企業にとって店舗・オフィスやネットワークなど設備投資は重要な経営の意思決定で、競争力を高めるために必要なことの一つでしょう。そこで中小企業における設備投資の動向、考えるうえでのポイントなどを解説します。
中小企業の設備投資の動向
商工中金による「中小企業設備投資動向調査」2017年調査によると、2016年度の設備投資実績見込がある企業は51.4%と、3年続けて同水準でした。
設備投資の目的は、「設備の代替」、「維持・補修」、「増産・販売力増強(国内向け)」「合理化・省力化」がいずれも実績見込20%を超えており、上位を占めています。
設備投資をしない理由は、「現状設備が適正水準」が63.1%、「景気の先行き不透明」が22.1%とこちらも例年と同水準です。「借入負担が大きい」は9.4%であり、3年連続で減少しています。
設備投資をしていない企業は、半数以上が必要性を感じていないそうですが、その反面3割以上が経済環境の不安や資金不足などからできていないという状況です。
設備投資の前に考えておくべきことは
設備投資の効果は長期にわたって続き、場合によっては多額の借入が必要となることもあります。減価償却や金利、維持・修繕費などのコスト、設備投資によって見込まれる売り上げ増加額や経費の削減額、税金などを勘案し、長期的な視点で計画していかなければなりません。
長期の計画には専門知識が伴った見通しがあったほうがよいです。必要に応じて会計事務所や経営コンサルタントなどの力を借りることも検討しましょう。
多額の資金が動く企業の設備投資は、経済全体にとっても大きな経済効果があるため、行政に優遇されることがあります。事前によく確認しましょう。
例えば、法人税は「中小企業等経営強化法に基づく税制措置」として、新規の設備や機器を購入・取得した企業は、固定資産税の軽減や、法人税の税額控除といった税制措置を受けることも可能です。事前に顧問税理士等に確認する必要はありますが、調べてみても良いでしょう。
また、自治体が地域での取引増加や誘致のために補助金を出していることもあります。例えば横浜市には「中小製造業設備投資等助成」制度があります。中小製造業が行う新商品の開発、経営の改善などを目的として行う設備投資、工場の新築、工場の増築に対して最高1,000万円の助成金を出す制度です。
設備投資で競争力を高めるためには
企業が持つ設備は生産性に影響します。古い設備を改修すれば、業務の効率がよくなったり、電気代などの経費や材料費などが削減できたりして、価格競争力を高められるかもしれません。
特にIT機器に関しては技術革新が早く、陳腐化までのサイクルも短いようです。競合相手が最新のシステムを利用して付加価値の高い商品・サービスを生み出していく中、何世代も前の設備しか使っていないようでは、生き残っていくのは難しいかもしれません。
設備投資をしない理由に現状で十分という認識が多いことと、目的に上位に維持・補修・代替が多いことを考えると、日本の中小企業は現状維持のために設備投資をするという発想がうかがえます。
必要最低限の設備を維持することはもちろんですが、価格を安く、付加価値の高い商品を生み出すために新たな設備を導入するという前向きな考え方も大切なポイントの一つでしょう。
長期的な計画をもとに検討を
中小企業の設備投資に関する動向として、過去3年で特に目立った変動はみられません。設備投資の検討は会計や優遇制度に関する知識が必要となるため、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。しっかりとした長期的なビジョンと現実的な計画があれば、現状維持にとどまらない前向きな設備投資、攻めの経営によって競争力を高めることができます。(提供:ビジネスサポーターズオンライン)
※当記事は2017年6月現在の情報に基づき制作しております。最新の情報は各関連ホームページなどをご参照下さい。