ドル円予想レンジ 109.70- - 113.10
「‘no politician in history’ has been ‘treated worse or more unfairly’(歴史上、これ以上悪く、不公平に扱われた政治家はいない)」-。これは5/17のトランプ米大統領発言だ。翌日にはツイッターで「This is the single greatest witch hunt of a politician in American history! (米国史上、最大の魔女狩りだ)」と苛立ちを露わにした。理由は昨年の米大統領選挙を巡るトランプ陣営とロシアの関係を巡る疑惑報であり、米10年債金利や、6月のFOMC利上げ確率をも圧迫。ドル円は5/17-18の2日間で2円89銭幅のドル安円高となった。
「トランプ・ロシアゲート問題」の長期化懸念
トランプ米大統領によるロシアへの機密情報漏洩、連邦捜査局(FBI)の捜査妨害を巡る疑惑に対して、筆者は1972年6月に表面化したウォーターゲート事件問題を重ね合わせている。理由は1点。
今般の問題は一過性ではなく、トランプ大統領自らが辞任表明しない限り(若し辞任すればマイク・ペンス副大統領が昇格就任)、問題が長引くと読んでいるからだ。トランプ大統領への弾劾手続きが一部からは指摘されており、確かに合衆国憲法第2条4節(弾劾)で認められている。しかし弾劾も訴追も権限は上下院に属しており、議会占有率が共和党優勢な状況では現実的でないのが実際だろう。
2018年の中間選挙を見据えた駆け引きも開始されていることから難航は必至であり、ウォーターゲート事件当時のニクソン大統領が問題発覚から辞任表明をするまで約2年2カ月に及んだことを留意しておきたい。
5/22週ドル円見通し
「トランプ・ロシアゲート問題」は議会や世論の反発から減税や財政政策の大幅な遅れに繋がるとした見通しはドルブル派にはネガティブ材料だ。しかし前号でも指摘したが、FRBによる景気見通しは基調的な拡大傾向に変わりはない、との姿勢である。トランプ政権の先行きに関心が奪われがちだが、相次ぐ好調な米指標を鑑みると、FRBが6月利上げを引っ込める可能性は極めて低い、と読む。
5/22週はロシアゲート関連報に対して主要指標(石油輸出国機構(OPEC)総会、G7 シチリア・サミット、米1-3 月期GDP 改定値、4 月耐久財受注)に注視。5/27からイスラム・ラマダン休暇入り、5/29が英米休場になることから週末調整テンポが前倒しになる可能性にも警戒。
テクニカル観点では、日足一目均衡表雲枠内(上値111.82、下値110.76-16)突入での展開を推考。下値焦点は5/18安値110.23。200日線推移の109.70圏、4/24-25安値圏109.60-65、月足一目均衡表雲上限109.508が最終橋頭堡。上値焦点は5/17欧米時間下落前の戻り高値圏112.50-55、5/17高値113.12。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長兼シニアストラテジスト