ゴールドマン・サックスや百度(バイドゥ)が出資するP2Pモバイル決済スタートアップ、Circle が、手数料ゼロの即時国際送金サービスを開始した。
相手のメルアドや携帯電話番号宛てに、スマホからチャット感覚で米ドル・英ポンド・ユーロ建ての海外送金が完全に無料でできるという、「海外送金は手数料が高い」という常識を根本から覆す革命的なサービスだ。
Circleはイーサリアムをベースにした、オープンソース国際決済プラットフォーム「スパーク」の開発にも取り組んでいる。
手数料無料でミレニアル顧客をさらに拡大?
2013年に設立されP2Pモバイル決済アプリで一躍注目を集めたCircleは、ゴールドマン、IDGキャピタル・パートナーズ、ブレイヤー・キャピタルなどの国際投資会社を筆頭に、中国最大の検索エンジン百度などから総額1億3600万ドル (約151億3544万円)を調達した期待の新星だ。
「iMessage やWeChatといったチャットアプリを利用して、気軽に国際送金できる」という発想が若い世代に支持され、2016年の取扱決済総額は10億ドル(約1112億9000万円)を突破。顧客数は10倍に成長した。
Circleは手数料無料の海外送金を実現できた理由の一つとして、「驚異的な成長力」を挙げている。急成長中の欧州の利用者の9割が、デジタル送金を日常的に利用しているミレニアル世代である点に着目し、経済的に負担のかかりにくい送金手段を提供することで、さらなる顧客拡大を図る意図があるものと思われる。
取引のリスク評価にはAI(人工知能)技術を利用しているため、取引金額の上限も設定されていない。
イーサリアムベースの国際決済プラットフォーム「スパーク」
チャット送金に代表される「ソーシャル・ペイメント」や低コスト海外送金が珍しくなくなった近年、Circleが並み居るライバルから突出している点は、通常の通貨だけではなくビットコイン送金も扱っている多様性にある。
ビットコインの販売は2016年以降停止しているが、現在もビットコインの送金や換金は取り扱っている。
現在注目を集めているのが、開発中のオープンソース国際決済プラットフォーム「スパーク」 だ。イーサリアムの技術を基盤に開発が進められており、様々な利用法が期待できる。
一例を挙げると、既存の送金手段にビットコインやイーサなどのデジタル通貨を加えるという発想だ。「スパーク」をアプリに組みこむことで、従来は別々の領域であった通貨とデジタル通貨を、単一アプリで送金できることが可能になるだけではなく、例えばビットコイン建ての送金をポンドで受け取るといった次世代マルチ通貨送金が現実となる。
この「スパーク」の始動と共に、デジタル資産取引市場への本格的な参入を予定しているという。Circleが取り扱うデジタル資産の量は年々増加傾向にあり、2017年5月には8億ドル(約890億1600万円)を相当に達した。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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