「MBO(Management Buy Out)」を意識したことはあるだろうか。MBOとは、会社の株式を役員に譲渡してその経営権を移転させることで、会社の役員に事業を引き継がせて企業を存続させる方法である。

もともとMBOは、経営陣が親会社から株式や事業を買い取り独立するための手法として米国を中心に広まったものだ。これは、中小企業の事業承継を実現する方法としても活用ができるのである。今回は、MBOによる事業承継策について考えてみたい。

MBOを成立させるためのポイント

(写真=Photographee.eu/Shutterstock.com)
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MBOは、現経営陣から事業や会社を買い取るわけだが、まず問題になるのは買い取った後に「経営を託すことができる従業員がいるかどうか」ということである。仮にその問題が解消されたとしても、次に問題となるのが、その従業員が資金を用意できるかということだ。

中小企業の場合、創業者が自宅などを抵当に入れつつ資金を借り入れている場合なども多く、それらの多くを新しい経営者となる従業員が負担することになる。また、非公開株式の場合には、まず株価を算定し、適性価格を決定することが重要となる。

その上で、従業員の自己資金から不足する分をどう調達するかが、この方法が成立するための最大のポイントとなる。資金繰りの目途がつけば、従業員によるMBOは成功の確率が高くなるのだ。

自己資金以外の資金調達の手段としては、投資ファンドからの出資を仰ぐという方法がある。また、創業者が引き続き一部の株式を保有し、その後の企業の成長状況にあわせて段階的に譲渡するという方法も考えられる。

従業員によるEBOという手法

MBOは経営陣によるバイアウトだが、一方で、従業員が就業先の事業をバイアウトするEBO(Employee Buy Out)という手法もある。これは、複数の従業員が資金を出し合い、就業先の株式を大量に取得することにより、経営に参加するケースが多い。

現経営者からすれば、一見マイナスなイメージもあるかもしれない。しかし、この手法で経営権を従業員に移行させれば、その企業をよく知る既存の従業員が経営にあたることになり、事業を安定的に継続させられるだろう。中長期的な視点での安定的な経営を考えた場合、有利な選択肢の一つとなるはずだ。

例えば、M&Aによって見知らぬ第三者に事業または会社を売却する方法と比較した場合、はるかに安心できる事業承継の方法と言えるのではないだろうか。

また、EBOはM&Aや譲渡に比べると、社内における他の従業員の反発や取引先からの不安なども解消されることになるだろう。EBOは経営の安定化のみならず、業務や商取引においても、スムーズな事業承継を実現できる可能性は高いと言えよう。

創業者にとってのメリットも多い

MBOやEBOによって、創業した企業を存続させることができることはもちろん、引退後の生活資金の確保や、事実上の退職金にあたる額の確保などの目途がつくことも、大きなメリットだ。もちろん、M&Aでも同様の資金の確保ができる可能性はあるが、既存の従業員と互いに協力しながら実現させるMBOやEBOは、売り手と買い手双方のきめ細かい調整が可能となる。

MBOやEBOの成立後、一時的にある程度の株式を創業者が保有することになったとしても、その後段階的に売却ができる条件にしておけば、老後の資金も確保しやすいだろう。

実際のMBOの実施にあたっては、SPCと呼ばれる特別目的会社を設立し、プロのアドバイスを得ながら、金融機関などとも綿密な折衝を行うことになる。時間も手間もかかる作業ではあるが、それに見合うだけの十分な成果を手に入れることができる方法なのだ。

(提供: 百計オンライン

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