政府が東京23区内で大学の新増設を原則として認めないとする基本方針を閣議決定したのを受け、文部科学省が2018年度からの入学定員増を申請していた23区内の私立大に対し、見直しを文書で要請していたことが分かった。しかし、要請に応じた大学はなく、2018年度から23区内の入学定員がさらに増える。

政府の新方針がスタート直後からつまずいた格好で、全国知事会は文科省の姿勢が東京一極集中是正の流れに逆行するとして、23区内の大学定員抑制に向けて指導を強化するよう求める異例の緊急声明を発表した。

知事会の決議を受け、抑制策を政府が閣議決定

人口減少,全入時代
(写真=PIXTA)

東京23区内の大学新増設抑制は、全国知事会が2016年11月に緊急決議し、政府が6月に閣議決定した「まち・ひと・しごと創生基本方針2017」や「骨太の方針2017」に盛り込んだ。政府は今後、法規制の検討に入ることにしている。

政府の基本方針は、23区内の大学が新学部、学科を設ける際、既存の学部、学科を廃止するなどして定員を増やさないよう求める内容で、23区内の学生総数を抑えるのが狙いだ。同時に地方大学の振興にも力を入れ、地方にとどまる学生を増やすとしている。

日本全体が人口減少に転じる中、東京都を中心とした首都圏は依然として人口増加が続いている。東京一極集中を招く原因の1つが他の地域から転入する若者が後を絶たないことで、就職時と同様に大学進学時の流入が目立っている。

文科省のまとめでは、首都圏の学生数は2016年度で108.3万人に達し、全国の40.2%を占めた。このうち、東京23区内は全国の17.4%に当たる46.7万人。首都圏全体ではここ数年、ほぼ横ばいが続いているものの、23区内は2002年度に比べて5万5000人も増えている。

都心部で大学の新増設を抑制していた工場等制限法が2002年に廃止されたのに伴い、青山学院大、東洋大、大妻女子大など郊外に移転していた私立大が相次いで都心回帰しているからだ。学生獲得競争の激化から若者に人気の高い都心へキャンパスを移し、新入生を確保しようという狙いも透けて見える。

要請拒否され、23区内で12校2183人の定員増を認可