2017年の米国経済は「トランポノミクス」による高成長が期待されたが、これまでのところは見込みが外れている。2017年前半の米経済を振り返りつつ、ポイントを整理して年後半を展望してみよう。

昨年末は「夢の高成長」が期待されていたが…

2017年1〜3月期の米GDP成長率は、前期比年率1.2%と2016年の1.6%に続き低い伸びにとどまった。成長の足かせとなったのは「自動車の販売不振」による個人消費の失速だ。米新車販売台数は5月まで5カ月連続で前年割れとなっており、2017年は8年ぶりに減少に転じる見通しで、先行きも芳しくない。

米自動車業界は現在、「リース契約切れ」と「ローン遅延率上昇」という2つの構造的な問題を抱えている。この2つの構造的問題が販売不振の理由である。

米新車販売に占めるリース比率は30%を超えており、過去5年でほぼ倍増している。だが、リース期間は通常2〜3年であり、リース販売増加の「副作用」としてリースの切れたクルマが大量に中古車市場に流れ込み、飽和状態となっている。

リース料は契約終了後の予想再販価格から逆算して決められているが、中古車価格が下落していることから、実際の再販価格が予想を下回っており、その分だけ自動車メーカーが損失を被っている。

加えて、自動車ローンの遅延率も上昇している。この影響で、金融機関の貸し渋りが顕在化しており、販売不振に拍車をかけている。ちなみに、今年1〜3月期における自動車ローンの「90日以上の遅延率」は3.8%へと上昇し、4年ぶりの高水準となった。特に、信用力の低いサブプライム層での遅延率が顕著で、金融機関はこの層への融資基準を引き締めている。

中古車価格が値崩れしている影響で担保価値が下がり、債権の回収率が低下していることも「融資の厳格化」に拍車をかけている。

こうした状況が短期間で改善するとは考えづらく、影響は長期化する恐れがある。したがって、年後半の個人消費も力強さを欠くことになるだろう。

労働生産性の低下を懸念、悪循環を招く恐れも