ソーシャルレンディングで投資を行うのはとても簡単です。投資をおこなうサービスを選択したら、案件を選択して、投資金額を決めるだけです。あとは、案件の運用期間が過ぎて、元本とリターンが返ってくるのが待つだけです。大抵の案件では配当は毎月分配ですので、それを楽しむことができるでしょう。
しかしあまりのお任せっぷり、お気楽っぷりに、気づきにくいかもしれませんが、ソーシャルレンディングには様々なつまずくポイント、落とし穴が存在します。しかしそのポイントを知っていれば、危険を回避することも、ダメージを浅くすることも可能です。
本記事は初心者向けの記事としてそれらについて、お知らせすることを目的としています。
最初にお断りをしておくと、サービスの信用(倒産)リスクや為替リスクなど、ありきたりでわかりやすいものには極力触れません。ああ、そんな気づかないポイントがあるのか!と思ってもらうことを目標にしたいと思います。
投資家利回りだけで、案件のリスクを計算するな!
投資商品では、基本投資家利回りとリスクは比例するものです。
投資家利回りを見て、「10%以上の利回りが高いファンドは、リスクも高いところに貸しているのだ。5%ならば、それだけ低利回りで資金を調達できる安全なところに貸しているのだ」と初心者は考えがちです。
しかしそれは誤りです。
実際に融資される際には事業者手数料が上乗せされた利率で貸し出されることに注意しなければいけません。この手数料は1.5~3%がボリュームゾーンです。もちろんそれより高い場合も低い場合もあります。サービスによりその手数料はわかりにくかったりもします。
しかし、できるだけ事業者手数料も踏まえて案件のリスクを考えましょう。
投資家利回りが5%であっても、事業者手数料が5%ならば貸出金利は10%です。しかし事業者手数料が10%ならば貸出金利は15%であり、後者の方を高リスクと捉えるべきなのです。
早期返済を気にするな!
サービスによっては、投資リターンを計算できるシミュレーターを案件募集のページに設置しています。
しかし、それを当てにしてはいけません。
ソーシャルレンディングでは早期返済が発生し、運用期間満期まで貸出が行われない場合も数多くあります。シミュレーターは運用期間いっぱいまで貸し出されることを前提とした計算なので、早期返済された場合、当然リターンは小さくなります。
融資先は、いつでも手数料なしで早期返済しても良いという条件で高金利を受け入れています。投資家は高利回りの代償として、気にせず、めげずに償還されたお金と利息の活用方法を考えましょう。
詳細な説明のある担保を狙え!
安全な資産運用のためには、担保付きの案件を狙いましょう。また、その担保の情報がなるべく詳細に示されている案件を選ぶようにしましょう。サービス・案件ごとにその情報開示は大きな違いがあります。
特に、不動産担保はその情報開示の度合いが、サービスにより大きく異なるので、運営会社の姿勢を見るのに格好の事例です。
債権担保で注意すべきは、その担保が融資先企業の株式である場合です。実際に返済が行き詰まったときに、そのような会社の株式価値は果たしてどの程度あるのか?をよく考えましょう。
十分な案件が提出されているサービスで運用しよう!
サービスによっては、案件の掲載数が少なく、多様性に乏しい場合があります。あなたがそれなりの金額を運用する投資家で、幾つもの会社を利用しているならば、運営会社の体制・ビジョン・投資商品のメリットに目を向けて投資をするのもよいでしょう。
しかし初心者で運用金額が少ない場合はそのような運営会社は避けたほうが無難でしょう。案件のバリエーションが豊富な事業者で投資することをおすすめします。常に分散投資を最大限行える体制を心がけるようにしましょう。
分配方法の元本一括、元利均等には気をつけろ!
分配方式には大きく分けて、元本一括と元利均等があります。その詳細な説明はここではしません。しかし同じ利回りならば
・元本一括
リスクが大きく、リターンも大きい、元本は案件運用の最後まで返却されない
・元利均等
リスクが小さく、リターンも小さい、元本は分割払いで少しずつ返済される
であることには留意しましょう。
資金の最大活用を狙うならば元本一括、毎月まとまった額の元本を返却してもらい、他の用途に転用したいならば元利均等を選択するという方法でもいいでしょう。現在ソーシャルレンディングの案件は元利一括が主流です。あまり間違えることはないでしょう。
ただ元利均等と元本一括の案件が混在していたころは、元本一括のつもりが元利均等の案件に投資してしまい、高利回りの当てを外してしまったということがありました。
満期一括の案件は複利効果が働かないことに注意!
数は少ないですが、分配方法が満期一括の案件も存在します。元本と利息が案件の運用期間終了後だけに支払われる方式です。ソーシャルレンディングで主流の元本一括ではリターンが毎月分配されるものが多いので、それに比べるとお得感がすこし薄れる分配方法です。
100万円に対して1年で12万円の分配がある、満期一括と元本一括の案件を比較しましょう。
どちらも1年後に12万円の分配があることには変わりません。
しかし毎月分配の元本一括の案件では、利回りの12万円うち11万円はその1年がすぎる前に1月に1万円ずつ分配されます。その分配額を他の案件にうまく再投資できれば、実際にその案件で得られるリターンは12万円よりも大きくなります。複利効果のようなものです。
これだけを考えると元本一括の方が、満期一括よりもお得なようです。しかし投資を考える際には利回りだけに囚われるのはよくありません。満期一括のほうがその他の項目も考えれば、はるかに好条件である場合もあるでしょう。
満期一括の案件がその案件内で再投資しているような仕組みをすでに採用しているならば、元本一括よりも効率的に資金を運用できていることになります。分配方式はあくまで投資における、要素のひとつとしてお考えください。
投資資金は前払い、後払い?
投資資金はサービスの運用会社により、振り込むタイミングが異なります。ほとんどのサービスはデポジット(預託)口座に投資家が先に資金を振り込むとうい方法をとっています。そのデポジット口座にある資金分だけ投資家は投資を行えます。
案件への投資申込みを行い、その後に振り込む方法を採用しているサービスも少数あります。後者を採用しているサービスに、案件を選択する前に投資資金を振り込んでしまうと、返金や再投資の手続きなど煩わしい作業が発生する可能性があります。注意しましょう。
投資中の案件は信託保全されない!
信託保全とは、運用会社が投資家から預かった資産を外部機関(例えば信託銀行、ほふり)に顧客資産の保護を目的に預けることです。このことにより、運用会社が破綻しても、顧客資産はその安全が保証されます。
株式、投資信託投資においては、まともな証券会社で運用するかぎり、それらの投資商品と預託金は顧客のものであり、分別管理・信託保全されます。何重ものセーフティネットが設けられ、仮に証券会社が破綻しても、それらは保証され、投資家のもとに戻ってきます。
また、FXでも大抵の運用会社において、預託金は分別管理・信託保全されています。
しかしソーシャルレンディングにおいて、信託保全はほとんど設けられていません。あくまで分別管理されているだけです。
法律上は株式、投資信託、FX、ソーシャルレンディングにおいて、預託金も投資商品も顧客のものです。しかしその保全体制は大きな違いがあることに注意しましょう。
結局は運用会社がどれだけしっかりとした、顧客資産の保全体制を取っているかにかかっています。信用できる運用会社を見極めましょう。
なお、投資資金を後払いするサービスにおいて、預託金口座は設けられていません。信託保全を採用しないのならば、預託金を口座も設けないほうが、顧客資産の安全は図られます。分配された利息と元本は投資家の銀行口座へまっすぐ返されるからです。
人気案件だけを狙って、資金を遊ばせるな!
人気案件においては、その募集開始と同時に多数の投資家による申し込みが殺到して、ものの数分で満額成立するものがあります。人気案件は高利回り、良担保、運用会社の実績などの好条件が揃っているので、申し込みが殺到するのも当然といえるでしょう。
そういった案件をだけ狙うのはよいのですが、クリック合戦とも揶揄される争いに敗れれば資金を遊ばせてしまうことになります。あまり人気案件ばかりにとらわれず効率よく資産を運用できる体制を考えましょう。
投資申請キャンセルの可否、できるタイミングに注意!
どのサービスも一緒のようで違うのが、キャンセルできるタイミングです。投資申込みはどの会社も同じようなものですが、キャンセルのタイミングは異なることには要注意です。案件の募集が締め切られるまで、キャンセルを受け入れてくれるところもあれば、キャンセルができないところもあります。
キャンセルをオンラインで行えるところもあれば、電話で連絡する必要があるところもあります。キャンセルがオンラインでできるところ以外に投資申込みをするときは、一呼吸おいて、よく考えて行いましょう。
流動性が低いことには注意!
最初に「ありきたりでわかりやすい」点は注意しない!と申し上げましたが、この「流動性リスク」だけには言及させてください。ソーシャルレンディングは流動性の低さが最大の難点です。急な資金が必要となることがわかっていても、途中解約、売却はできません。
家計の資金繰りに困るような事態に陥ってしまうと、大損害を招きかねません。
あくまで余裕資金の範囲で投資をするようにしましょう。
生活資金まで投資してはいけない!
ソーシャルレンディング投資を続けていくと、その利益の確実性、利回りの良さにから、ついつい資金をどんどんつぎ込んでしまいたくなります。株式、FXなどのキャピタルゲイン投資と違って、インカムゲインであるソーシャルレンディングでは、同じ利回りならば、投資金額に単純にリターンが比例するからです。
少しでも高い利回りが欲しくて、他の投資商品からリタイアして、ソーシャルレンディングに投資してしまうのです。
しかし、だからと言って生活資金まで投資してしまうことは奨められません。特に先にまとまった金額が必要になることが分かっていながら、それを銀行口座にキープしておかず、ギリギリまでソーシャルレンディングで運用しようと考えるのは火傷のもとです。
いくら早期返済の方が多いからといって、延滞が起きることもあります。今後、デフォルトが起きることもあるでしょう。それにより生活基盤に傷をつけてしまうような資産運用は、やはりしてはいけません。
実際に資金繰りにこまるような事態になったら、せっかくのソーシャルレンディングのメリットである、資金運用に心を過度に砕く必要がない、というソーシャルレンディング最大のメリットを捨てることになります。
手元にある生活資金はギリギリまで運用すれば、もうちょっとだけリターンが得られるのに、などとは考えてはいけません。その得られなかったリターンは平穏な生活の保証料であり、保険料です。
投資とは、より良い生活を行うために行うものです。その本質を見失わないようにしましょう。
資産が運用されない期間が長いことに注意!
ソーシャルレンディングでは案件の募集期間や、その他の手続きの期間が長い案件があるのが通常です。融資先から返却された資金が、実際に投資家のもとにと届くまでもある程度の時間がかかります。これらの期間には、当然リターンは発生しません。発生するのは資金が顧客に融資されている期間だけです。
案件の運用期間が短いほど上記のリターンが発生しない期間が運用期間全体に占める割合が大きくなる傾向があります。留意しましょう。
口座、案件管理が大変!
サービスごとの口座と投資中の案件管理が大変なのも、要注意です。
(記事提供= クラウドポートニュース )
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