購入型から融資型までクラウドファンディング事業者は様々あります。しかし、果たしてクラウドファンディングは高収益をあげられる将来性のある事業なのでしょうか。

本記事では購入型、寄附型、融資型(ソーシャルレンディング)、事業投資型という4種類のクラウドファンディングがそれぞれどのようなビジネスモデルになっているか説明します。

収益は資金調達者から得るのが基本

現状、クラウドファンディングのタイプを問わず、ファンドへの投資家から手数料を徴収することを表明している運営会社はほとんどありません。
ほぼ全てのクラウドファンディング事業者が、資金を集める側(資金調達者)から何らかの形で手数料を取り、クラウドファンディング事業者は利益を得ています。

もちろんそのクラウドファンディング事業者への手数料は、結果的には投資家への金銭的リターンをいくらか目減りさせることになるので、融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)などにおいては、間接的に出資者から手数料を得ているともいえます。

この事業者手数料が少なければ少ないほど、投資家にとっても、資金調達者ともに良いと思えるかもしれません。
しかしながら、クラウドファンディング事業者が手数料をしっかりと得て、収益をあげることにより、事業者として持続可能な体制を整えているかを見極めることも、投資家の資質の一つとして求められるべきでしょう。

特に融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)では、運営会社が破綻してしまったら、元本や預託金が返ってこない可能性があるなど、リスクを出資者がかぶりやすい仕組みになっています。

クラウドファンディング運営会社のビジネスモデルをしっかりと見極め、利益構造を把握することは投資家として必要かつ有用なリスク管理手段なのです。

購入型クラウドファンディングのビジネスモデル

(画像=クラウドポート)
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購入型クラウドファンディングとは

購入型クラウドファンディングとは出資者へのリターンが「モノ・サービス」などの、「お金以外」であるクラウドファンディングを指します。

例として、製品・サービスの開発、アーティストの支援を行うプロジェクトを金銭により支援し、そのプロジェクトの結果として、支援者はモノやサービスなどのリターン受け取ることができます。

通常、リターンはプロジェクトの成果である製品やサービス、チケット(参加券)を受け取ることができます。また、支援額の数段階に金額が分けられていることが多く、支援額が小さい場合、リターンは記念品などの粗品が設定されている場合もあります。

反対に支援額が大きければ、支援者の心をくすぐる特典がついた、より魅力的な商品、サービスが提供されやすい傾向があります。

また、購入型クラウドファンディングでの支援対象は、今行われているプロジェクトではなく、これから資金が集まり次第始めるプロジェクトが多いため、リターンを得られるまでの期間が長い傾向にあります。

さらに、購入型クラウドファンディングでの支援は、「大半が先行購入であること」、「リターンの受取が確約されているものではないこと」には、留意が必要です。
あくまでも「支援」という形や「製品が出来上がったらどうしても欲しい」という目的のユーザーに好まれやすいものです。

購入型クラウドファンディングのビジネスモデル

支援者から集めた「総支援額から一定割合を徴収することで得られる手数料」と「決済を行う際の手数料」を徴収するのが、購入型クラウドファンディングの基本的なビジネスモデルです。

手数料の割合は運営会社により差があるものの、だいたい合計8~25%に設定されています。
また、同じサービスならばプロジェクトの内容を問わず一律であることが特徴です(例:国内の購入型クラウドファンディングに位置するCAPMFIREの場合、8%、決済手数料は除く)。

現在、これら以外の収益があることを表明している購入型クラウドファンディングサービスは国内にはありません ※1

「All or Nothing方式」とは

購入型クラウドファンディングにおける集金方法として、最もよくみられる方法が「All or Nothing方式」というものです。

この集金方法では、プロジェクトで定めた目標支援額が集まらなかった場合、プロジェクトは中止となります。
この場合、資金募集者は支援金を受け取ることができず、全ての資金が支援者に返金されます。

「All in方式」とは

一方、「プロジェクト実行確約型」とも言われる「All in方式」では、どんな少額でも最低出資額以上のお金が集まれば資金募集者は支援金を受け取ることができます。ただし、一定以上の額が集まらない場合、更に大きな手数料が発生する場合があります。

例えば購入型クラウドファンディングサービスのA-portでは「All in方式」において、当初に設定した目標額に達しなかった場合、20%の手数料が25%に引き上げられます。

寄付型クラウドファンディング

(画像=クラウドポート)
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寄付型クラウドファンディングとは

寄付型クラウドファンディングとは出資者へのリターンが基本的に無いクラウドファンディングサービスを指します。

寄付型クラウドファンディングでは、災害支援などの慈善事業的なプロジェクトがよく見られます。このように、金銭的、または物質的な事業の成果が無い資金需要者が多い点が寄付型クラウドファンディングの特徴です。

金銭的、物質的な事業の成果が無いことが多いものの、実際には何かリターンを設けているプロジェクトが大半です。資金支援者へのリターンとして多く見られるものは、資金需要者からの手紙などです。

寄付型クラウドファンディングのビジネスモデル

寄付型クラウドファンディング事業者のビジネスモデルは、購入型と同じく、総支援額から一定割合を運営手数料、決済手数料などとして徴収することで収益を得ます。

具体的な手数料としては、約15%が基準値といえるでしょう。

日本における寄付型クラウドファンディングサービスの最大手であるジャパンギビングは徴収する手数料を公表していません(15%ほどといわれている)。
また、購入型クラウドファンディング、READY FOR?の寄付部門である「READYFOR Charity」は17%を徴収しています。

ソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)

(画像=クラウドポート)
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ソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)とは

ソーシャルレンディングは、投資型クラウドファンディングの一種です。そして、投資型クラウドファンディングとは、出資者(投資家)へのリターンがお金であることが購入型クラウドファンディング及び寄付型クラウドファンディングとの大きな違いです。

投資型クラウドファンディングの中でも、「融資(貸付)」をその投資スキームに組み込んでいるものをソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)と呼びます。
ソーシャルレンディング(投資型クラウドファンディング)は貸金業法を活用しており、担保設定などにより投資家の元本保証性が高いことが特徴です。

投資家の資金は、運営会社により、企業・個人に貸し付けられ、その返済の際に支払われる利息が、リターンの源泉となります。

投資家に対するリターンとしてお金を返すソーシャルレンディングの場合、事業者は第二種金融商品取引業の登録が必要です。また融資を広く行う場合は「貸金業」の登録も必要となります。

融資型(ソーシャルレンディング)のビジネスモデル

融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)の収益源は大きく分けて4つあります。

  • 融資実行手数料
  • 融資の際の利ざや
  • フランチャイズのロイヤルティ
  • 分配後の余剰金

です。

このうち一般的なものは1と2です。順番に説明いたします。

1.融資実行手数料・契約締結手数料

サービスの多くは融資先から「融資実行手数料」を徴収することを投資家への契約書類の中で明記しています。
融資型、寄付型における運営・決済手数料と同様のものと考えてよいでしょう。

ソーシャルレンディング事業者によって手数料は異なるものの1~3%が相場とのことです。

2.融資における利益

ソーシャルレンディングの運営会社が融資を行う場合、融資先企業に対する貸出金利は投資家に対する利回りよりも大きくなります。

例えば、投資家への期待利回りが5%である場合、融資先への貸し出し金利は8%などとなり、5%以下になることは基本的にはありません。この場合、融資額に対して差し引き3%の利ざやが運営会社の利益になります。

ソーシャルレンディング事業者の利益は大体のサービスにおいて1.5~5%にボリュームゾーンが設定されています。
また、その利益はサービス全体で統一されているわけではなく、案件により同じサービスでも異なるのが普通です。

なお、この利益は、サービスによって様々な表現で呼ばれています(手数料、営業者報酬、営業者報酬率など)。

現在のところ、運営会社は投資家からの手数料(口座開設・維持手数料、ファンド購入時手数料、運営管理費用、信託財産保留額など)を一切とらないことを表明している運営会社が多いです。

実際には融資実行手数料と運営会社の利益が投資家から、間接的に徴収されているといってよいでしょう。

3.フランチャイズのロイヤルティ

現状、maneoの運営会社、maneoマーケットだけが得ている収益です。
同社はソーシャルレンディング運営に必要な第二種金融商品取引業の登録を活用し、maneo以外の運営会社の資金と投資家の募集を行っています。またソーシャルレンディング運営に必要なノウハウの提供を行っています。

このサービスをうける運営会社はmaneoファミリーと呼ばれ、現在maneo以外に9サービスあります(LCレンディング、ガイアファンディング、クラウドリース、スマートレンド、アメリカンファンディング、グリーンインフラレンディング、さくらソーシャルレンディング、キャッシュフローファイナンス、アップルバンク)。

これはmaneoからのフランチャイズのようなものであると投資家には説明され、そのサービス対価が支払われていることはセミナー等の場でも明言されています(具体的な額、名目は不明)。

4.分配後の余剰金

海外のファンドが多い運営会社、クラウドクレジットの1案件「ペルー小口債務者支援プロジェクト」のみで確認できる運営会社の収益源です。

この案件では先に説明した融資における利益、融資実行手数料などは一切とらないことが明言されています(間接的に管理、回収手数料は取られるが、これは現地提携会社に支払われるためクラウドクレジットの収益にはならない)。

クラウドクレジットは投資家に約束したリターンを支払い、その残額が生じた場合これを収益とする仕組みとなっています。先に説明した利益とは異なり、必ずしも得られる収益ではありません。。

事業投資型クラウドファンディング

(画像=クラウドポート)
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事業投資型クラウドファンディングとは

投資型クラウドファンディングでは、ソーシャルレンディング(融資型)が圧倒的多数の事業者数を誇っていますがが、事業投資型(ファンド型)といわれるクラウドファンディングサービスもあります。
事業投資型(ファンド型)クラウドファンディングでは、その投資スキームに融資を組み込まず、純粋に事業に投資して得られた収益からのみ、投資家にリターンが分配されます。

ソーシャルレンディングでは、投資家へのリターンは利息から支払われますが、この利息は事業収益から必ずしも支払う必要はありません。この点が融資型と事業投資型との違いとなります。

事業投資型クラウドファンディングのビジネスモデルは

事業投投資型クラウドファンディングを運営しているのは現状セキュリテとスマートエクイティだけですが、いずれも募集額に対して一定の割合を手数料としています。

・セキュリテは「取扱手数料」

セキュリテの場合、出資金の6~8%の取扱手数料を投資家がまとめて支払う形をとっています。
例えば最低出資額が1万円のファンドの場合、そこに800円(8%)の取扱手数料が加わり、1口1万800円でファンドが販売されます。
1口あたりの額はプロジェクトにより大きく異なります。

・スマートエクイティは「募集取扱(媒介)手数料」

スマートエクイティの場合、募集額の2~3%を募集取扱(媒介)手数料として、募集期間の最終日に事業者が運営会社(AIP証券)に支払うという仕組みをとっています(一部例外あり)。

セキュリテは直接投資家から、スマートエクイティは間接的に投資家から営業者報酬を得ているといえます。

クラウドファンディングの収益源別比較

各クラウドファンディングの運営会社の収益源をタイプごとに表1にまとめました。

(画像=クラウドポート)
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運営会社の収益源



融資型が(ソーシャルレンディング)がもっとも収益源が豊富なように感じられますが、実質的に大半の運営会社が得られるのは1の手数料と2.融資実行手数料だけであることにはご注意ください。

これらの利益・手数料を運営会社がどのくらいの期間で得られるのかもイメージ図としてみました。

(画像=クラウドポート)
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100万円の募集において手数料・利ざやを運営会社が収益とできる期間のイメージ図

各種手数料は業界の相場から、購入型が20%、寄附型が15%、融資型が2%、事業投資型が5%としました。 融資型クラウドファンディングの利益は3%としています。 購入型、寄附型、事業投資型クラウドファンディングでは、ファンドの募集期間は様々ですが、最も多いと考えられる2ヶ月を採用しています。 融資型の募集期間はどんな長くとも1月足らずですので、1ヶ月としています。

購入型、寄附型クラウドファンディングは手数料が高く、また募集期間の終了時に手数料を得られる仕組みとなっているため、回収スピード、額ともに投資型に、募集額が同じ場合収益性は優れているといえます。

購入型を例にとれば100万円の募集を行えば2ヶ月目にはその20%にあたる20万円が得られます。

それに対して投資型である融資型、事業投資型は収益性が劣るように思えます。特に融資型は収益の回収が遅いイメージになっています。1月目に融資手数料と利ざやで2万2千500円が得られますが、その後収益はゆっくり入ってくることに加え、その総額は購入型、寄附型に遠く及びません。
事業投資型は手数料の割合が購入型、寄附型に比べて小さいですが、融資型よりは収益構造が優れています。

ビジネスモデルとしては融資型クラウドファンディングが魅力?

しかし融資型のビジネスモデル、収益構造は購入型、寄付型、事業投資型に比べて、決して現状劣っていません。

融資型の募集額は20社以上ある運営会社で月あたり合計100億円(2017年3月の実績)を集めています。

薄利多売とはいえど、これだけ集めていれば融資型は実に有望なビジネスモデルを形成しつつあるといえます。運用(融資)中の金額が大きくなればなるほど、安定した収益が毎月入ってくるビジネスなのです。

一方、購入型、寄附型、事業投資型の募集額は融資型クラウドファンディングほどの金額は集めていないと考えられます。
これから募集額を更に伸ばしていけるかが、確固たる基盤を築けるかの分かれ目になるでしょう。

なぜ融資型クラウドファンディングがうまくいきつつあるのか

  1. 「お金」そのものがリターンである
  2. 融資を投資スキームに組み込み、出資者の投資元本の保全が優れている
  3. 運営会社が出資者に利益を還元して薄利多売の方針で運営を行った

がその理由として挙げられるでしょう。

この投資家目線の方針が、融資型(ソーシャルレンディング)の近年の大きな伸びの原動力となっているといえます。

まとめ

各クラウドファンディングとも募集額に対して、名目はことなりますが一定額徴収する手数料がそのビジネスモデルの基本となっています。

ビジネスモデルの安定のためには募集額を増やすことが、何よりも肝要なのです。融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)をはじめ、各クラウドファンディング事業に対するさらなる募集額増加が期待されます。

1)2017年5月時点

執筆者紹介

ファイアフェレット
ソーシャルレンディング投資を始めて5年。ソーシャルレンディング業界では知らない人がいないカリスマ投資家。投資家として参加しながらも、観察者として業界の成長を温かく見守る。ソーシャルレンディングについて書いたり、話したりすることを好み、自身で運営管理しているブログ「ソーシャルレンディング赤裸々日記」は業界関係者必読のブログ。自身の投資履歴も赤裸々に公開中。

(記事提供= クラウドポートニュース )

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