6月に入り、日経平均株価が2万円大台を回復しました。世界的な株価上昇に加え、我が国の企業業績が拡大していることが大きな要因と考えられます。米国でのコミー前FBI長官による議会証言やECB理事会、英総選挙等の重要日程を控え、リスク回避の動きから再び2万円大台を割り込みましたが、これらの重要日程も無事通過となり、再度株価の上昇が期待できそうです。
そうした中、話題になっているのが半導体関連株です。スマホやタブレット等の普及が進んでいることに加え、IoTやAI、車載向け市場など、新しい用途の拡大を背景に半導体への需要増加が加速しているためです。世界的に関連銘柄の株価は上昇しており、東京市場でも株価上昇の主役のひとつになっています。
そこで今回の「日本株投資戦略」では、半導体関連株のアウトラインを示すとともに、今後も物色対象になりそうな銘柄をスクリーニングにより抽出してみました。
半導体市場に「スーパーサイクル」が到来?
米国市場では、主要株価指数が史上最高値を更新するなど上昇基調が続いています。そのけん引役として半導体関連株の存在があげられます。図1は、世界の主要半導体関連株から構成されるSOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)ですが、リーマンショック直後の08年11月を底に上昇し、ITバブルと言われた00年3月に付けたピーク水準に迫る勢いになっています。
数多い半導体関連株の中でも、パフォーマンスの良さが目立っている銘柄のひとつにエヌビディア(NVDA)があげられます。画像処理に使われるグラフィック・プロセッサー(GPU)が得意で、任天堂の新ゲーム機「Nintendo Switch」にも採用されています。この会社のGPUはAI(人工知能)のトレーニングに欠かせない存在であるため、データセンター向けの需要が拡大しています。図2にもあるように、株価は過去2年足らずで約8倍になっています。
※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。データは2017/6/8(現地時間)現在
半導体の業界団体である世界半導体市場統計(WSTS)は6/6(火)に、2017年の世界半導体売上高が前年比11.5%増の3,778億ドル(約41.5兆円)に膨らむとの予想を発表しました。図3は世界半導体売上高の推移を91年以降について示したものです。半導体売上高は過去最高水準で推移しており、その伸び率も4月までの5ヵ月は2ケタとなっています。
スマホ市場の拡大が続く中、高機能化・高速化を背景に、半導体の搭載量が増えています。さらに、すべてのモノがインターネットにつながるIoTの普及により、やり取りされるデータ量が飛躍的に増え、データセンター等での半導体需要が拡大しつつあります。この他、AI(人工知能)やVR(仮想現実)、自動運転や環境対応が進む自動車など、半導体の用途が飛躍的に拡大しつつあり、需要の拡大が続いています。
半導体市場では市場の拡大が何年か続いた後に縮小期を迎える「シリコンサイクル」の存在が指摘されてきましたが、今回の拡大はそうした経験則を超えて拡大期が長期化する「スーパーサイクル」になるのではとの期待が強まっています。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
市場で活躍しているおもな半導体関連株
ところで、半導体関連株とはどのような銘柄を指すのでしょうか。SBI証券のWebページで銘柄検索機能を利用すれば、関連銘柄を抽出することが可能性です。ホームトップまたは国内株式のページの銘柄検索ウィンドウに「半導体」と入力してみてください。銘柄名とともに「半導体材料・関連資材」、「半導体製造装置」、「半導体製造」、「半導体・FPD搬送装置」、「半導体検査装置」、「半導体・FPD検査装置」などの区分が表示されています。そして改めて、例えば「半導体製造装置」と入力すると、東京エレクトロン <8035> をはじめ、複数の「半導体製造装置」関連株が表示されます。
今回の「日本株投資戦略」では、上記の区分名を入力して抽出される銘柄および一般的に半導体関連銘柄と称される銘柄を母集団として分析を行いました。なお、サムスン電子とフラッシュメモリーで競う東芝 <6502> は不正会計問題や半導体メモリー事業売却問題等を考慮し、含めませんでした。
表1は「半導体関連株」のうち、時価総額上位の銘柄を示したものです。かつては「日の丸半導体」が世界を席巻し、我が国にも多くの半導体メーカーがありましたが、残念ながら現在は、その分野での競争力の多くは失われてしまっています。例外的に東芝のフラッシュメモリーは世界的な競争力を維持していますが、不正会計問題で会社経営自体が動揺しており、半導体メモリー部門は売却される方向で話が進んでいます。
これに対し、半導体材料や半導体製造装置は世界的な競争力を有しており、今後も活躍が期待できそうです。半導体の材料であるシリコンウェハーでは信越化学 <4063> やSUMCO <3436> が世界的大手ですし、東京エレクトロン <8035> も幅広く半導体製造装置に展開し、市場で上位を占めています。なお、FPD製造装置は液晶や有機EL等のディスプレイを製造する装置ですが、半導体製造装置の技術と近いため、ここでは半導体関連の事業として扱っています。
今・来期と増益が予想される半導体関連株は?
最後に、半導体関連株の中から今後も好パフォーマンスが期待できる銘柄をスクリーニングによって抽出してみました。条件は以下の通りで、前項で「半導体関連株」として分類された銘柄を母集団としました。
(1)2社以上のアナリストが業績予想を公表
(2)今期予想営業利益(市場コンセンサス)が5%超の増益見通し
(3)来期予想営業利益(同)が5%超の増益見通し
(4)今期予想PER(同)が30倍未満
上記の全条件を満たす銘柄を(3)の来期予想営業増益率が大きい順に掲載したものが表3となります。半導体産業は事業環境が急変しやすい産業で「3ヵ月先さえも読めない」と言われることが多くあります。それでも、アナリストが来期に向けて大幅増益を見込んでいる銘柄は、成長ポテンシャルが大きい可能性があります。
やや意外であったのは株価が大きく上昇した東京エレクトロン(8035)の予想PERが意外に低いことです。いわゆる「バブル」と呼ばれる相場では、極端に高いPERに評価される銘柄が増えてきますが、このように半導体関連株の中でも主力株といえそうないくつかの銘柄についても、予想PERが意外と低い銘柄が多く、上値余地は大きいのかもしれません。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
鈴木英之
SBI証券
投資調査部
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