人生のエンディングを考えることを通じて自分を見つめ、自分らしく生きる「終活」が注目されるようになった。読者の方は、終活と聞いてどのような手法を思い浮かべるだろうか? たとえば遺言書の作成や生前贈与を思い浮かべる方が多いのではないだろうか。

確かにこれらは現在でも主要な手法であることは間違いないが、最近では、自分の財産の運用は自分の手で決めるという本来の目的を達成するために、あらたな手法「民事信託」が注目されていることはご存知だろうか? 民事信託の登場で変わってきた相続の方法について紹介していこう。

相続発生で起こる3つの事態

民事信託
(写真=PIXTA)

ここで相続についておさらいしておこう。
仮に遺言書の作成など何も対策していない場合には、死亡時の被相続人の相続財産を法定相続分という民法に定められた割合で相続人となるものが取得する。たとえば、父親が亡くなった場合、土地建物(各1000万円とする)がある場合、母一人子一人であれば母と子が土地建物は土地・建物それぞれを2分の1の持分で共有する形になるのである。

この場合、以下のような事態が想定される

  1. 相続発生後、遺産分割の手続きで土地建物を母親、もしくは息子単独の名義にすることは可能だが、遺産分割をするという場合には別途手間が必要である。
  2. 遺言書で相続人の誰かを土地建物の相続人として指定したとしても遺留分の問題が出てくるケースもありうる。
  3. 相続人が親と子の二人だけの場合にとどまらず、子供が複数いてそのうちの一人が行方不明であったり、認知症で意思能力を有していなかったりという場合には手続きはより複雑になり、費用や時間がかかることになる。

こういった状況に対処するのに有効だということで注目されてきたのが、2007年に新たに施行された信託法によって可能となった「民事信託」なのである。

民事信託、投資信託とは違うの?