新しく社宅の制度を導入する企業の経理担当者としては、勘定科目が気になります。さらに気になるのは法人税と消費税、所得税など税務でしょう。借り上げ社宅における、それぞれの取り扱いについて解説します。

会計上の勘定科目は地代家賃が一般的

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(写真=ND700/Shutterstock.com)

社宅の家賃を処理する際には、月極駐車場や事務所・店舗の賃料と同じ勘定科目を使います。一般的には「地代家賃」となり、損益計算書上の販売費及び一般管理費に分類されます。

勘定科目名称は、支出の内容を端的に言い表していればどれでも構わないのですが、類似する内容のものが別の勘定科目になっていたり、反対にまったく別のものが同じ勘定科目になっていたりするようでは、管理上問題となります。

また、税務上の処理がスムーズになるように考える必要もあります。自社の経理規定と処理の実務を考慮して決めていくことになるでしょう。全社的に社宅制度がある場合は、大きな金額になります。監査法人がついている会社であれば、相談することをおすすめします。

一部従業員による自己負担がある場合は、少し複雑です。後述の消費税の問題があるため、自己負担分は「雑収入」または「受取家賃」などとすると処理しやすいでしょう。または、専用に勘定科目を作るという方法もあります。

消費税は非課税仕入、自己負担分を戻りで処理しないこと

住宅の家賃は、消費税非課税取引です。社宅として借りる場合も同様で、課税仕入として処理することはできません。従業員の自己負担がある場合、非課税仕入のマイナスとして処理せず、非課税売上として処理します。勘定科目を収益として計上した方がいいというのは、このためです。

地代家賃の戻りとして処理するなら、貸方に計上した消費税の処理に注意する必要があります。会計ソフトでどのような処理ができるか確認しましょう。

処理を間違えると課税売上割合が変わるため、納税額が変わってしまいます。本来は非課税売上げになるものを非課税仕入れの戻りとして処理すると、課税売上割合が高くなります。そのため、収める税金が少なくなり過少申告になってしまうので注意してください。

・ 課税売上割合
消費税には、課税と非課税との区分があります。自社の売上全体における課税分の割合が、課税売上割合です。消費税は、売上で受け取った分から仕入で支払った分(課税仕入)を差し引いた額を納付します。差し引ける課税仕入の金額は課税売上割合に応じて決まるため、課税売上割合が変わると納税額が変わります。

ちなみに、従業員が退去した後の原状回復費用や鍵の交換代などの修繕費、備品の購入費用などは原則的に課税仕入で処理して問題ありません。

住宅手当の場合は「給料手当」所得税の取り扱いに注意

住宅手当として従業員の給与に上乗せして支払っている場合は、同じ一般管理費でも勘定科目は「給料手当」とするのが妥当です。所得税は課税扱いです。

法人税の処理としては地代家賃も給料手当も特別に留意すべきことはありませんが、個人の所得税についてはルールが存在します。給与に上乗せではなく大家に直接賃料を支払っている場合は、賃料相当額という考え方で処理します。従業員の自己負担額が一定の計算式による賃料相当額以下だと、差額が給与として所得税課税されます。

ただし、賃料相当額の半額以上を自己負担している場合は課税されません。賃料相当額は建物の総床面積と固定資産税の課税標準額から算出しますので、大家に確認する必要があります。

勘定科目は地代家賃、消費税は非課税仕入

借り上げ社宅の賃料は損益計算書の販売費及び一般管理費に含んで表示します。勘定科目としては地代家賃が一般的です。給与として支給している場合は給料手当とします。

消費税については非課税仕入となりますが、従業員の自己負担分は仕入の戻りではなく売上として処理する必要があります。(提供: フクリ!

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