日本経済QE速報:1-3月期の実質GDPは前期比0.5%(年率2.2%)~5四半期連続で潜在成長率を上回る高成長
内外需揃った高成長
要旨
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2017年1-3月期の実質GDPは、前期比0.5%(年率2.2%)と5四半期連続のプラス成長となった(当研究所予測4月28日:前期比0.4%、年率1.4%)。
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輸出が前期比2.1%の高い伸びとなり、外需寄与度が前期比0.1%(年率0.6%)と成長率を押し上げたことに加え、民間消費が前期比0.4%の高い伸びとなったことから、国内需要が増加に転じ、内外需揃った高成長となった。
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日本経済は1年以上(5四半期連続)にわたってゼロ%台後半とされる潜在成長率を上回る成長を続けている。2016年度の実質GDP成長率は1.3%と2015年度の1.2%とあまり変わらなかったが、在庫変動を除く最終需要の伸びが0.9%から1.7%へと高まり、年度内成長率も0.5%から1.6%へ加速するなど、2016年度の日本経済は見かけの成長率以上に大きく改善した。
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先行きについても、海外経済の回復を背景に輸出の増加が続くことに加え、企業収益の改善に伴う設備投資の持ち直しが見込めることなどから、景気は堅調な推移が続くことが予想される。リスク要因は、世界的に保護主義的な動きが強まることやITサイクルのピークアウトなどによって輸出が失速すること、名目賃金が伸び悩むなかで物価上昇に伴う実質購買力の低下から、個人消費が腰折れすることなどだろう。
本日(5/18)発表された2017年1-3月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比0.5%(前期比年率2.2%)と5四半期連続のプラス成長となった(当研究所予測4月28日:前期比0.4%、年率1.4%)。
輸出が前期比2.1%の高い伸びとなり、外需寄与度が前期比0.1%(年率0.6%)と3四半期連続で成長率を押し上げたことに加え、民間消費が前期比0.4%の高い伸びとなったことなどから、国内需要も前期比0.4%と3四半期ぶりに増加した。1-3月期が内外需揃った高成長になるとともに、5四半期連続でゼロ%台後半とされる潜在成長率を上回る成長となった。
その他の需要項目では、公的固定資本形成は前期比▲0.1%と3四半期連続で減少したが、住宅投資が前期比0.7%と5四半期連続で増加したほか、設備投資も前期比0.2%と小幅ながら増加を確保した。また、在庫調整の終了を反映し、民間在庫変動が前期比・寄与度0.1%となり、3四半期ぶりに成長率を押し上げた。
実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が0.4%(うち民需0.4%、公需0.0%)、外需が0.1%であった。
名目GDPは前期比▲0.0%(前期比年率▲0.1%)と5四半期ぶりに減少し、実質の伸びを大きく下回った。GDPデフレーターは前年比▲0.8%(10-12月期:同▲0.0%)、前期比▲0.6%(10-12月期:同0.1%)であった。国内需要デフレーターが前期比▲0.0%と若干低下したことに加え、円安の影響などから輸入デフレーターが前期比6.5%の大幅上昇となり、輸出デフレーターの伸び(同2.8%)を上回ったことがGDPデフレーターを押し下げた。
なお、2017年1-3月期の1次速報と同時に基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率も遡及改定され、2016年10-12月期の実質GDP成長率は前期年率1.2%から同1.4%へと上方修正される一方、2016年4-6月期(前期比年率2.2%→同1.7%)、7-9月期(前期比年率1.2%→同1.0%)は下方修正された。
この結果、2016年度の実質GDP成長率は1.3%、名目GDP成長率は1.2%となった。実質成長率は2015年度の1.2%とほぼ変わらなかったが、内訳をみると在庫変動を除いた最終需要の伸びは2015年度の前年比0.9%から同1.7%へと高まっており、年度内成長率(前年度最終四半期から当年度最終四半期までの伸び)は2015年度の0.5%から2016年度には1.6%へと大きく加速した。2016年度の日本経済は見かけの成長率が示す以上に大きく改善したとの評価が可能だろう。
◆需要項目別の動き
民間消費は前期比0.4%と5四半期連続で増加し、10-12月期の同0.0%から伸びを大きく高めた。2016年後半のような天候不順や生鮮野菜の価格高騰といった一時的な下押し要因がなかったため、雇用所得環境の改善や消費者マインドの改善が消費の増加につながった。
家計消費の内訳を形態別にみると、自動車やテレビなどの耐久消費財のストック調整の一巡を反映し、耐久財が10-12月期の前期比1.7%に続き同2.0%の高い伸びとなったほか、外食などのサービスも同0.4%と堅調だった。
1-3月期の民間消費は高めの伸びとなったが、雇用者報酬は名目で前年比0.8%(10-12月期:同2.2%)、実質で前年比0.5%(10-12月期:同2.2%)といずれも前期から伸びが大きく鈍化した。一人当たり賃金(毎月勤労統計ベース)が10-12月期の前年比0.4%から同0.1%へと鈍化したことに加え、雇用者数の伸びも10-12月期の前年比1.6%から同1.0%へと低下している。
2017年の春闘賃上げ率が前年並みにとどまり、先行きも名目賃金の伸びが高まることが期待できないため、物価上昇率が上振れした場合には実質購買力の低下を主因として消費が腰折れするリスクがあるだろう。
住宅投資は前期比0.7%と5四半期連続で増加した。住宅ローン金利の低下が引き続き住宅投資を下支えする一方、好調な推移が続いてきた貸家建設が頭打ちとなっているが、東京五輪の選手村宿泊施設の着工で1月の住宅着工戸数が大きく押し上げられた。しかし、五輪関連施設を除いた住宅着工戸数は減少傾向にあり、2017年4-6月期の住宅投資は6四半期ぶりの減少となることが予想される。
設備投資は前期比0.2%と小幅ながら2四半期連続で増加した。1-3月期はほぼ横ばいにとどまったが、10-12月期に前期比1.9%の高い伸びとなった後であることを踏まえれば、持ち直しの動きが続いていると判断される。日銀短観2017年3月調査では、2017年度の設備投資計画(含むソフトウェア、除く土地投資額)が前年度比1.7%となり、当初計画としては2012年度以来の増額計画となった。海外経済の回復や円高の一巡に伴う企業収益の改善を受けて、2017年度の設備投資は回復の動きがより明確となる可能性が高い。
民間在庫変動は前期比・寄与度0.1%と3四半期ぶりのプラスとなった。在庫調整がほぼ終了したと考えらえる製品在庫のマイナス幅が縮小(10-12月期:▲0.4兆円→1-3月期:▲0.1兆円)し、流通在庫の積み上がり幅が拡大(10-12月期:0.4兆円、1-3月期:0.7兆円)した。製品在庫のマイナス幅縮小は在庫調整の終了を示すものとして前向きの評価ができるが、流通在庫の積み上がりは、消費の回復力の弱さを反映しており、在庫調整圧力が残存していることを意味している。
公的需要は、政府消費が前期比0.1%と3四半期連続で増加したが、公的固定資本形成は前期比▲0.1%と3四半期連続で減少した。ただし、2016年度第2次補正予算の効果から、公共工事の先行指標である公共工事請負金額は1-3月期に前年比9.9%の大幅増加となっており、4-6月期の公的固定資本形成は4四半期ぶりの増加となる可能性が高い。
外需寄与度は前期比0.1%と3四半期連続のプラスとなった。財貨・サービスの輸出が製造業を中心とした世界経済の回復を受けて前期比2.1%の高い伸びとなった。国内需要の持ち直しを反映し、財貨・サービスの輸入も前期比1.4%の増加となったが、輸出の伸びを下回ったため、外需が成長率を押し上げる形となった。
◆2017年度入り後も景気は堅調が続く見込み、リスクは輸出の失速と消費の腰折れ
日本経済は1年以上にわたって潜在成長率を上回る成長を続けている。内容的にも2016年後半は外需中心の成長だったが、2017年1-3月期は民間消費の伸びが加速したことから内需の伸びが高まり、内外需のバランスが取れた成長となった。
先行きについても、海外経済の回復を背景に輸出の増加が続くことに加え、企業収益の改善に伴う設備投資の回復が見込めることなどから、景気は堅調な推移が続くことが予想される。リスク要因は、世界的に保護主義的な動きが強まることやITサイクルのピークアウトなどによって輸出が失速すること、名目賃金が伸び悩むなかで物価上昇に伴う実質購買力の低下から、個人消費が腰折れすることなどだろう。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
経済調査室長
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