世界に先駆けて高齢化が進む日本。厚生労働省の調べによると、平均寿命は男性が80.79歳、女性は87.05歳だ(2015年簡易生命表より)。
すでに100歳以上の人口は6万人を超え、老後の時間はかつてないほど長くなっている。人生のセカンドステージである老後を充実したものにするためには、健康が重要であることは言わずもがな。そこで注目されているのが「健康寿命」。あなたの健康寿命はいったい何歳だろうか。
健康寿命とは
2000年にWHO(世界保健機構)が提唱した「健康寿命」は、「日常的・継続的な医療・介護に依存しないで生活できる期間」のことだ。日本では厚生労働省が2012年、健康日本21(第2次)による「健康寿命の算定方法の指針」を発表しているが、こちらの定義では、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定められている。
厚生労働省が調べたところでは、2013年の健康寿命の平均は、男性で71.19歳、女性で74.21歳。同年の平均寿命の差は、男性9.01年、女性12.40年となっている。この差にあたる年数は健康ではない期間なので、医療費や介護費などの備えが必要であるが、実際にはどの程度の健康状態なのだろうか。
実は、健康寿命の指標は3つある。
指標1:日常生活に制限のない期間の平均
1つめは、健康な状態を日常生活に制限がないことと規定し、調査は次のような質問で行われている。
問1 あなたは現在、健康上の理由で日常生活に何か影響がありますか。
(1)ある
(2)ない
問2 それはどのようなことに影響がありますか。
あてはまるすべての番号に○をつけてください。
(1) 日常生活動作(起床、衣服着脱、食事、入浴など)
(2) 外出(時間や作業量などが制限される)
(3) 仕事、家事、学業(時間や作業量が制限される)
(4) 運動(スポーツを含む)
(5) その他
上記の問1の回答が「ない」なら健康、「ある」なら不健康な状態としているとしていて、実に主観的な指標であることがわかる。平均寿命の差は、男性9.01年、女性12.40年。
指標2:自分が健康であると自覚している期間の平均
2つめの質問は以下の通り。
問 あなたの現在の健康状態はいかがですか。
あてはまる番号1つに○をつけてください。
(1) よい
(2) まあよい
(3) ふつう
(4) あまりよくない
(5) よくない
健康な状態を自分が健康であると自覚していることとしている。選択肢の1~3が健康、4、5を不健康な状態とする。平均寿命との差は、男性9.02年、女性11.89年。
指標3:日常生活動作が自立している期間の平均
3つ目の指標は、健康な状態を日常生活が自立していることとする。介護保険の要介護2~5を不健康な状態としている。
要介護2とは、食事や排泄に何らかの介助が必要になる状態で、そのほかにも立ち上がったり歩いたりすることが一人では困難になる。身体的な介護が必要になる状態で、平均寿命との差は男性1.49年、女性3.24年だ。
医療・介護にかかる費用
指標1、2で不健康とされる年齢になると、医療費がかかるようになってくる。2015年度の一人当たりの医療費は、75歳未満で21万9000円(3割負担で6万5700円)、75歳以上は93万1000円(1割負担で9万3100円)。さらに今後は高齢者の自己負担割合が見直される方向なので、医療費の支出は増加すると思われる。
また、指標3で不健康とされる年齢になれば、介護費用が必要になる。介護は、初期費用が高額になりがちな点が特徴だ。車いすや介護ベッドを購入したり、自宅のリフォームをしたりして初期費用が平均で86万円、その後は月額平均7万3000円ほど必要になる。
また、施設に入ると月20万円以上はかかる場合が多い。特別養護老人ホームは自治体や社会福祉法人が運営していて費用は収入に応じて月3万円からと低額だが、入居は52万人待ちとも言われ、民間の有料老人ホームなどのニーズが高くなっている。
親の介護に持ち出しはNG
自分の介護の前に、親の介護の問題もある。親が元気なうちはなかなか介護について話せないと思って何も準備をしていない過程が多い。しかし、親の具合が悪くなったらもっと話せなくなってしまう。親がどのような希望を持っていて、準備をしているか、できるだけ早い段階で確認しておこう。親の介護は、親の資金でまかなうことが理想だ。そうしないと、自分の老後資金がなくなってしまう。困るのは自分や子供たちだ。
老後資金に特有の問題とは
若くて健康であれば働いて稼ぐことができるが、老後は収入減が限られてしまう。そのため、健康寿命が尽きた後に自分や家族が困らないようにしておきたい。リスクの大きい運用は避け、手堅く着実に資産作りをすることが大切だ。資産作りのスタートは早めに、老後までの長い時間を味方にして、自分らしい人生を実現できるよう十分な準備をしていただきたい。
タケイ啓子
ファイナンシャルプランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。
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