VISAカードの現状の取り組み

その高い保有率から分かる通り、かねてから日本市場に着目していたビザ。加盟店やカード発行会社(イシュアー)の拡大だけでなく、これまでモバイル向けのIPベースにおけるビザ認証サービスを、世界に先駆けて日本で行ったこともありました。そんなビザが日本国内で力を入れているのが、セキュリティ面の強化です。世界の他の国とは異なり、EC市場の増加によってクレジットカードの利用率が高まっている日本。2014年5月にビザ・ワールドワイドから発表された「ビザのセキュリティの取り組み」の中で、「EC環境における不正」が増加傾向にあることを示唆しています。また、日本はアメリカに次いで偽装被害の多い国となっていることが発表されています。ビザ一人勝ちの状態とも言える日本のクレジットカード市場ですが、EMV化( Europay,MasterCard,VISA protcolの頭文字、この3社間で合意した ICカードの統一規格 )などセキュリティ面の向上が今後の市場拡大の鍵となりそうです。

また日本は他国と異なり、法人市場におけるクレジットカードの決裁比率が極めて少ない国となっています。これは、日本におけるカード発行の仕組みが関係しています。日本ではカード発行会社(イシュアー)がカードを発行していますが、銀行に比べて与信が苦手ということ、そして法人取引におけるクレジットカードの法人利用自体の認知があまりなされていないことにあります。日本では個人カードで経費を仮払いしてしまうことが多いですが、米国ではすでにコーポレートカードを使った経費支払の義務化などが行われ、法整備も進んでいます。一方の日本は、クレジットカード使用に関する規定が会社単位でもしっかり行われていないことが多く、こうした背景も法人導入を遅らせる原因となっています。今後日本におけるビザの戦略は、こうした問題をクリアした上で、法人決済が日本で当たり前に利用されることを目指したものになると考えられます。

電子マネーに対する取り組み

そして何より重要なのが、電子マネーに対する取り組みです。日本ではスイカ(Suica)やワオン(WAON)、ナナコ(nanaco)などが主な利用ブランドとなっていますが、スマートフォンによる電子マネー利用も増えています。日本経済新聞によりますと、電子マネーの決済総額は、2013年には主要6電子マネーで3兆円と、3年で倍増したことを報じています。また2014年5月には、auによる新たな電子マネーau WALLETも登場。マスターカードとauが提携し、マスターカード加盟店であれば利用でき、かつポイントも貯まるというこのカードは、申込からわずか1ヶ月弱で申込件数が200万件を突破したという脅威の伸び率を示しています。

こうした理由から、前述したクレジットカード市場の潜在的な数値が、電子マネーに取って代わられる日も遠くないとも考えられます。ビザも独自の電子マネー「Visa Touch」を展開していますが、イシュアーであっても未導入のところが多い点や、利用店舗数が少ないことなどから苦戦を強いられており、そのサービスも縮小傾向にあります。そんなVisa Touchに代わり、2013年から導入されているのが、すでに世界展開を果たしている「Visa payWave」です。「Visa Touch」と違い、世界51カ国にある「Visa payWave」加盟店で使えることが大きな強みとなっています。ただ、レッドオーシャンとなりつつある電子マネー市場において、2014年7月現在ではその存在感はあまり光ってはいません。クレジットカード潜在市場が電子マネーに流れる可能性があることを考えると、今後の対策が急務となりそうです。

まとめ

クレジットカード業界では圧倒的な強さを誇るビザ。今後成長の鍵は、日本国内におけるセキュリティ面のさらなる向上、そして法人決済におけるクレジットカード利用の普及と、日本で爆発的に成長している電子マネー市場の拡大にどう対応し、関与していくかという3点にあると言えそうです。

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【参考文献】
コイニー、「クレジットカードに関する利用状況調査2014」を実施
クレジットカード未導入で5割の顧客を逃しているかもしれません