賃貸住宅で懸念される事項の一つに、退去時の原状回復費用があります。社宅も然りです。大家と入居者間の問題というだけではなく、社宅の場合は会社も関係してきます。

今回は、原状回復の概要とトラブルを未然に防ぐ方法について解説します。

従業員が払うのか、入居者が払うのか

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(写真=kurhan/Shutterstock.com)

従業員が社宅を退去する際の原状回復費用を誰が負担するのか、一般的なルールはありません。そのためトラブルを防ぐためには、社内規程を作成して一定のルールを設けておく必要があります。規定を作成する際には、下記の点を考慮しなくてはなりません。

・ 入居が会社都合なのか、それとも本人都合なのか
・ 借り上げ社宅なのか、それとも所有者社宅なのか
・ 社宅制度導入の目的は福利厚生なのか、会社として他にメリットがあるのか
・ 会社として社宅制度をどのように考えているか

また、規定には以下のような内容が考えられます。

・ 賃料の自己負担割合と同じ割合で負担し合う
・ 会社都合による転勤なので全額会社が負担する
・ 会社が負担する項目を定めてそれ以外は本人が負担する

会社と従業員の立場を「大家と入居者」と考えると、一般的な原状回復の考え方に従うのが適切だといえます。いずれにしても、就業規則や社宅管理規程などに明文化しておくことが、トラブルを未然に防ぐために有効となります。

そもそも大家が払うのか入居者が払うのか

借り上げ社宅の場合、会社と従業員以前に、そもそも大家と入居者どちらが払うべきものなのかという問題があります。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では次のような考え方が妥当だとされています。

「原状回復を『賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること』と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました」

つまり、普通に生活している範囲内、一般的な想定の範囲内であれば、入居者が負担する必要はないということになります。誰が使用しても発生するような傷みは大家が負担し、入居者の使い方により傷みの程度が大きいという場合は入居者が負担するべきもの、ということになります。

記載された事例は、42にものぼります。それだけ原状回復に関するトラブルは多く、その対応は一筋縄ではいかないのです。

手間がかかる交渉や業者の手配などは、社宅管理代行サービスを利用

社宅管理にかかる手間と費用は、大家や従業員との調整だけではありません。業者の手配や賃料の支払い手続きもあります。社宅管理代行サービスは、このような作業諸々を一括して委託できるシステムです。

原状回復に関しても、第三者の立場として大家と会社、会社と従業員の間に入って内容の精査・交渉を行うことができます。契約条件が社内規程と合っているか精査したり、修繕費用の立て替えをしたりすることもできます。会社の規模が大きくなればなるほど、このような細かい業務は外部に委託する傾向があります。

会社が負担する際の消費税課税仕入

原状回復費用を会社が負担した場合の経理処理についてもおさえておきましょう。消費税は、原則的に課税仕入となります。会社所有の場合も借り上げの場合も同様です。

個別対応方式を採用している会社の場合、従業員の自己負担がある場合は非課税売上にのみ対応する仕入となります。無償の場合は、課税と非課税共通に対応する仕入として処理します。

一定のルールを作り、運用は委託する

社宅の原状回復をめぐるトラブルを防ぐためには、社内規程を作成しておくのが最も望ましいといえます。内容は会社としての社宅の考え方によって変わります。大家と会社との間にもトラブルが発生する可能性もありますが、社宅管理代行サービスに委託することで手間が軽減されます。(提供: フクリ!

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