通常、人が商品を買うのに「この商品はどのようにしてつくられたのか?」とか「この商品の価値はどこにあるのか?」といったことを意識することはあまりないだろう。そこにはたいてい、「欲しいか欲しくないか?」といった感情があるに過ぎない。

一般的な購買活動においては、それで何の問題もない。だが、投資を行う場合にも同じような考え方でいると、大きな失敗を招きかねない。

投資は失敗してもすぐにはわからない

海外投資
(写真=PIXTA)

普通の商品であれば、謳っている効能が本当なのかどうかは、使用すればすぐにわかる。しかし、投資の場合はそれが正しいのか、正しくないのかは、すぐにはわからない。

詐欺商品の中にはカモフラージュをするために、最初のうちは配当金をいくらか出すものもある。そうして顧客を安心させ、より多くのお金を引き出すのである。だから利用者はだいたい、破綻するまで詐欺だとは気づかない。

国内の投資商品ですら、このようにダマされるのだから、海外の投資商品となれば、なおさら注意が必要なことは言うまでもない。

「新興国投資は儲かる」とは限らない

もし、海外投資をするのであれば、重要なのはその国の「マーケット事情」と「地域相場」をつかむことである。しかし国内に居ながらにして、こうした海外情報をつかむのは容易なことではない。

海外投資の場合、あくまでも「自国とは違う」ということをしっかり念頭に置いて投資を行っていくことが重要である。その国の文化や法令などを理解しないままに投資をしてしまうことが、海外投資で失敗するお決まりのパターンなのだ。

もともと日本人は、これまで異質の文化に触れる機会が限られていた。そのせいか、海外に対してミステリアスな感情を抱きやすい。だから余計に「海外だったら日本と違ってお金を増やせるのではないか?」「新興国でなら大きなリターンが得られるのではないか?」という幻想を抱きやすくなる。そこを詐欺師につけ入られ、ダマされるといった事例が後を絶たない。

まずは「どこであろうと、お金は理由もなく増えない」ということを、よく肝に命じておいていただきたいと思う。

投資商品の利回りを決める4要素とは

現在、日本で売られている金融商品は、ほとんどゼロに近い利率しか付かない一方で、海外では年率4%、5%という金融商品が普通に売られている。日本人からしてみれば、不思議に思うのもムリはない。

元来、投資商品の利回りを決める要素というのは、ある程度決まっている。それが何かと言うと、「国債利回り」「運用対象」「税制」「コスト」。投資先の優位性を決める要因とは、主にこの4つに絞られる。

一体、投資商品と国債利回りに何の関係があるのだろうと不思議に思われた方もいるかもしれない。投資には事業投資、不動産投資、現物投資などいろいろあるが、堅実な運用を求めるのであれば、結局は信用力の大きな機関を通じての投資となることが多い。そういう機関の主な運用先が国債なのである。

現在、日本の国債の金利はゼロ%前後で推移している。しかしこれがたとえばフィリピンの10年物国債利回りになると約5%前後、アメリカやシンガポールの国債で2%ほどである。

投資に「ローリスク・ハイリターン」はない

続いて「投資商品の利回りを決めるポイント」2つ目の、税制について見てみよう。これも、国によってかなり異なる。日本の場合、例えば株式投資による売却益・配当金にはそれぞれ、譲渡所得・配当所得として20.315%もの税金がかかるが、香港やシンガポールであれば非課税扱いとなる。この違いはかなり大きい。

3つ目の運用対象とは商品のこと。要は「何に投資をしているのか?」ということである。一般に、リスクが高いものに投資をする場合はリターンも高くなり、ローリスクハイリターンのものは存在しない。4つ目の投資商品のコスト構造について、日本で販売されているものは割高の場合がほとんどである。

この4つの組み合わせが他国との利回りの差となって表れている。海外投資といっても、フタを開けてみれば決してミステリアスなものでも何でもないことがお分かりいただけたのではないだろうか。

「良いナビゲーターと組む」ことが海外投資成功の鍵

それでは、ただでさえ不慣れな海外投資を成功させるコツが何なのかと言えば、それは「良いナビゲーターと組む」ことに尽きる。つまり現地の事情に精通し、かつ信頼のおける投資先を持っている人を見つけることである。

良いナビゲーターを見抜くコツとは、
(1)現地の生情報からどれくらい近い距離にいるのか?
(2)こちらの質問にきちんと正面から答えられるか?
(3)投資を行うメリットとデメリットを両方言えるか?
といった点に注目することである。

現実問題として、自分自身が世界中の国や投資商品を理解することは不可能に近い。だから代わりに自らのマネーリテラシーを上げることによって、良いナビゲーターを選べる目を持てるようになることが大切なのである。

俣野成敏 (またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。