住宅価格は地域によって大きな差がある。都心からの距離が同じでも、東側と西側では倍ほどの違いがあることも珍しくない。

一般的に、地球の北半球では偏西風の関係で風上の西から発展して、時計回りに北に、東に発展が移っていくといわれる。日本も同じ、東京圏では城西・城南が高く、城北・城東がやや安くなる。大阪圏でも西側や北側の阪神間や京都方面が高く、東や南の奈良、和歌山方面は安い。

不動産経済研究所のデータによると、2016年度の新築マンション価格をみると、首都圏では西側の都下が4971万円、南側の神奈川県が5031万円に対して、北側の埼玉県が4259万円で、東側の千葉県が4089万円。神奈川県と千葉県の間には1000万円近い差がある。

また、近畿圏でも西側の神戸市は3497万円、兵庫県下は4307万円で、北側の京都市は4983万円、京都府下3900万円に対して、東の奈良県は3968万円で、南の和歌山県は3468万円となっている。兵庫県下と奈良県、和歌山県では1000万円以上の差がある。

沿線によって中古マンションには1000万円近い差

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(写真=PIXTA)

さらに、東京圏の例を東京カンテイの中古マンション沿線別データからみてみよう。南西側の東急東横線では、渋谷駅から15分の元住吉駅の3.3㎡単価は194万円で、19分の日吉駅が141万円。一方、北東側の伊勢崎線では浅草駅から15分の西新井駅が155万円、19分の竹ノ塚駅が100万円になっている。専有面積70㎡に換算すると、元住吉駅の価格は約4115万円に対して、西新井駅なら3288万円で手に入り、日吉駅だと2991万円なのが、竹ノ塚駅だと2121万円ですむ。

都心へのアクセスをみると、東横線は東京メトロ副都心線と乗り入れているので、直接都心の各方面に出られるし、伊勢崎線も日比谷線に乗り入れている。また、それぞれの駅周辺にはスーパーなどの買物施設や公共施設が揃い、生活利便性という面でもさほどの差はない。

ただ、違いがあるとすれば、イメージの問題だろう。東横線には各種の住みたい街ランキングでも常に上位に上がる自由が丘、田園調布、武蔵小杉などの人気エリアがあるが、伊勢崎線には最近注目度が高まっている北千住があるくらいで、その違いは大きい。

この点をどう評価するのか。中古マンション価格にして数百万円から1000万円近い差として妥当と考えるかどうかによって、エリア選びが決まってくる。そんな見栄にはこだわらずに、実質重視なら城北・城東方面でいいだろうし、やはりこだわるのであれば多少の価格アップは覚悟して城西・城南方面という選択になるだろう。

「生活利便性」の重視か、「子育てや自然環境」の重視か

いまひとつの視点として、どんな環境の場所に住みたいのかという問題がある。上記のように、イメージのいい沿線に住みたいとしても、その沿線のなかでできるだけ都心に近いエリアなのか、あるいは多少遠くてもいいのかという選択がある。

たとえば、都心からの乗車時間ができるだけ短いほうが便利であるのはいうまでもないが、そうなると価格は高くなり、手の届く範囲の物件を見つけようとすると、駅からの徒歩時間10分以上、場合によっては15分程度ガマンしなければなかなか見つけられないといったケースも出てくる。逆に徒歩時間をできるだけ短くしたいなら、今度は都心からの時間距離が多少遠くなるのを覚悟しなければならない。

もちろん、予算が潤沢にあれば都心に近い駅前や駅近物件を選ぶことができるだろうが、現実的にはそうはいかないケースが多いだろう。それだけに、自分たちにとって何が最優先事項で、どこまで譲れるのか、譲れないのか、何を譲ることができるか、できないのかなどをあらかじめ十分に整理しておく必要がある。

これはライフスタイルやライフステージなどによって、変わってくるだろう。DINKsのうちは都心近くの駅前物件がいいにしても、将来の出産や子育てを考えると、駅から遠くても教育や自然環境などが揃っているエリアのほうがいいという違いもある。いったん取得してしまうと、そう簡単に買い換えられる時代ではないので、10年後、20年後までにらんだ間違いのない選択が欠かせない。

家族で話し合ってコンセンサス確立

夫婦、家族でそれぞれの希望の条件を出し合って、そのなかから優先順位を決めていくようにする。最終的に10項目程度に絞り込んで、そのうち上位5項目は絶対に譲れない、下位の5項目は他の条件しだいで譲ってもいい――などと整理する。予算が限られ、条件を決めれば物件数も限られるのだから、すべてを満たすのは至難の技。そこは、柔軟に対応できるようにしておきたい。

判断に迷ったときには、現地に何度も足を運ぶのが無難。「現場百回」とまではいわないが、できれば、時間や曜日を変えて、また天気を変えて現地を見てみると、違った発見があるもの。

モデルルームやモデルハウスの見学は仕事の関係などから、土日や休日などになることが多いだろうが、その場合、平日との環境がかなり違っている可能性がある。休日には近くの工場は操業を中止していて、道路も比較的空いているものだが、平日に訪れるとけっこう工場やクルマの騒音が気になるといったケースも珍しくない。

特に、小さな子どもや女性がいる家庭であれば、通勤時のようす、また夜間の治安などの面もチェックしておいたほうがいいだろう。多面的に情報を入れることで、その精度は確実上がっていくものだ。

できれば近くに泊まって通勤を経験してみる

希望する物件が見つかったら、事前に泊まり込みで立地環境をチェックしてみてはどうだろうか。まず、平日の退社時間に合わせてその物件の最寄り駅まで行って、駅前のビジネスホテルにチェックインしたあと、実際に物件まで歩いて見る。周辺の賑わいや治安、交通状況などを確認できる。

現地を見て、駅前のホテルに帰るときには、道筋のスーパーや商店の品揃え、値段などもチェックできる。そして、翌日は少し早めに起きて、いったん物件まで足を運んで、そこから駅まで通勤時間帯の様子をみながら駅まで歩き、電車に乗ってみる。不動産広告の徒歩時間表示は80m=1分で計算されているが、坂道、信号の待ち時間などは考慮されていない。しかも、起点は駅の出口なので、ホームから出口までの距離が長いケースもある。実際にかかる時間は歩いてみないと分からない。

出勤時間に合わせて電車に乗ってみれば、通勤時間帯の混み具合なども実感できる。電車の所要時間についても、パンフレットなどでは待ち時間、乗り換えなどは考慮されていないので、表示されている時間よりは余分にかかるのがふつう。その現実を知っていればより間違いのない判断を下しやすくなるはずだ。

親との同居や近居も重要な選択肢のひとつに

最近は夫婦ともに一人っ子で、どちらの親の家も貰える半面、介護ニーズが発生したときにはどちらにも対応しなければならないといった人たちが増えている。

長寿命化が進行しているので、いますぐではなくてもいずれは避けて通れない問題になってくる。そうなったときに、あまり遠くに住んでいると対応が難しくなることもあるので、マイホームの取得を考え始めたときには夫婦だけではなく、親も交えてシッカリと20年後、30年後のことまで見据えて計画を進めるようにするのがいいだろう。

最近は、再び二世帯住宅が注目を集めるようになっている。ヘーベルハウスの旭化成ホームズの調査によると、同社で家を建てた人たちのうち1980年代には同居や近居の割合は25.9%だったのが、90年代には30.4%に、そして2000年代には33.7%、10年代には38.9%まで高まっている。いまや10組のうち4組近くが二世帯同居や近居を考える時代なのだ。

親子が近くにいれば、家事や子育てなどさまざまな面で協力でき、出産や子育てがしやすいし、親子が協力すれば住宅取得のための負担も軽減でき、その後の生活面での経済的なメリットも大きい。リクルート住まいカンパニーの調査によると、二世帯住宅を建てた子世帯側へのアンケートでは、4割近くが住居費や生活費を削減できたとしており、その削減額は月額7万円以上に達している。

二世帯同居には金利引下げや自治体の補助金も

社会的にみても、最近は安倍政権が掲げる、「希望出生率1.80」や「働き方改革」推進の有力な手段として、二世帯同居や近居が注目されている。

その推進のための具体的な施策として、2017年度から住宅金融支援機構と民間提携の住宅ローン「フラット35」の金利引下げ制度として「フラット35子育て支援型」が創設された。若年子育て世帯が既存住宅(中古住宅)を取得する場合、あるいは若年子育て世帯や親世帯が同居・近居のための新築住宅・既存住宅を取得する場合に適用される制度で、当初5年間の金利が0.25%引下げられる。

すでにある金利引下げ制度「フラット35S」や「フラット35リノベ」との併用が可能で、フラット35Sとの併用だと、当初5年間の金利引下げ幅が0.55%になり、フラット35Sリノベだと、0.60%の金利引下げ期間最長10年が12年に延長される

さらに、親、子、孫の三世代が同居する住宅を取得する場合、東京都北区や千葉県千葉市のように50万円、100万円の補助金を出す自治体もある。まだまだ一部の自治体に限られるものの、社会的な関心の高まりから、今後は各種の支援策を実施する自治体が増える可能性が高いので注目しておきたい。

住宅ジャーナリスト・山下和之
1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『家を買う。その前に知っておきたいこと』(日本実業出版社)、『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(学研プラス)などがある。『Business journal』、住宅展示場ハウジングステージ・最新住情報にて連載。

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