フランスのユロ・エコロジー相が2040年までに国内でのガソリン車、ディーゼル車の販売を禁止する方針を明らかにした。地球環境への影響に配慮し、電気自動車(EV)の普及を目指す。自動車産業の戦略にも大きな影響を与えそうだ。

地球温暖化対策に向けた目玉政策

EV・電気自動車,フランス経済
(写真=PIXTA)

フランスは地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」の目標達成に向けた計画を6日に発表した。その目玉政策として打ち出されたのが、2040年までにガソリン車、ディーゼル車を販売禁止にする方針である。他にも2022年までに石炭火力発電所を停止する事等も予定している。最終的に2050年までに国全体での二酸化炭素(CO2)排出量を差し引きゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す。

トランプ大統領の一声でアメリカが離脱した事でも話題となった「パリ協定」であるが、フランスは確実に履行する意思を世界に示す事となる。アメリカへの圧力に加え、地球温暖化問題への対策で世界をリードしていく構えだ。「世界一のグリーン経済国」へ向けて大きく舵を切る。

フランスの決断は野心的な目標であり、達成までの具体的な道筋はまだ示されていない。同国内の2017年上半期の新車販売においては、95.2%をガソリン車・ディーゼル車で占めており、ハイブリット車(HV)は3.5%、EVに至っては1.2%に留まっている。今後はEV向けの購入補助金を設けつつ、ガソリン車・ディーゼル車の生産や販売に規制を掛けていくと見られる。各国の自動車メーカーの戦略にも大きな影響を与えると見られ、今後のロードマップに注目が集まる。

各国ともEV普及に向けた動きはまだ緒についたばかり

大国でガソリン車の禁止を明確に打ち出す事例は初となるが、各国で同様の動きは広がっている。オランダやノルウェーは2025年までにガソリン車やディーゼル車の販売を禁止する動きがあり、ドイツでも2030年までにガソリン車等の販売禁止を目指し、法案が審議されている。インドも同様に2030年をメドに同様の規制導入を検討する。日本ではガソリン車等の禁止には踏み込んでいないものの、2016年に発表された「EV・PHVロードマップ」では、2030年におけるEV及びプラグインハイブリット(PHV)の新車販売におけるシェアが20~30%、保有台数におけるシェアで16%を目指すという目標が示されている。

ガソリン車やディーゼル社の禁止は地球温暖化対策に大きな効果を発揮すると見られるが、代替手段となるEVの普及はまだ緒についたばかりである。国際エネルギー機関(IEA)の調査によると、2015年時点でのフランスのEV市場シェアは1.2%となっている。日本0.6%、ドイツ0.7%、アメリカ0.7%、中国0.4%と普及が進んでいるとは言い難い数字が並ぶ。

そうした中、ノルウェーに注目が集まる。ノルウェー国内における2015年時点でのEV市場シェアは23.3%となっており、他国と比べ、抜きんでた数字となっている。補助金政策や税制優遇等、EV普及に向けた施策を惜しみなく行っている成果である。今後EV推進を目指す各国にとっては重要な事例となろう。

EV普及に向けては、技術的な問題も挙げられている。重要な物が、航続可能距離の問題である。ガソリン車等と比べ、航続距離が少ない事が普及を阻む要因の一つとされており、各自動車メーカーが技術革新を急ぐ。仏ルノーは小型電気自動車「ゾエ」の航続距離を400キロメートルまで延ばしており、更なる改良も進めている。他の自動車メーカーも航続距離の改善に力を注いでおり、充電インフラの整備も各国で進められている。

また、車両価格がガソリン車と比べ、高くなっている現状についても、対策が進む。各国で充電設備も含めたEV購入の為の補助金が検討されている。また、メーカーも量産化や技術革新でのコスト引き下げを急ぐ。普及へのハードルは一歩ずつ引き下げられているのである。

2040年には世界の新車販売における54%がEVに

7月6日、調査会社のブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンス(BNEF)は2040年に世界の新車販売におけるEV比率が54%に達するとの見通しを発表した。従来予想の35%から大幅に上方修正された。市場別に見ると、欧州が約67%、米国58%、中国51%となる見込みである。また、世界での保有車両におけるEV比率も33%に達すると予想される。

新車販売におけるEV比率は2020年には3%、2025年には8%と徐々に高まっていく。その後、電池価格の下落と容量の増加が進み、2020年代にEVの販売価格がガソリン車等の内燃機関車を下回ると見られ、そこから普及速度は加速すると見られる。

自動車メーカーもEVシフトに向けた戦略を打ち出している。スウェーデンのボルボは2019年以降に発売する全ての車をEVやハイブリット車にする戦略を打ち出した。独フォルクスワーゲンも2025年までに30車種以上のEVを投入する計画である。国内でもトヨタ自動車 <7203> が2050年をメドにエンジン車をほぼゼロにする計画を打ち出す等、各メーカーで戦略の練り直しが図られている。

フランスの目標は大きな影響を与えている。今後様々な国や各自動車メーカーを中心に、EV普及に向けた動きが加速していく事になろう。巨大な市場規模を誇る自動車業界の大転換は、国や産業界の勢力図を大きく塗り替える可能性もあり、日本もその流れに乗り遅れないようにしたい。(ZUU online編集部)