2017年、FUJI ROCK FESTIVAL(フジロック・フェスティバル)の入場者数は12万5000人と過去最高の数字を叩き出した。1997年に開催された第1回では台風のため2日目が中止になったとはいえ、観客動員数は3万人である。
フジロックを含め、日本の4大ロック・フェスティバルと呼ばれている、ROCK IN JAPAN FESTIVAL(ロック・イン・ジャパン・フェスティバル)、RISING SUN ROCK FESTIVAL(ライジング・サン・ロック・フェスティバル)、SUMMER SONIC(サマーソニック)も軒並み、盛況だった。
しかし野外フェスに参加する費用が高くなっているという話もある。人口が減りつつづける日本で、ライブ、フェスはどうなっていくのだろうか。
日本のライブ・エンタテインメント市場は好調
ぴあ総研の発表によると、2015年度の「ライブ・エンタテインメント市場」は5000億円を突破した。調査を開始した2000年度と比較すれば約2倍の拡大である。
特に好調を支えているのが「音楽」だ。演劇やミュージカルなどの「ステージ」が微増であるのに対して、「音楽」の市場規模は3405億円と、2014年度から25.2%増加している。これは「ライブ・エンタテインメント市場」全体の7割弱にあたる。また、観客動員も25.7%増の4486万人だった。
フジロックは世界の音楽フェス3位に選ばれた
2016年、イギリスの音楽業界を調査する「Festival Insights」は音楽フェスのランキング「Festival250」を発表した。「Festival250」は観客数、フェスの会場規模、チケットの売上などを総合的に評価したものだ。
フジロックは世界の「Festival250」で第3位に選ばれている。フジロックの公式サイトに書いてあるように、「自分のことは自分で」「助け合い・譲り合い」「自然を敬う」が来場者に浸透し、「世界一クリーンなフェス」として認められたのだろう。
第1位は、Coachella(コーチェラ・フェスティバル)である。コーチェラは1999年に始まった。アメリカのカリフォルニア州で、2週間6日間60万人以上を集める。第2位は、Glastonbury Festival(グラストンベリー・フェスティバル)だ。グラストンベリーは、ジミ・ヘンドリックスが亡くなった1970年に始まったイギリスのフェスである。毎年、13万枚ほどのチケットが数十分で売り切れることでも知られている。
世界的に有名なコーチェラ、グラストンベリーの次がフジロックだ。素晴らしい。ちなみに、74位にはサマーソニック東京が、91位にはサマーソニック大阪も選ばれている。もっと、順位を上げて欲しい。日本で開催されている他の音楽フェスもランキングに入ってもらいたい。そう願うのは当然といえる。
ライブ・エンタテインメント市場が好調である日本で、音楽フェスは将来も続いていくのだろうか?
フジロックにかかる費用は高い?
2017年、フジロックのチケットは一般発売の3日間通し券で4万3000円だ。チケット以外に、新潟県湯沢町苗場スキー場までの交通費や宿泊費、飲食代などがかかる。会場限定のグッズも購入したいところだ。サマーソニック東京のチケットは2日券で3万500円なので、夏の野外フェスは1日あたり約1万円が現在の相場といえるかもしれない。
ティーンエージャーには厳しい金額である。おこづかいを貯めてフジロックに行くのはハードルが高い。若年層は将来の観客である。多感な時期に大規模な音楽フェスをカンタンに体験できないのは寂しい現状だ。
実際、音楽フェスに来る年齢が高くなってきたという話を聞く。出演するアーティストたちも、そういった年齢層が好むラインアップだと指摘する声もある。ライブや音楽フェスに、若者を含めた幅広い層を取り込まなければ、いずれ、来場者数が減っていくかもしれない。その可能性はゼロではない。
世界でもライブや音楽フェスの市場は好調だが
ガーディアン誌が、音楽業界団体「UK Music」の調査結果を報じている。イギリスで、2015年に2770万人だった、フェスやライブの観客数が2016年には3090万人に増加したという。また、1年間の経済効果として12%増の40億ポンドになった。
日本だけではなく、イギリスもライブ市場は好調である。しかし「UKミュージック」の代表は、小さな規模のライブ会場で収益が減っている現状などの問題を挙げている。
市場が好調だからと将来の楽観視はできない。日本でも同じことが言えるだろう。先に挙げた、野外フェスに参加する費用が高くなっていることも、そのひとつだ。他にも問題点はあるだろう。「UKミュージック」の代表は、問題を解決するために、さらなるキャンペーンが必要だと語っている。日本で、音楽フェスが続いていくには、先を見据えた意志と行動が必要なのかもしれない。(吉川敦、フリーライター)