大阪市の中心部でタワーマンションの建設が相次ぎ、子育て世代の都心回帰が続いている。繁華街の梅田や難波に近い北、西、中央の3区では、小学校に通う児童が急増し、5年後の2022年度に約140の教室が不足する見込み。市教委は校舎増築や特別教室の転用などで対応してきたが、手狭な学校が多く、従来通りの方法ではとても不足分を確保できそうもない。

市は市教委任せの方針を転換、吉村洋文市長をトップとする組織横断型のプロジェクトチームを立ち上げ、高層ビルの校舎建築や民間ビル借り入れなどの検討に入った。

陰りが見えないタワーマンションの建設ラッシュ

タワマン,人口格差
児童の急増で教室不足に悩む大阪市西区の西船場小学校(写真=筆者)

市企画振興部によると、1965年に315万人を数えた市の人口は、ドーナツ化現象で1990年代に250万人台に減少した。しかし、2000年代に都心回帰の動きが加速すると増加に転じ、2016年には270万人を上回った。関西全体が人口減少に転じる中、市中心部だけが人口を増やしている。

人口集中を引き起こしたのは、北、西、中央の3区を中心に建設が相次ぐタワーマンションだ。住人の多くが職住近接を好み、郊外から移り住んできた子育て世代になる。

タワーマンションの建設ラッシュに陰りは見えない。不動産経済研究所によると、2017年以降に完成予定のタワーマンションは市内で24棟、8325戸に上る。関西全体の41棟、1万3249戸のざっと6割が大阪市内で、その多くが市中心部に集中している。

中央区の43階建て311戸のマンションは、2016年12月売り出しの119戸が即月完売した。このあとも10月に北区中之島で55階建て894戸のマンションが完成する予定。さらに北区中津では、400~650戸の計3棟が建築中だ。

不動産経済研究所大阪事務所は「緩やかな景気回復や子育て世代の都心回帰で市中心部のマンション需要が伸びている」とみている。資材価格や人件費の高騰で郊外型マンションの価格が上がったことも、都心回帰の動きを後押ししているようだ。

市中心部への人口集中にさらに拍車をかけそうな要因もある。2031年春に開業予定の「なにわ筋線」だ。府、市、JR西日本、南海電気鉄道などが連携して北区に新設されるJR北梅田駅から浪速区のJR難波駅、新設予定の南海新難波駅を結ぶ新動脈で、JR西日本と南海が共同運行する。

中間駅は北区と西区に設置される方向。多くの不動産業者が沿線に熱い視線を注いでおり、タワーマンション建設ラッシュがさらに活気づきそうな状況だ。

増築や特別教室転用での対応は限界