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量的緩和政策と債券市場

2009年3月のFOMCでは米国国債とエージェンシーMBS(政府機関保証住宅ローン担保証券)の購入額に対して大幅増額が発表されました。一般的にはこの発表がQE(quantitative easing)と呼ばれる量的緩和政策の開始とされています。以降2010年11月のQE2では6000億ドルの米国国債の購入を決定、また2012年の9月のFOMCでは毎月400億ドルのエージェンシーMBS債の購入と毎月450億ドルの米国国債を購入するというQE3が決定されました。2013年12月のFOMCでは、ようやくQE3縮小の糸口が発表された訳ですが、長期金利や住宅金利を引き下げ、市場に流動性を供給するための金融政策は債券市場を使って行なわれている訳です。

2013年Q1における米国の債券市場規模は、Securities Industry and Financial Markets Association(SIFMA)によると$386,540億ドルにのぼります。また1日あたりの平均取引額は8,220億ドルにのぼります。米国国債、社債、エージェンシー債、モーゲージ債などなどアメリカ国内における債券には様々な種類がありますが、今回は特に米国国債、エージェンシー債、モーゲージ債に焦点をあて解説していきたいと思います。


米国国債市場

Treasuryと総称されている米国財務省が発行する米国国債はその満期によって呼ばれ方が異なります。満期が1年以下の割引債(発行時に額面金額より低い価格で発行され、償還時には額面金額で償還される債券。発行価格と額面金額との差が収益となります。ゼロクーポン債やディスカウント債とも呼ばれます。)をTB(Treasury Bill)と呼びます。4週間、3ヶ月、6ヶ月、1年物の4種類が発行されており、オークション形式で入札が行なわれます。ニューヨーク連銀が行なうオペの際、相手方となるプライマリーディーラーとなるには政府公認が必要となります。また直近に発行された金利が短期金融市場の指標として利用されます。

満期が1年から10年以下の利付債(定期的に利払いが行われる債券。額面金額で発行され償還期日に額面金額で償還されます。)をT Note(Treasury Note)と呼びます。現在は2年、3年、5年、7年、10年物が発行されています。10年以上の利付債はT Bond(Treasury Bond)と呼ばれており、30年物が発行されています。直近に発行された金利が長期金利の指標として利用されています。またTB、T Note、T Bondの金利を縦軸に、期間を横軸にとるとイールドカーブが出来上がり市場関係者は絶えずこの数値と形に気を配っています。さらに1997年より元本がインフレ率に応じて変化する物価連動国債(TIPS:Treasury Inflation Protected Securities)も近年市場が拡大しています。5年、10年、30年物の発行を行なっています。

発行量、安全性、流動性の観点からみて中長期の投資手段としては世界一の投資対象といえます。2013年10月時点で500億ドルを超える額を米国以外の海外で保有されており、日本は中国に次いで世界第二位の米国国債保有国となっています。


エージェンシー債市場

エージェンシー債とはGSE(Government Sponsored Enterprise)と呼ばれる政府系金融機関が発行する債券を指します。GSEには連邦住宅抵当金庫(通称ファニーメイ)や連邦住宅金融抵当公社(通称フレディマック)が有名ですが、他にも学生ローン販売組合(通称サリーメイ)や農業信用制度FCS(Farm Credit System)などが発行する債券が含まれます。これらGSEは政府の機関ではないためエージェンシー債には明確な政府の保証は付いていないのですが、市場は暗黙の了解として政府保証があると見なしているといわれています。FEDによるオペレーションの対象となっている債券ですので、信用性に加え流動性も高く米国国債に次ぐ扱いとなっています。


モーゲージ債

いわゆるMBS(Mortgage Backed Securities)と呼ばれる住宅ローン担保証券は、小口の住宅ローンをまとめて証券化した債券をさします。米国でも住宅購入の際には銀行などの金融機関で住宅ローンをくむのが一般的です。住宅ローンを貸し出した金融機関はリスクを低減させるため、複数のローンを上述のファニーメイやフレディマックといった政府系機関を通じ証券化し市場で売却します。政府系機関は投資家に対して元本と金利の支払いを保証しており、これらの機関が保証するMBSをエージェンシーMBSと呼びます。政府系機関が保証を行なう際には、借り手の債務所得比率や、ローン金額の上限など、含まれるローンに対しての基準が存在します。その基準に満たないローンを証券化する際は民間MBSとなります。この民間MBSはローンの信用力の違いにより、ジャンボ、オルトA、サブプライムなどに分類されます。


クレジットスプレッドとは

民間や公共機関は政府よりも信用力が劣るため債券を発行するためには国債よりも高い金利をつける必要があります。この利回りの差をクレジットスプレッドまたは信用スプレッドと呼びます。個別の債券の格付けを理解しやすくするためにS&Pなどの格付機関がありますが、実際に国債との数値としての金利差を見るとより市場がどの程度のリスクを見いだしているかが読み取れます。特に景気が後退する際はスプレッドが拡大し、とくに格付機関からBBB(投資適格債)未満の債券においてクレジットスプレッドが上昇する傾向にあり債券市場への投資家は注意を払う必要があります。またエージェンシー債と国債とのスプレッドを特にTAGスプレッドと呼びます。エージェンシー債には明確な政府保証はないですが、暗黙に政府保証があると考えられているところがあるためAAAの社債スプレッドよりさらに低い水準となっています。米国債券市場に注目されている方には是非、注意を払って頂きたい数値となります。

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photo credit: JD Hancock via photopin cc