企業の決算発表やIR情報を見る中で「自社株買い」といった言葉を目にしたことはないだろうか。企業が自社株買いを発表すると個人投資家の買いが集まることも多いため、自社株買いの発表に注目している個人投資家も多い。

自社株買いとは 株主にとってのメリットは?

自社株買い
(写真=PIXTA)

自社株買いとは、過去に発行した自社の株式を、企業自らがお金を使って直接買い戻すことを言う。自社株買いが行われると、発行済株式総数はその分だけ減少することになるため、利益に変化がなかったとしても、一株当たりの利益は増加することになる。

株主の視点で自社株買いを考えると、利益が変わらなくても発行済株式総数が減るために一株当たりの利益は増加することになるため、株主への利益還元策と考えることができる。株主にとっては、1株の利益が上がることで利益還元につながる。自社株買いが行われることで、継続的に企業からの買いが入るため、株価の下支えが期待できるという側面もある。そのため、好材料と判断されて、個人投資家からの買いが集まることも多い。

企業にとっても自社株買いはメリットは多い。例えば、ファーストロジック <6037> は2017年7月14日に、2017年7月期の単独業績予想を上方修正した。その際に、上限を5万株(発行済株数の0.85%)、または1億円とする自社株買いを、取得期間は7月15日から12月31日まで行うことを発表した。これらの材料を好感した買いが集まり、2600円前後だった株価はその後、2800円を超えるほどに大幅上昇した。

同社は自社株買いの理由として、「株主還元および資本効率の向上と経営環境に応じた機動的な資本政策を遂行するため」としている。企業は自社株買いを行うことで、自社が保有する持ち株の比率を高められる他、敵対的買収を仕掛けられそうになった時にそれを避けることができる。

反対に、出光興産 <5019> と昭和シェル石油 <5002> との合併に出光創業家が反対しているニュースを見聞きしたことがある投資家も多いのではないだろうか。この件では、出光興産が国内外で公募増資を実施して約1400億円を調達する、と7月3日に発表した。

公募増資とは、新たに株券を発行して株式市場から資金を調達する。公募増資を行うことで発行済株式総数が増えるため、出光創業家の保有比率は約26%に下がる見通しと言われている。自社株買いとは反対に株数を増やすことで出光創業家が株主総会で合併を拒否できなくなるようにし、合併の実現を急ぐためと考えられている。

自社株買い発表への対処法

一般的に、自社株買いの発表を行うと、企業が自社株買いを行うことで株価の下支えが期待できる等の理由から、翌日以降の株価は高くなりやすい。しかし、自社株買いを行う期間を見てほしい。ファーストロジックの場合は、取得期間は7月15日から12月31日までとされている。自社株買いの期間は比較的長く設定されることが多い。株価が高くなった時に、わざわざ急いで買う必要はないと考えることもできる。

また、企業が発表した自社株買いはあくまでも発表でしかない。自社株買いが本当に行われたかどうかは、自社株買いを行う期間が終わってから発表されるIR情報等を見るまではわからない。

自社株買いを行うと発表しても、その期間継続的に上限金額まで自社株を買う誠実な企業がある一方で、自社株買いを行うと発表をしたにも関わらず、全く自社株買いを行わない、やるやる詐欺のような企業も中にはある。自社株買いは必ず行われるものではないことを肝に銘じておかなければならない。

「自社株買い狙い」の先取り投資法

新たに自社株買いの発表を行った企業の場合には、本当に自社株買いを行うのかは期間が終了してみなければわからない。しかし、過去に一度でも自社株買いの発表を行った企業であれば、ニュースリリースやIR情報を見ることで自社株買いを行ったかを前年度の情報から調べることができる。

過去の自社株買いの情報を見ることで、あらかじめ自社株買いが行われるであろう時期をある程度予測することは可能になる。株価が高い時には相応の資金が必要になるため自社株買いは難しくなるかもしれないが、株価がそう高くなければ行われる可能性はあるだろう。

自社株買いの発表が行われる可能性が高そうな時期を予測して、事前に株を買って発表後に売り抜ける、自社株買い先取り売買を行うことも可能だ。さらに、自社株買いをやると言ってやらない、株主を軽視している企業をあぶり出すこともできる。

企業が持続的に成長する過程では、様々な設備投資等を行わなければならず、相応の資金が必要になる。それにも関わらず自社株買いのために資金を使うことは、自ら今後の成長が難しいと言っていることに他ならない。著しい成長は難しかったとしても、業績が順調でなければ自社株買いを行うこともできなくはなるだろうから、企業の業績が順調に推移しているのかの確認も必要だろう。

横山利香(よこやまりか)
国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。ファイナンシャル・プランナー。相続士。WAFP関東理事。「会社四季報オンライン」や「All About株式戦略マル秘レポート」での連載や、ヤフーファイナンスの「株価予想」でもマーケットコメントを執筆する等、株式投資や不動産投資といった投資や資産運用をテーマに執筆、 メルマガ発行 、講演活動、株塾を行う。