生命保険には大きく3つのタイプがある。死亡や障害、入院などによる収入の減少に備える商品、将来必要と考えられるお金のために積み立てておく商品、そしてその2つを混合した商品の3つだ。

ここでは積立期間と受取期間を合計するとかなり長期に渡る個人年金保険に焦点をあてて、この商品の見落としがちな欠点について具体的な数字を用いて説明しよう。

個人年金保険の特長

個人型年金保険
(写真=PIXTA)

将来必要と考えられるお金のために積み立てる商品で代表的なものに、こども保険(学資保険)と個人年金保険がある。

個人年金保険は月々など一定期間に一定額ずつ積立を行い、将来その貯まったお金を年金として複数年に渡って受け取るというものだ。つまり、積立始めから受給し終わる期間がかなり長期に渡るという特長がある。契約時に将来受け取る年金額が確定している「確定給付型」の商品が主流だ。

一般的には、30代または40代に加入し、60歳もしくは65歳から年金として受給し始め、5年間か10年間、または終身で受け取る契約となっていることが多い。

一定の条件を満たした契約であれば、所得控除である生命保険料控除のなかの、「個人年金保険料控除」を受けることができ、条件を満たしていない場合でも「一般の生命保険料控除」の対象となるため、所得税・住民税の節税効果がある。(ともに控除額の上限あり)

長期間に渡るための見落としがちな欠点

個人年金保険の致命的な欠点は、「インフレリスク」、つまり物価上昇率に追いつかない可能性がある点だ。特に今後その可能性が高いといえる。インフレとは、物価が上昇することだ。例えば、預金で1年間1%の利息を得られたとしても、もし物価が2%上昇していた場合、昨年購入できた商品が、利息を足しても今年は買えないことになる。

政府はインフレ率の目標を2%としている。それは、今年100円だった商品が来年102円になるということで、もし同率のインフレが30年間続いたら、30年後には181円、2倍近くの価格になってしまう。これは、その商品自体の価値が上がったわけではなく、お金の価値が大きく下がったということなのだ。

超低金利時代である昨今、預貯金に預けていてもほとんど利息は付かないため、預貯金と比較すると個人年金保険の返戻率は高く感じる。しかしこのインフレリスクについて、長期での運用となる個人年金保険では確実に理解しておくべき大きなリスクなのだ。

30年後に受け取る年金は? モデルケースで考える

30年後に受け取る年金は、インフレによって価値が半分になる可能性はどうだろうか。以下のケースで考えてみよう。

・35歳~60歳の25年間保険料払込
・60歳~65歳の5年間年金受給
・保険料払込総額500万円
・返戻率105% 受取年金総額525万円

加入当初から毎年前年比1%で物価が上昇した場合、30年後の物価上昇が、初年度からみると134.8%となる。つまり500万円で購入できた商品が674万円になる計算だ。また、年金受取総額の525万円の実質価値は388万円となる。

もし政府目標である2%の上昇率なら、30年後は181.1%、500万円だった商品は905万円となり、525万円の実質価値は約半分の275万円となってしまう。

ただし、個人年金保険はデフレには強い

もちろん個人年金保険のメリットもある。主に3つあるが、一つ目は、途中解約すると解約返戻金が総払込保険料を割り込むため、解約せずに積み立てを続けようという意思が働くので、確実な貯蓄につながる点だ。二つ目は、受け取る年金額が確定しているため、連続したデフレ(物価の下降局面)では大きな利益を得られるという点。三つ目は、支払保険料は所得控除を受けることができ、特に所得税率が高い人なら所得税・住民税の大きな節税効果を受けることができる点だ。

金融商品は一長一短 分散投資を考える

個人年金保険は、確実な積み立てが長期にわたってできる商品である。また、将来受け取る年金額も決まっているため安心感が強く、景気が一定である状況であれば全く問題ない商品だ。しかし、今後この景気低迷状況が長期間続くとは考えにくく、また政府としても物価上昇のための政策を打っている今、個人年金保険ではインフレリスクが大きいという欠点があるということを理解しておくことが必要である。

将来のことはわからない。であれば、インフレとなっても、デフレとなっても、大きく実質的な損失を出さない備えがより重要となる。個人年金保険の欠点を補う商品、つまりインフレに対応できる変動金利型の商品との「分散投資」を考えたい。

具体的には節税メリットを受けることができる、確定拠出年金(DC)、少額投資非課税制度(NISA)がお勧めだ。そのほか、国民年金保険料の未納期間や免除期間がある人なら、後納や追納も考えるべきだろう。

どのような金融商品も、すべての局面で欠点のない万能な商品などない。商品の特長を理解し、欠点を把握してそれに備えておくことが何より重要といえる。

小野みゆき 中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP・1級DCプランナー・年金マスター
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社勤務を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆、家計・年金・労務相談などを中心に活躍中。 FP Cafe 登録パートナー

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