国民年金等を運用する年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)が、今秋の本格見直しを前にポートフォリオに含まれる国内株式投資の上限撤回を決めました。「究極の株価対策」とも言われるGPIFのポートフォリオ見直しですが、具体的にどんな動きが起きているのか?また、国家公務員共済組合連合会(国共済年金、KKR)及び日本私立学校振興・共済事業団といった、関連する公的年金での動きを本稿では見て参りたいと思います。
GPIF従来の運用ポートフォリオは債券中心
まず現在のGPIFの資産規模は127兆円(2014年3月末現在)となります。各国の年金基金との比較では、カルフォニア州職員退職年金基金(CalPERS:カルパース)の資産規模30兆円の約4.2倍。ノルウェー政府年金基金(GPF-G)の資産規模88兆円の約1.4倍となり、各国の年金基金より資産規模が大きく、世界最大の年金基金であることが特徴です。
運用ポートフォリオも大きな違いが見られます。従来のGPIFの運用基本ポートフォリオは債券71%(うち国内債券60%, 海外債券11%)、株式24%(うち国内株式12%, 海外株式12%)となっており、債券中心のポートフォリオになっているのに対し、カルパースは株式が64%で債券が17%。GPF-Gは株式が60%と、株式中心のポートフォリオを構成しています。
但し、2014年3月末現在の時価ベースの運用比率では、債券66%(うち国内債券55%、海外債券11%)株式32%(うち国内株式16%、海外株式16%)となっており、アベノミクスによる株高を受けて基本ポートフォリオを比べ、株式の比率が大きくなっています。なお、基本ポートフォリオからの乖離許容幅は±6%であり、株式比率は国内、海外それぞれ18%まで高めることができます。
運用ポートフォリオは国内株式が20%以上へ
このGPIFの運用ポートフォリオの見直しが去る6月に安倍内閣が発表した成長戦略に組み込まれました。成長戦略では、「今秋までにGPIFの資産構成を見直し、株式投資の拡大を促す。」となり、日本株式の割合を増やすことになります。現在の時価ベースでのGPIFの日本株式資産は約21兆円。(全体の16.5%)これが現行ポートフォリオの最大幅である18%になれば、約2兆円の株式追加購入になります。
これだけでも、アナウンス効果を含む株価上昇効果が期待できますが、8月5日の運用委員会で、日本株式資産の上限18%を撤廃し、上限を超えてもいいことが決まりました。またこの動きは暫定で秋に新しい資産割合を決める際に、国内株式を20%以上とするとのことです。
この動きを見るとGPIFの運用ポートフォリオが見直され、日本株式の割合が20%以上となることは既定路線と言えるでしょう。仮に日本株式が20%となった場合、約4.5兆円の追加購入となります。現在のTOPIXの時価総額は約400兆円ですから、その1%強となりますが、今後機動的に日本株式の割合を上げる姿勢が打ち出されており、日本株式の下支え要因となるでしょう。