平成28年1月1日以降、外国債券に関する税金体系は大きく変わります。特に、現在非課税の運用益が課税対象になるので、その内容を勉強したいと思います。

日本の所得税課税制度の種類と特徴

日本では所得税の課税は主に三つの方法で行われます。最も一般的な課税方法は総合課税制度です。税金の負担者自身が確定申告をすることによって税額が決まります。申告の内容には税金の負担者の種々の所得を合算して総合的に所得はいくらあったのかという事です。

総合課税の対象になる所得には、①源泉分離課税されない利子所得②源泉分離課税されない配当所得③不動産所得④事業所得⑤給与所得⑥譲渡所得⑦一時所得⑧雑所得などがあります。

これらの所得額を確定申告し合計金額によって定められた税率で課税されます。ただし、所得項目によって控除額が定められているのでその分は控除されます。

出典:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm 2014,3,8

総合課税の次によく行われているのが源泉分離課税です。他の所得と切り離して単独で一定の税率を課税する方法で、報酬を受け取る時に源泉徴収されます。源泉徴収の時点で課税も納税も完結してしまう方法です。

対象になる所得には①利子所得のうち総合課税の対象にならないもの②特定目的信託のうち社債的受益権の配当③私募公社債等運用投資信託の配当④懸賞金付預貯金等の懸賞金等⑤定期積金の給付補てん金⑥一定の割引債の償還差益などです。

①~⑤までの所得には20.315%(所得税15.315%、地方税5%)が課税されます。

⑥に関しては所得額の18.378%が課税されます。

三つ目の課税方法は申告分離課税です。税の負担者が確定申告する方法は総合課税と同じですが申告分離課税では他の所得と合算せずに単独で税額が決まります。この方法で課税される所得は山林所得や土地建物等、株式等の譲渡所得、一定の先物取引の得等などです。

税率は下記の通りです。

出典:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1463.htm 2014,3,8

*投資などで損失を出した場合に、分離課税以外の特定の所得に関しては他の所得と損失を相殺して実質的な所得控除にできる制度が有ります。

その制度を損益通算制度といいます。

現行の外債の種類別課税体系

現行の税制では外債の売買益は非課税です。外債を売却して、円転換した時に為替差益をあげていればその利益にも税金はかかりません。ただし、損失を出した場合には他の所得との通算はできません。しかし、外債の償還差益は総合課税です。総合課税の場合には、確定申告をして他の所得と合算して、その合計金額に見合う税率で課税されます。納税は、確定申告期間中に一括して行います。他の所得と損益を通算できるので、もし、損を出してしまった時には他の所得の控除の対象になります。また、外債の分配金(利子)は源泉分離課税です。この場合には、利益を受取る時に税金を差し引いて受け取ることになりま差し引かれかれた税金は、差し引いた事業者が管轄の税務署に納税します。

現行  外債運用益の課税体系

税制改正後の税金体系

平成28年1月1日以降、外債に関する税制は大きく変わります。現行、非課税の売買益は申告分離課税に変わります。また、現行総合課税の償還差益も申告分離課税に変わります。そして、売買や償還の時に損失が出た場合には利子や配当と損益通算できるのでこの部分で所得控除を受ける事が出来ます。非課税部分が無くなってしまう分、増税ではありますが損失を出してしまった時にはその損失分に関しては減税の一面もあるという事です。

税制改正直前、外債投資でしておくべきこと

平成28年1月1日以降、今迄非課税だった外債の売買益に関して申告分離課税に変わります。売買益が見込める外債は、平生27年12月31日までに売ってしまった方が節税という意味では有利になります。現行でも、外債の償還益は総合課税されますから利益を見込める場合には、この1,2年のうちに売却して利益を出してしまえば税金はかかりません。ただし、保有している外債が税制改正後も大きな利益を見込める場合は売却すればその分の利益は逃すことになります。

この部分は保有する外債が今後どの程度の利益を見込めるのかを分析する必要があるでしょう。しかし、平成27年に入れば外債の売りが急増する可能性もあります。悪くすれば値が下がり傾向があるかもしれませんから、この3年間はしっかり値動きから目が離せません。

税制改正後の外債投資はどうする?

もし、今現在で償還損や売損が確定しているような外債を保有しているのなら、少し我慢して平成28年1月1日以降に売ればその損失は他の利子所得や償還益と損益通算できます。また、現状総合課税である償還益や売買益が税率20%の申告分離課税になります。現状の総合課税で23%以上の所得税を払っている方なら、所得内容の外債運用益割合を増やすと節税になります。

外債運用で気になるのはカントリーリスクと為替リスクです。どちらも、国際政治経済に関心をもってしっかり情報を分析しなければなりません。金融各社のサイトや政治経済金融関係の複数のサイトに必ず目を通しておきましょう。知人が居る国や商売で関係がある国など、自分が情報をとりやすい国の債券を買うのがおすすめです。

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