5月になると勤務先から「特別徴収税額の通知書」を受け取ることになる。この通知書がどういうものなのか、年末調整の際にもらう源泉徴収票とどう違うか、どこを見たらいいのかを知らない方も多いのではないだろうか。

今回は、そのチェックポイントについて解説する。

特別徴収税額通知書とは?

特別徴収税額通知書
(写真=PIXTA)

特別徴収税額とは、勤務先に届く住民税の特別徴収税額のお知らせだ。

住民税の徴収方法には2種類ある。一つは、勤務先が給与などから天引きし、住民税の納税義務者である社員に代わってその住まいのある地方自治体に納付する特別徴収である。もう一つは、納税義務者が自分で住民税を地方自治体に納付する普通徴収である。

いずれの方法であっても、前年の所得に基づいて各自治体が住民税額を計算し、毎年6月から翌年5月までの徴収税額を計算する。ただ、その税額の通知が、特別徴収の場合は納税義務者の勤務先に、普通徴収の場合は納税義務者本人に対して行われる。

記載内容が細かい上、年末調整後の源泉徴収票との違いが一般の人には分かりにくい。そこでカンタンに説明しよう。

5月に受け取る通知書は「住民税」に関するもの

年末調整後に受け取る源泉徴収票は所得税(国税)の計算に関するものだが、特別徴収税額の通知書は住民税(地方税)に関するものである。

そして、国税の多くは申告納税方式であり、所得税も会社が納税者の代わりに計算しているだけに過ぎない。そのため、所得税の場合、年末調整の後、すぐに源泉徴収票をもって所得額や税額が知らされる。一方、地方税の多くは賦課課税方式であり、住民税の計算のベースは所得税のベースである所得である。そのため、確定申告が終った後でやっと自治体で計算がなされ、通視されるのは確定申告後の5月となる。つまり、納税方式も計算方式も異なるがゆえに、通知の時期が異なるのだ。

では、どういった点を確認すべきなのだろうか。チェックポイントは2つある。

チェックポイント1:ふるさと納税はちゃんと控除されているか

ここ数年のブームでふるさと納税を行っているサラリーマンは非常に多い。そこで見ておきたいのが「ふるさと納税分がちゃんと住民税で節税になっているかどうか」だ。

昨年行った寄付が節税として住民税に反映されるのは、翌年6月からの徴収分からだ。つまり翌年5月に配布される特別徴収税額の通知書に記載されている。

通知書を受け取ったら、「住民税(特別区民税、都民税、県民税、市民税など)の税額控除額 」の欄を見ていただきたい。ここに、ふるさと納税で税金が減額されるうちの住民税の分だ。

ただ、住民税だけを見ても、正しく節税されているかどうかは分からない。そこで所得税の節税額と併せて見る必要がある。

たとえば、昨年ふるさと納税で4万円分寄附したとし、所得税の税率が20%だったとしよう。控除対象、つまり節税となるべき金額は寄附した金額から2000円を差し引くので3万8千円になる。所得税での節税額は3万8千円×20%=7600円となる。住民税での総節税額は、3万8千円から7600円を差し引いた3万400円になるはずである。

税額計算には端数処理もあるので、きっちりこの金額になるとは言えない。また、住宅ローン控除があれば、その分も住民税から差し引かれている。また、表記の仕方も自治体によって異なることもある。そのため、どうしても気になるなら、納税先の自治体に問い合わせてみるのがよいだろう。

チェックポイント2:副業している分の所得の有無

副業している人の多くは、身バレしないよう、確定申告書を提出する際に、住民税の徴収方法で「普通徴収」を選択しているはずだ。それがきちっと区分されているかどうかを確認しよう。

ただ、確定申告書で普通徴収の欄にマルをつけたからといって、絶対に会社に身バレしないとは言い切れない。副業の内容が週末バイトやパートである場合、その所得の種類は「給与所得」に該当する。これに対し、住民税の徴収方法を選択できるのは、あくまでも「給与所得『以外の所得』」のみだ。つまり、バイトやパートでの収入は、特別徴収の対象になってしまう。そのため、そこから身バレする可能性がある。

また、正社員の副業は本来、「雑所得」として申告すべきものなのだが、中には事業所得で申告しているツワモノもいることだろう。もし、節税目的で事業所得申告しているのならば、この場合も要注意だ。副業が赤字で給与所得と損益通算しているならば、必然的に今年度6月以降の住民税も前年給与に対して不自然に低くなる。理由もなく低い住民税は身バレの原因にもなりかねない。

この他、1月から5月の間に転職活動を行い、5月末の時点で既に新しい職場にいる場合、通知書や納付書が自宅に届く場合もある。納税者自身による毎月の納税は、時間的にも労力的にも負担が大きい。だからといって、放置しておくと、滞納扱いになり、延滞税などペナルティを別途払わなくてはならないことになる。そのため、なるべく早く、転職先に対し「普通徴収から特別徴収への切替届出書」を提出して給与から住民税を天引きしてもらうようにするとよいだろう。

鈴木 まゆ子
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年に税理士登録。現在、外国人の日本国内での起業支援に従事するとともに、会計や税金、数字に関する話題についての記事執筆を中心に活動している。税金や金銭、経済的DVにまつわる心理についても独自に研究。共著に「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)がある。ブログ「 税理士がつぶやくおカネのカラクリ