日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が7月6日にも大筋合意する見通しとなった。争点となっていた自動車やチーズ等を巡る交渉で折り合う見込みがついてきたようだ。環太平洋経済連携協定(TPP)が米国の離脱で暗礁に乗り上げる中、産業界には朗報となる。また、米国を中心に保護主義に傾きかけている国際情勢に一石を投じる可能性もある。

争点の自動車とチーズの関税で妥結のメド

EPA,貿易
(写真=PIXTA)

日欧は7月5日に岸田文雄外相とマルムストローム欧州委員(通商担当)の閣僚協議を開いた。岸田外相は記者団に大筋合意を確認できたと説明しており、翌6日の安倍晋三首相とトゥスクEU大統領の首脳協議で最終確認を行うと見られる。

日欧EPAの主な争点は自動車とチーズをめぐる問題であった。自動車ではEUが日本製の自動車にかける最高10%の関税について、日本側が撤廃を求めてきた。関税撤廃への猶予期間を巡り、日本は5年、EUは10年超を主張してきたが、中間の7年で妥結する見込みである。自動車部品にかかる関税は92%前後の品目で協定発効と同時に撤廃する。日本は輸入自動車にかける関税を既に撤廃しており、自動車メーカーは対等な条件でEUという巨大市場へアクセスできるようになる。

一方でチーズを巡っては、EU側が市場開放を求めてきたが、日本は国内酪農業者への影響が大きいとして慎重な姿勢を示してきた。カマンベールなどソフトチーズと呼ばれる分野で年間3万〜5万トンの低関税の輸入枠を設け、枠内の税率を15年かけてゼロに近付ける方向で最終調整に入ったと見られる。

チーズについては日本がTPPでも米国やオーストラリアから関税を死守した分野である。EUの求める関税撤廃に素直に応じれば、他の通商協定にも影響が出かねない為、低関税枠という方法を取る。枠を超える部分については、高関税がかけられる為、国内酪農業者への影響も抑えられる。

争点となっていた2つの問題で妥結の目処がたちつつある。これまでの交渉で自由化率は95%超となっており、TPPと同水準の自由化となる。EUの求めるTPP以上の自由化という目標もクリアする見込みだ。2013年に交渉が始まった日欧EPAは足掛け4年の歳月を経て、合意への最終局面に入った。

貿易総額の36.8%をカバーする巨大自由貿易圏誕生へ

日欧EPAのメリットはその市場規模の大きさにある。発効すれば、世界人口の8.6%、国内総生産(GDP)の28.4%、貿易総額の36.8%をカバーする巨大自由貿易圏が誕生する事となる。

また、日欧EPAには別の期待も掛かる。米国を中心に国際的に蔓延する保護主義の流れに一石を投じる事である。TPPはトランプ大統領の一声で米国の離脱が決まり、暗礁に乗り上げている。米国抜きでの発効を目指すが、明確な打開策は見つかっていない。米国は保護主義的な政策を多く打ち出しており、自由貿易主義の価値観が揺らいでいる。また、EUの内部でも保護主義は広がりを見せている。そうした中で日欧EPAという巨大自由貿易圏が誕生すれば、各国の政策に変化をもたらす可能性は高い。巨大自由貿易圏が経済活動を活性化させるという事実を示す事が重要となる。

日欧EPAが発効すれば、自動車業界を中心に国内の製造業は大きな恩恵を受けると見られる。一方で明治ホールディングス <2269> や雪印メグミルク <2270> といった乳製品に係る企業を始め、食品業界は輸入品との激しい競争にさらされる可能性もある。

6日の首脳協議で大筋合意が確認出来た場合、最終的な合意文書の作成と署名の手続きに移る。署名は今夏以降となる見込みである。その後、それぞれの議会で承認を得た後、発効する事となる。日欧EPAには自由貿易主義の復権を示す事が求めらており、その期待は高まっていく。(ZUU online編集部)

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