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世界経済ってとても不思議な物だなと最近よく感じます。同じ地球上でありながら同じ物の価格が異なったり、生活水準に差が出たり。経常収支がずっと黒字の国もあれば、ずっと赤字の国もある。私達が普段何気なく過ごしている経済環境はとてもアンバランスな状態のもとに成り立っている事が分かります。今日は私達の住んでいる社会の床下がどのようになっているのかちょっとのぞいてみたいと思います。

現在のグローバル・インバランスの構図

グローバル・インバランスという言葉をまず定義したいと思います。これは世界的な経常収支の不均衡という意味です。つまりある一定以上の期間、輸出と輸入の比が極端に偏っていたままになってしまうと言う状態を表します。

経常黒字国としてアジア諸国があげられます、これは輸出主導型の経済成長戦略のもとに発展してきた結果です。特に中国は日本に代わって米国の最大貿易摩擦国として君臨しています。さらに石油や天然資源が豊かな資源国や、高い技術力を持ったドイツ、日本なども高い付加価値を持った製品を輸出する事で大きな経常黒字を出しています。

では経常赤字国はどうでしょうか、世界中の国々を並べてみてもダントツなのがアメリカで、最下位近辺の国々と比べても1ケタ大きい赤字額となっています。2013年の経常収支(貿易収支+サービス収支+所得収支+経常移転収支)を日本とアメリカで比較してみると日本+610億ドル、アメリカ-4510億ドルと巨額な数値になっています。特にアメリカの経常赤字は慢性化しており1980年以降現在に至るまで黒字化した事はありません。

アメリカ頼みの消費

アメリカの貿易赤字が世界最大で群を抜いているという事は既にご紹介しました。実はこの巨額な貿易赤字が無ければアジア諸国の巨額な貿易黒字を作り出す事が出来ないのです。つまりアメリカが消費してくれたからこそ、アジア諸国は輸出主導による経済成長を成し遂げる事が出来たのです。つまりアメリカは収入以上の支出を借金しながら続けてきた事になります。

逆に経常黒字国は収入が支出を上回る状態が長期間にわたり貯蓄過剰な状態が続いています。つまり私達の経済はアメリカが消費してくれているからこそ成り立っているという構造となっており、経常黒字国もアメリカに投資し続けなければアメリカはすぐに行き詰ってしまう可能性だってあるのです。現在も膨張を続けるアメリカ市場ですが、経常黒字国がアメリカへの投資をやめて資金を一気に引き上げてしまうとドル・米国債・米株がトリプル暴落となり、世界が大混乱するという事態にまで発展しかねません。まるでつっかえ棒がされた家に増築を重ねていき、どんどん大きなお屋敷の様な大きさに成長しているのと同じです。

アメリカに流入する経常黒字国のマネー

アメリカが長期間経常赤字の状態にも関わらず破綻しないのは、マネーの貸し手がいるからです。実はこの経常黒字国の巨額のマネーがアメリカに投資されているのです。その金融商品は米国債や政府が発行する証券、米国企業の株式など多岐に渡ります。特にリーマンショックに至るまでに膨らんだ住宅バブルはこの経常黒字国のマネーが流入していたと言われています。アメリカの住宅価格を長期間にわたり上昇させてきたマネーはアメリカ人に過剰な借金をさせて豪華な家を買わせたのです。それがかの有名なサブプライムローンで、殆ど収入が無い人に住宅価格が上昇し続けると言った前提で大してリスクの説明もせずに巨額の融資を行っていたのです。

最大の貿易摩擦国中国と元の切り上げ要求

米国に対して巨額の経常黒字を積み上げてきた中国は中国元の切り上げ要求を幾度も受けてきました。元高ドル安にする事で中国製品の価格競争力を低下させる狙いがあったのです。これを受けて中国は変動を一定の範囲内に抑える管理変動相場制を導入しました。その変動幅は当初0.3%でしたが2007年には0.5%へ引き上げられ2012年には1%まで拡大しています。日本の輸出企業が超円高で苦しんだ事はみなさんもご存知かと思いますが、中国元は為替レートの変動幅が決められている為為替リスクが少ない企業経営が出来る事になります。世界の工場としてはそういった面で非常に有利ですのでまだまだ発展していく可能性が高いと言えます。

この先も経常収支の不均衡は続く

現在のグローバル・インバランスは是正しなければならない深刻な問題ですが、アジア諸国の輸出主導型の成長モデルをすぐに変える事は出来ないでしょう。特に日本などは少子高齢化が顕著で消費意欲が旺盛だった高度経済成長期から低成長経済への枠組みができてしまいつつあります。従って国内の需要ボリュームは輸出企業にとってほとんど魅力的なものではありません。中国にしても極端な元の切り上げをしてしまうと日本同様にデフレに陥ってしまう可能性が高い為、完全変動相場制に移行する事はまず考えられません。中国国内の貧富の差は極端なピラミッド型となっている為、対アメリカで輸出していた需要を国内だけで賄うのは非常に難しい為、輸出主導の成長モデル戦略はまだまだ続くと考えられます。しかし、アメリカもいつまでも借金が出来るわけではありませんので今後どの様にランディングしていくのか注意深く見守る必要があります。

photo credit: Ian Sane via photopin cc