職場での「いじめ・嫌がらせ」など、いわゆるハラスメントに関する相談件数が増えているという。厚生労働省が設置した総合労働相談コーナーに寄せられた「いじめ・嫌がらせ」についての相談は、1年間で7万917件にのぼった。
個別労働紛争の相談件数
厚生労働省が公表した「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、2016年度の民事上の個別労働紛争相談のうち、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は7万917件だった。相談内容別でもっとも件数が多く、全体の22.8%を占める。
「いじめ・嫌がらせ」の相談件数を年度別にさかのぼって見てみると、15年度は6万6566件で22.4%、13年度は4万5939件で15.1%、07年度では2万8335件で12.5%だった。年々、件数は増加しており、相談全体に対する割合も増えていることが分かる。
「いじめ・嫌がらせ」以外で相談件数が多いものを挙げると、16年度では「自己都合退職」が4万364件で13.0%、「解雇」が3万6760件で11.8%、「労働条件の引下げ」が2万7723件で8.9%だった。
こちらも年度別に見てみよう。2011年度では「解雇」(5万7785件、18.9%)、「労働条件の引下げ」(3万6849件、12.1%)などの相談が多く、「自己都合退職」(2万5966件、8.5%)は少なめだ。07年度でも、「解雇」(5万1749件、22.9%)、「労働条件の引下げ」(2万8235件、12.5%)が上位となり、「自己都合退職」(1万5746件、7.0%)はそれほど多くない。
「解雇」「労働条件の引き下げ」に関する相談が減少傾向にあるのに対し、「いじめ・嫌がらせ」「自己都合退職」に関する相談件数や割合は増え続けている。
厚生労働省設置の相談機関
実際にハラスメントなど職場での悩みが生じた場合、どこに相談すればいいだろうか。会社によっては、社内にコンプライアンス相談窓口などが設置されている場合がある。ただ、社内では相談しにくいと感じる人もいるだろうし、また、自社内に相談窓口や部署がない人もいる。その場合は、社外に設置されている相談機関を利用するといい。
前述した厚生労働省の総合労働相談コーナーはその1つだ。各都道府県の労働局や労働基準監督署内に設置されていて、職場のトラブルに関する相談や解決のための情報提供を行っている。労働者・事業主のどちらも相談でき、2016年度の1年間で113万741件の労働相談を受けている。
相談内容は「法制度の問い合わせ」「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」「民事上の個別労働紛争相談」に分けられるが、「いじめ・嫌がらせ」などは、「民事上の個別労働紛争相談」に含まれる。2016年度の「民事上の個別労働紛争相談」の延べ合計件数は31万520件にのぼり、そのうちの22.8%が「いじめ・嫌がらせ」に関する相談だった。
なぜ相談件数は増加しているのか
「いじめ・嫌がらせ」といったハラスメントの相談件数が増加しているのには、2つの見方がある。
まずは純粋にハラスメント案件が増えているという見方だ。仕事のかたちや働き方が多様化するなかで、たとえば、部下から上司へのハラスメントなど、これまでほとんど問題視されていなかったいじめや嫌がらせも表面化してきている。
もう1つは当事者が声を上げやすくなったという見方だ。ハラスメントという言葉が一般的になり、何らかの対策を講じる企業が増えてきた。いじめや嫌がらせに悩む社員にとって相談できる環境が整ってきたということも、相談件数が増えた大きな要因の1つだろう。
問題を解消するには表面化させる必要がある。個々の実態や原因を知ることがトラブル防止や解決につながる第一歩となる。(渡邊祐子、フリーライター)