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サッカーとカーニバルの国、ブラジル。現在でも人口が年率2%も増えている新興国は世界を見渡してもそうは簡単には見つからないでしょう。今や人口は2億人に達する勢いですが、BRICsの中でもひときわブラジルが際立つ点としては労働年齢が非常に若いというポイントです。中国などは一人っ子政策により人口の平均年齢はとしては今後上昇してくると思われますが、ブラジルは労働年齢が20歳台という非常にパワーあふれる国なのです。 さらにブラジルを取り巻く環境としてはワールドカップやオリンピック等の国際的なイベントがたてつづけに開催され、世界的にも注目を集める国であると言えます。 さらに、 完成して約100年が経過しようとしているパナマ運河も拡張工事が2015年の完成予定で進められ、完成すれば現在の2倍の通行量が期待できる様です。 これまで南米を回っていた大きなタンカーなどが通れるようになり、流通の構図が大きく変わるとされています。 大型タンカーが日本に来る時間も軽減されて輸入品のコストが安くなるかも知れませんね。ブラジルはその影響をもっと強く受ける事になり、活発な経済活動が今後期待できると言えるでしょう。 そんな元気いっぱいの国、ブラジルの通貨・レアルについてご紹介していきたいと思います。


はじめに・・・コモディティ通貨・ブラジルレアル

コモディティ通貨とは資源国通貨の事です。さらにブラジルは資源国でありながら、農業大国であります。ブラジルは皆さんが小学校か中学校の頃習った様にサトウキビの生産量が世界No.1で現在もそれは変わっておりません。さらに肉の生産量も世界NO.1を争うほどで、鶏肉の輸出量は世界一です。私もスーパーで鶏肉の軟骨や皮を買う時によくよく考えてみればブラジル産と書いてあったのを思い出しました。そう考えると世界中の人々の胃袋を満たしてくれている国であるともいえます。その他にも有名な物が大豆、オレンジジュース、コーヒーの輸出額が多く、天然資源であれば鉄鉱石、ボーキサイト等があげられ輸出品目は非常に多岐に渡ります。資源国通貨に共通しているのは政策金利が高めに設定されている点です。とくにレアルは2014年現在、年率10.50%(2014/2月1日時点)の世界最高の金利水準が設定されています。投資家の間では非常に高い金利水準を持ったレアルは魅力的な存在となっているのです。


ブラジル経済の歴史

ブラジル経済の歴史をたどってみると古くから砂糖の存在が非常に重要だった事がわかります。古くからプランテーションにより効率よく生産されていたようです。しかし、砂糖の価値が下がってくると次に主役となったのは金でした。ブラジル国内には貴重な金脈が豊富にあり金鉱山が次々と作られゴールドラッシュという言葉を生みました。その様な出来事を辿りブラジルは農業大国、資源国という地位を築きあげてきたのです。近代になると外資の流入が非常に目立つようになってきました。安価な労働力を求めて世界中から企業が工場を作り人々が働く場所を作ったのはいいのですが、ブラジル国民の間で貧富の差が拡大してしまう結末となったのです。お金持ちが住むシティのすぐ外側にはスラム街がひしめき、海外から来た人が夜出歩くと非常に危険な体験をする可能性があります。その様な混沌とした社会情勢を抱えながらもブラジルは着実に成長してきたのです。


2500%のハイパーインフレ

日本は借金が多いので国債の暴落が起きてハイパーインフレになるなどと言った事を聞いた事があるかと思いますが、日本は世界最大の債権国である為、その様にはなりません。いわゆる膨大な貯金があるおかげで借金と相殺されハイパーインフレに見舞われないのですが、ブラジルは本当のハイパーインフレを体験した国です。1980年から95年頃にかけてオイルショックを引き金として財政収支が悪化し、お金の価値が極度に下がってしまうインフレ率が2500%にも及びました。定着はしませんでしたが瞬間的に3000%(1990年)近い数字も記録されました。過去のブラジルは現在の様な輸出国ではなく原料や原油を輸入に頼る様な政策を取り、しかもその資金を外国から借り入れていたので貿易赤字が右肩上がりに増えていってしまったのです。しかしこの様な危機を乗り越え2001年から貿易黒字国に転換し、借金も2006年には完済するという復活劇をやり遂げたのです。こういった面からもブラジルがパワーのある国であると感じられますね。


ブラジル中央銀行とレアル

現在ブラジルの通貨レアルは米国通貨であるUSドルと逆相関の値動きをしている事が分かります。これまでの金融危機で先進国がジャブジャブと量的緩和を繰り返し、そのだぶついた資金の行先はブラジルのような新興国でした。しかし、いつまでも量的緩和を続けることはインフレを招く危険があり、景気を見ながら出口戦略を練る事が必要になってきました。FRBのこの様な発現を受けてキャリートレードで買われていたレアルが売られ、2013年の8月には5年ぶりの安値を付けることとなりました。この値動きにいち早く反応したのがブラジル中央銀行です。2013年末までにおよそ600億ドルの予算で為替介入してレアルを支える事を発表したのです。流動性の低いレアルは値動きが荒く、これをけん制する為のプログラムであると市場関係者は見ているようですが、これによりレアルの下値は支えられている事になります。世界の投資家から見放されない様にブラジル政府も必死の様相である事が分かります。


おわりに・・・注目され始めたレアル

以上の様にブラジルは色々な面で注目されており、その通貨であるレアルもまた然りです。インフレ抑制の為、さらに政策金利を上げる事が予想され、今後数年間で2ケタ台の金利が設定される可能性があります。これは投資家から見ればリスクプレミアがあったとしても投資したい商品になるのではないでしょうか。労働人口も若いブラジルは長期的に見ても成長する条件が揃っており、今後間違いなく先進国の仲間入りを果たすポテンシャルを秘めていると考えられます。

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photo credit: Rafael Acorsi via photopin cc