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今回は、2013年の相場関係者の注目だったQE3の出口戦略とドルの動向についてお話をしていきます。

世界でもっとも主要な通貨とは何でしょうか?そう。ドルですね。ドルを使った取引は、世界の全取引の9割にも及びます。新興国通貨やら、日本円やら、ユーロやら、いろんな通貨が世界にはあります。そして、その個別の事情で動くということももちろん見逃せませんが、対ドルとして動くことが多い以上、ドルの事情で為替が大きく左右されるということになります。毎日、新聞を見ていた皆様なら、お気づきでしょう。「米金融緩和の継続・・・。」といった文言が、マーケット欄のあちこちで散見されていたことを。 では、米金融緩和、すなわちQE3について以下で簡単に見ていくこととしましょう。


QEってなあに?

QEとは「quantitative easing」の略で、量的金融緩和のことです。この量的金融緩和、もう3回目。ということで、今行われている金融緩和のことをQE3といいます。簡単に説明すると、「市場のお金を増やしましょう」という金融政策です。伝統的には、中央銀行が市場に介入するときは金利の上げ下げで対応していました。景気が悪いときは、金利を下げて、企業の貸し出し需要を増やす。景気に過熱感が出てきたときは、金利を上げて、市場に回るお金を減らす。

でも、今って金利は0近辺を張り付いている有様。金利を下げようにも下げられません。 そこで導入されたのが、この量的金融緩和なのです。どうやってお金を増やすのでしょうか。 中央銀行が国債や証券を買い入れることで、市場にお金を供給することができるのです。ちなみに日本でもやっていますね。黒田日銀総裁による金融緩和。 事情は一緒です。


何を言うのか、次期総裁

FRBの次期総裁が決まりましたね。ジャネット・イエレン氏。 ハト派と目される彼女、どうやら、金融緩和には積極的と受け止められているようです。

「緩和縮小で特定の時期は決めていない。」

この発言で、再び新興国通貨は上がることになりました。 日本でいうと、円安・株高の流れに。

このように、つい先日発表があるまで米国のQE3がいつ終了するのか、その観測でドルが買われたり、売られたり、市場は神経質になっていました。 ところで、なぜ、終了する時点が問題となるのでしょうか? 今は、中央銀行が、お金をじゃぶじゃぶと市場に流してこんでいる状態ですね。つまりお金が余っています。これを引き上げようとすると何が起きるのでしょうか?

じゃぶじゃぶのお金が減るわけですから、景気の下押し要因になります。折角、回復途上にある米景気がまた逆戻りしかねません。 また、市中に出回るお金の量が減ると、金利の上昇要因にもなりますね。


雇用統計の話

このQE3、縮小するためには、景気が十分に回復しているということが必須条件となっていました。 つまり、アメリカ経済の回復指標となる各種指標をチェックする必要があります。特に「雇用統計」が大切です。実際にFRBはQE3の縮小は雇用統計等の経済指標次第であると明言しています。各指標発表の前後は為替市場を注視する必要があります。


他国との関係 揺れる市場

日米金利差によって、為替は変わってきます。金利が高い国の通貨で運用を行いたいと思いますよね。 つまり、日米金利差が拡大すると、ドルが買われ、ドル高円安に。縮小すると、ドル安円高に振れやすくなります。QE3の縮小は、日米金利差拡大要因なので、円が売られドルが買われることになります。 では、QE3の継続がされたとした場合はどうでしょうか?

本来ならば、円高ドル安要因ですね。けれども、実際は、円安方向に向かっています。日本も量的緩和を行っていること、また、金利だけではなく、米経済の回復等が、本来のドル円の動きを金利だけでは占うことができないものとしています。 ただ、やはり日米金利差が本来の円高要因であるために、大きく円安に振れるということはない模様です。

では、新興国通貨はどうでしょうか。 新興国通貨はリスクマネーですね。日本円の動きを見るよりもやや簡単です。マーケットの厚みもそれほど無いので、動くときは一気に一方向に動きます。 アメリカでドルが余る状況において、 ドルは、運用先として新興国通貨に流れていっています。よって、QE3の縮小観測のたびごとに新興国からドルへお金が戻ってこようとしています。 QE3の縮小は新興国通貨からみると、通貨安要因になります。


おわりに

為替相場を理解するうえで、もちろんその国ごとの固有の事情はあります。日本でいうと今アベノミクスが海外からどう受け止められているかが、為替相場を動かす誘因となっています。しかし、為替相場が2つの通貨の相関関係である以上、その相手国の事情を理解することなしには、為替は理解しがたいのです。QE3縮小が決定した現在、今まで以上に各国通貨の流れが見えてくるのではないでしょうか。

photo credit: VinothChandar via photopin cc