自分の家を持つことが夢だという方は覆いだろう。新築はなかなか手が出る値段ではないということで中古住宅は検討すると、意外と安い値段で豊富な物件があることに気付く。しかし、そんな中古物件には意外と落とし穴があるのだ。その一つが「瑕疵担保責任免責」だ。

広告の「瑕疵担保責任免責」って何?

中古住宅,契約トラブル
(写真=PIXTA)

相続の件で依頼に来られたことがあるAさんが、別の件で相談に来られた。Aさんから「現在の賃貸マンションを引き払って、中古住宅を購入する予定なのですが、一つ気になることがあって伺いました」と切り出された。場所もいい、間取りも適当、築15年程度だが価格が新築住宅の3割程度、Aさんはその中古住宅がとても気に入ったと言うが、「瑕疵担保責任免責」という言葉がよくわからず、その不動産会社に尋ねる前に相談に来られたのだ。

まず筆者はAさんに「瑕疵担保責任」について説明した。瑕疵担保責任とは、売買契約の際に、売主が負う責任のことである。民法第570条では、「売買契約で、売ったものに欠陥があって目的を達することができない場合には、契約を取り消すことができる。あるいは、取り消しができない場合は、買主は売主に損害賠償を請求できる」と決められている。

一方、あらかじめこの責任を持たないことを契約の当事者が合意する契約も結ぶことができる。これが「瑕疵担保責任免責」である。買主が一手に責任を負うことになるが、その代わり価格面でのメリットがある。

「瑕疵担保免責」の問題点は?

Aさんは、「それでは、もし欠陥住宅だったら自分で修理をすることになるのですか?」と尋ねられた。「それはちょっと怖いですね。自分たち素人では、買う前に、どこに欠陥があるのか分かりませんから……」と続けて言われた。

まさに「瑕疵担保責任免責」の物件は、その点がポイントである。「瑕疵担保責任」がある物件を契約する場合、契約書に「引き渡しから2年以上」の保証期間を記載するようになっている。つまり、最低でも住宅を購入して2年間は売主の責任で修理をしてもらえるのである。この点では、「瑕疵担保責任」付きの物件は安心である。ただし、価格は高いことが
考えられる。

一方、「瑕疵担保責任免責」の住宅は、通常よりも価格を引き下げて提供されている。その点では、購入者にとってメリットがある。仮に購入後の修理費よりも、引き下げられた金額のほうが大きければ、その物件は「買い」ということになる。

建物診断・ホームインスペクションの利用

先程も述べたように、中古住宅に大きな欠陥がなく、仮にあったとしても「この程度の欠陥なら、自分で修理しても価格的に十分メリットがある」という物件だった場合、契約してもいいと思う。

しかし、不動産の素人が購入前の中古住宅を見て、どれくらいの欠陥があるのか、欠陥があった場合の修理にいくらかかるのか、判断することは難しい。そこで筆者はAさんに「建物診断」を紹介した。

「建物診断」は、別名「ホームインスペクション」というもので、例えば、医者が人の健康診断をするみたいに、住宅の専門家が物件の「不具合」を調査してくれるものだ。欠陥の有無や修理が必要な部分を報告したり、あるいは補修工事にどれくらい(金額、期間)かかるのかを見積もったりしてくれる。

現在、多くの会社が「建物診断」を行っている。費用は、出張費等を含めて一般的に50万円前後である。もちろん50万円という金額は決して安くないが、「建物診断」をせず購入したために、物件の引き渡し後に高額の補修工事がかかる場合のことを考えれば、決して高額とは言えない。

また、「建物診断」を行っている業者の中に、診断料にオプションとして「既存住宅瑕疵保険」を付けている所もある。この保険は、構造的な不具合、雨漏り、給排水管などの欠陥が生じた時、最大5年間で1000万円の補修工事の費用を保険で補てんするものだ。

さらに、築20年以上の中古住宅でも、住宅購入の際にかかる税金、「登録免許税」、「不動産取得税」、「住宅ローン減税」、「贈与税非課税措置等」、「長期譲渡所得課税」 を受けることができるようになっています。

さらに、保険加入の際の発行される「保険付保証明書」を提示することで、様々な減税が適用される。例えば、「贈与税の非課税措置」、「所有権移転登記の登録免許税の軽減措置」、「不動産取得税の減額措置」、「住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除」、「長期譲渡所得の課税の特例」などである。

Aさんには、中古であっても一生の買い物になるので慎重に検討するよう、アドバイスした。(井上通夫、行政書士)