日経平均予想ジ レンジ 19,311 ~ 19,764 円
今週は、世界規模で広がったサイバー攻撃や北朝鮮の弾道ミサイル発射など地政学リスクが高まる中、良好な企業決算やファンダメンタルズを好感して、日経平均は一時、19,998円まで上昇し、今年の最高値を付けた。その後、米国を巡る政治混乱への懸念から、米国株安、円高進行が嫌気され、19,449円まで売られるなど波乱の展開となった。
海外の焦点
米国では、トランプ政権の政策運営に陰りが見え始めている。トランプ大統領はコミーFBI長官の解任に続き、ロシアのラブロフ外相との会談でイスラム国掃討に関する同盟国からの機密情報を開示国に合意を得ずに漏らしたとの報道で、議会やメディアが政府への追求を強めている。
一部議員が弾劾を求めるなど政治混乱が長期化すれば、市場が期待する規制緩和、税制改革、インフラ投資など、経済政策の進展に一段の遅れが生じるとの警戒感は強い。
一方、経済指標では、4月小売売上高は+0.4%、4月鉱工業生産は+1.0%と3年2カ月ぶりの大きな伸びとなった。反面、4月CPIは前月比0.2%上昇、伸び率は前月の2%から鈍化した。4月住宅着工件数は前月改訂値から2.6%減とふるわない。
こうした状況下、6月利上げ観測が既定路線だが、長期金利は2.226%に低下し、主要株価指数が大幅安した中で、今後発表される6月雇用統計をはじめ各経済統計を鑑みたFRBの利上げ判断への行方が注目される。
国内の焦点
米国の先行き不透明感から日経平均の2万円回復は一旦遠のいた。一時、年初来高値(5/16)を更新したものの、その後は上値の重さが意識されている。一方、国内企業の2017年3月期決算発表は一巡した。
日経平均構成銘柄のEPSは1,396円(5/18)に上昇し、PERは14.00倍と割安感が強い。売買代金は高水準を維持している上、25日、75日線のゴールデンクロス接近で中期的な先高期待をうかがわせている。
チャート面では、1/17安値18,224円以降の上昇ピッチの速さを考えれば、調整局面に入ってもおかしくない。5/17には、5/2-5/8に空けた窓埋め(19,464円)を完了し、自律調整に一巡感も感じられる。
来週の株式相場
以上、来週は米国を巡る政治リスクが懸念される中、バリュエーション面の割安感から業績好調な個別銘柄の押し目買いが下支えとなろう。外部環境の落ち着きを見据え、反転のきっかけ待ち局面と捉えられる。日経平均のレンジは、上値は5/17窓埋め19,764円が目処となり、下値は5/1窓埋め19,311円が意識される。
伊藤嘉洋
岡三オンライン証券
チーフストラテジスト