爆弾ハンバーグで有名なフライングガーデン <3317> の株価が好調だ。ハンバーグを外食として扱う企業といえば、ガストなどを展開する、すかいらーく <3197> や東海地方を中心にハンバーグチェーンを展開するブロンコビリー <3091> などが有名だ。

ただ、有名さでは他社に引けを取るもののフライングガーデンも業績の伸びでは負けてはいないようだ。外食産業の業績不振が続く中、業績好調な外食企業の実態を知っておくことで株式投資に役立てることができるはずだ。

そこで、現在の業績とPERなどからフライングガーデンの現在の株価水準を探ると同時に、同社独自の施策として株主還元面に注目して同社の魅力に迫りたい。(業績数値は、決算短信より。株価やPERは8月4日終値ベースで計算)

爆弾ハンバーグで有名 フライングガーデンとは

爆弾ハンバーグ,フライングガーデン
(写真=PIXTA ※画像はイメージです)

俵型のハンバーグを爆弾に見立ててお客さんに提供している。人気商品は爆弾ハンバーグの和風ソース、ハンバーグをダブルにすると税込1598円、シングルでも1078円とファミレスにしては少々高めの値段設定である。

店舗だが、おもに関東の郊外に位置している。群馬県、栃木県を中心とした茨城県、埼玉県、千葉県で店舗を展開している。ウエスタン風の店構えが特徴的である。

最近では金券半額返還フェアが好評を博している模様だ。味だけでなくサービス向上によっても着実にファンを増やしているようだ。さて、気になる業績を確認しよう。

業績は安定的に推移 売上は今期は増加予想

フライングガーデンの直近の業績(15〜17年の3期実績)と予想(18年会社予想)を見てみよう。

15年3月期 売上高71億5000万円 純利益4700万円
16年3月期 売上高72億1800万円 純利益1億2300万円
17年3月期 売上高71億4500万円 純利益1億8800万円
18年3月期 売上高72億0000万円 純利益1億6000万円

売上や利益などの派手な上振れはないが、売上高と純利益共に安定して増加している傾向にある。18年3月期の会社予想に関しては、企業側が人件費や経費節減の必要性を強調し、先行きは厳しいと見ているため、数値的には保守的な予想だと考えられる。しかし、直近発表された月次報告によると、今期の4月から7月までの間で全ての月が前年同月比でプラスの販売となっているようで、好調を維持している模様だ。

では、5月から80%も上昇した現在の株価がすでに割高かどうかを確認してみよう。

割安指標は16.97倍 すでに割高か?

PERを確認してみよう。同社株価は1873円となっているため、18年予想の1株利益あたりで計算するとPERは16.97倍となる。個人的にはこれは適正より少し割安の倍率であると考えている。外食産業においてPERが10倍台だと一般的に割安な水準とみなされる。

同業他社の、ブロンコビリーのPERが現在22.16倍である。外食産業はそもそもPERの数値が高くなる傾向があるため、株価が80%程度上昇したにも関わらず、いまだPERが10倍代半ばを維持していることは割高だとは判定できない。

むしろ、今回上昇が始まった2017年5月以前の1000円代の株価が異常に安かったため、適正な水準まで株価が買われたのだと考えることもできる。

株式の場合、業績の先行きに不安がある場合、PERが割安な水準で放置されることも多く、業績発表などで無事何事もなく通過すると、一気に株式が買い戻されるパターンも多いのだ。

優待は実施せず配当を着実に出すスタイルに注目

筆者が注目した点として株主還元の仕方の違いをあげたい。
多くの外食産業の企業が株を保有してくれている株主に対して株主優待を実施しているが、実はフライングガーデンは株主優待を行っていない。

外食産業の場合、まずは店に来てもらうことが大事なので、株主優待を実施することは、顧客創出のための一つの手段という意味合いがある。フライングガーデンの場合には、その株主優待を一切実施していないところが他の外食産業株と明らかに異なっている。

次に、配当がしっかりと出ていることが挙げられる。
フライングガーデンの1株あたりの配当は30円であるが、現在は株価が上がってしまっているので配当の利回りも1%台と低下してしまっている。しかし、今から3年前の2014年には株価が600円台だったときがあり、その時も30円の配当を出していたのだ。

つまり一時期は5%程度の高配当銘柄の仲間入りをしていたことになる。外食産業株で、優待を行わず、配当の利回りが高いというのは、非常にレアなケースである。

株主還元の面でも、他の外食産業企業とは別の経営者の独自のこだわりがあることが垣間見える。今後業績向上していくようであれば、増配の可能性もあるかもしれない。

今後の展開に期待

都市型の外食チェーンの競争激化が進む中、ここではあくまで郊外のロードサイドでファミリー向けのハンバーグ提供にこだわりを見せる同社をクローズアップしてきた。

最近では、「爽やか旬の厳選オレンジデザート」や「あまおう苺のデザート」など季節のデザートを投入することで顧客あたりの収益アップを狙う試みも見られる。男性のみならず女性の胃袋も虜にするためにはプラスアルファという意味合いでもデザート面の強化は良い手かもしれない。地方地盤の強みを発揮し、着々と株価と業績を伸ばす同社の今後に期待したい。

谷山歩(たにやま あゆみ)
早稲田大学法学部を卒業後、証券会社にてディーリング業務に従事。Yahoo!ファイナンスにてコラムニストとしても活動。日経BP社の「日本の億万投資家名鑑」などでも掲載されるなど個人投資家としても活動中。個人ブログ「インカムライフ.com」。著書に「超優待投資・草食編」がある