6月になり夏のボーナスが支給された方も出始めてきただろう。公務員のボーナス支給日は6月30日となっているが、一般企業の多くは7月に支給されるところが多い。使い道に今からあれこれ考える人も少なくないだろう。
しかし、ここで気になるのが手取り金額だ。通常の給与と同じく、ボーナスからも税金や保険料が差し引かれる。どういったものが差し引かれるのか。また、いくらぐらい差し引かれるのだろうか。額面金額で見込むのではなく、税金などを控除した後の手取り金額がわかれば、使い道や予算計画も立てやすい。
ボーナスは賞与のひとつ。賞与ってどういうもの?
ボーナスは税金上、「賞与」のひとつとして扱われている。税金上の「賞与」とは、毎月支払われる定期の給与と別に支払われるもので、賞与、ボーナス、夏季手当、年末手当、期末手当などの名目がつくものとされているが、企業の決算純益を基準として支給されるもの、事前の支給額や支給基準額が決められていないものも賞与に含まれる。
そして賞与は所得税法上「給与所得」として扱われる。そのため、年末調整の時期には年末調整の対象とされ、毎月支給される給料と合算されてその1年の年収と所得税が計算されることになる。
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賞与から差し引かれているもの
賞与は給与所得のひとつだ。そして日本の企業は、従業員に支払われる給与所得について所得税や社会保険料を源泉徴収する義務がある。賞与も毎月支給の給与と同じく、源泉徴収の対象となっている。
賞与から源泉徴収されるものは、所得税、社会保険料(健康保険、厚生年金)、雇用保険の4つだ。ちなみに賞与からは住民税は控除されない。企業が自ら毎月の支給額から計算する源泉所得税と違い、住民税は前年の所得から地方自治体が計算する。各自治体が通知書で通知してきた毎月の住民税額を、企業がその従業員の毎月の給与から天引きし、納付するのが一般的となっている。
いったいいくら引かれているの?
賞与から差し引かれる社会保険料、雇用保険料、源泉所得税は次のように計算される。
1. 社会保険
社会保険は、基本的に健康保険・厚生年金から構成される。いずれも、保険料は企業と従業員とで折半になっている。下記料率はいずれも従業員が負担するものを表す。
(1)健康保険
標準賞与額(賞与の額目金額)×保険料率4.955%(介護保険第2号被保険者 ※1は5.78%)※2
※1介護保険第2号者とは40歳から64歳までの健康保険の被保険者のこと。
※2加入組合や地域によって料率が異なるので注意していただきたい。
(2)厚生年金
標準賞与額(賞与の額面金額)×保険料率9.091%(坑内員・船員は9.092%)
2. 雇用保険
雇用保険は労災保険と並び、労働保険と呼ばれる。料率0.9%(農林水産・清酒製造は1.1%、建設は1.2%)のうち下記料率のみ従業員が負担し、残りは企業が負担する。
賞与の支給金額(額面金額)×保険料率0.3%(農林水産・清酒製造・建設の事業は0.4%)
3. 源泉所得税
賞与に課される源泉所得税は、社会保険料と雇用保険を差し引いた後の支給金額と扶養親族の人数によって変動する。
扶養親族がいない場合、6万8000円未満まで、扶養親族が3人いる場合は、17万1000円までは所得税は課されない。しかし、一定の金額を超えると、その金額と扶養家族の人数に応じて、2.042%から45.945%の率を乗じた金額が所得税として賞与の額から源泉徴収されることになる。
なお、従業員本人や扶養家族が障がい者である場合や死別や離婚などによるシングルマザーやシングルファザーである場合、また働きながら夜学などに通っている場合には、扶養親族をその該当する都度1人増やした上で、料率を検討していくこととなる。
扶養家族2人、40代男性の夏のボーナスが50万円の場合
では、ここで例を考えてみよう。40代のサラリーマン(専業主婦の妻1人、高校生の子ども1人、IT企業勤務)が夏のボーナスで50万円をもらった場合、保険料や税額、手取り額は下記のようになる。
1. 額面金額:50万円
2. 社会保険料
(1) 健康保険料 50万円×5.78%=2万8900円
(2) 厚生年金保険料 50万円×9.091%=4万5455円
(3) (1)+(2)=7万4355円
3. 雇用保険料 50万円×0.3%=1500円
4. 源泉所得税 50万円‐(2+3)=42万4145円
∴税率12.252%
42万4145円×12.252%=5万1966円
5. 保険料及び所得税合計額
2+3+4=12万7821円
6. 手取額
1-5=37万2179円
額面金額で50万円なのに、実際には25%近い税金や保険料が差し引かれてしまう。料率で考えると小さく感じるが、絶対額を見ると、なんと12万円以上も受け取る時点で減っているのである。ボーナスでカードローンの支払いや買い物を考えている人も少なくないと思うが、額面金額で予算をたててしまうと、アテがはずれてガッカリしてしまうことになりかねない。
夏のボーナスは基本給の1~1.5か月分、多くて2か月分というのが一般的だ。「ボーナスはいつもの給与と違ってご褒美的だ」と感じる人が多いようだが、冷静に考えれば毎月の給与と大きな金額差はないこと、そして保険料や税金で2~3割減ってしまうことを考えると、あまり期待を膨らませないほうが賢明だろう。
企業の実務からいうと、ボーナスは支給義務があるわけではなく、景気が悪ければボーナスの支給をストップしてしまうことがいつでも可能なのである。つまり、ボーナスは、純然たる「棚ぼた」なのだ。
本記事でボーナスのリアルな現実を知るのをきっかけに、自分のお金の使い方を見なおし、どうすればボーナスが自分の人生に活きてくるかを考えてみてはいかがだろうか。
鈴木 まゆ子
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年税理士登録。現在、外国人の日本国内での起業支援に従事。会計や税金、数字に関する話題についての記事執筆を行う。税金や金銭、経済的DVにまつわる心理についても独自に研究している。共著に「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)がある。ブログ「
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