともある人気ぶりだという。

平等寺は平安時代初期の814年、弘法大師空海によって開創されたといわれる古寺。空海が掘ったという伝承のある古井戸が今も残っている。30年ほど前まではお遍路さん向けの宿坊を設け、多いときだと1日に100人を受け入れたこともある。しかし、人手不足などから宿坊の運営を取りやめていた。

4月の開所式には、徳島県や阿南市の関係者ら約50人が集まった。谷口真梁(しんりょう)副住職が看板を取り付け、飯泉嘉門徳島県知事、岩浅嘉仁阿南市長らがテープカットしてオープンを祝ったあと、初日の宿泊客2人が部屋へ案内された。

宿泊客の1人は「この辺は宿泊施設が少ないので、歩き遍路をするうえで民泊できるのは大助かり」と語った。平等寺は「お参りしてくれる人の助けになれば幸い。温かいお接待ができる宿にしていきたい」としている。

南海地震の発生後は被災住民の避難所に活用