九州のブロック紙・西日本新聞を発行する西日本新聞社が、豆腐中心の食品移動販売業の豆吉郎(とうきちろう、福岡市)の90%株式を取得して子会社化したと発表した。同社はグループの売上高を増やす中期経営計画を策定しており、今回の買収が新規事業進出の第一弾となる。移動販売事業の将来性が高く、地域貢献にもつながると判断した。

地方紙・ブロック紙を取り巻く環境は厳しい。全国紙の攻勢、ニュースのデジタル化、読者離れによる新聞業界全体の発行部数の低下を受けて、事業の多角化など全体的な見直しに迫られている。西日本新聞社の経営多角化は、地方紙生き残りを賭けた注目すべき動きといえそうだ。

西日本新聞社員が社長に 事業多角化に取り組む

地方新聞,メディア,経営多角化,生き残り戦略
(画像=豆吉郎Webサイトより)

豆吉郎は2005年創業、福岡・佐賀県産の一等大豆フクユタカを100%使用している豆腐専門店。福岡市内に直営店、フランチャイズ方式の移動販売拠点を九州、中国、関西の各地方で展開している。主力商品は「生きぬ豆腐」「きぬ厚揚げ」「生豆乳」など。

西日本新聞は社長として、社員の田崎行範氏を豆吉郎に派遣。田崎社長は「西日本新聞グループ傘下になり、さらなる認知度や信頼性を得ることで、事業拡大のスピードを加速させて行きたい」とコメント。西日本新聞社の担当者は、「将来性に期待している。シニア層を顧客とする共通点もあり、相乗効果が望める」(共同通信)と語っている。今後は新聞や折り込みチラシを使った広告戦略を展開するほか、新聞社から人材を派遣することも検討している。豆吉郎の昨年の売り上げは7億円だった。

新聞の発行部数は減少しており、その傾向に歯止めがかからない。日本新聞協会の調べでは、2000年10月に約5370万部あった新聞発行部数(朝夕刊セットを1部として計算)は、2016年10月時点で約4327万部となった。16年間で1000万部以上減少したことになる。

西日本新聞社は、1877年創刊。九州のブロック紙として本社のある福岡市のほか九州各県の約 60カ所に取材拠点を持ち、朝刊約65万部を発行している。新聞全体の発行部数が減少傾向にある背景を受け、早くから事業多角化を図ってきた。メディアラボ部門を中心に昨年、紙面と連動して「子ども貧困」対策に力を注ぎ、ヤフー・ニュースなどを経由して全国に伝えた。その結果、「子ども食堂」の支援に約1100万円が集まったという。また福岡銀行と提携したFinTech事業や、情報コンテンツのウェブサイト「mymo」を展開。さらに九州のブロガーなど45の情報発信者を集めて、「九州を理解できる」キュレーションサイト「piQ」を運営している。

地方紙それぞれが生き残り作戦