日本を代表する企業といえば、メガバンクを思い浮かべる人もいるのではないだろうか。

2016年度における日本企業の最終利益ランキングをみると、三菱UFJファイナンシャルグループ <8306> は9264億円で3位、三井住友ファイナンシャルグループ <8316> は7065億円で5位、みずほファイナンシャルグループ <8411> は6035億円で9位にランクインしている。時価総額でも三菱UFJは9兆2000億円で5位、三井住友が5兆7000億円で11位、みずほFGが4兆8000億円で16位である(8月30日現在)。メガバンクは高年収企業としても知られており、学生の就職希望ランキングの常連でもある。

そんなメガバンクであるが、株式市場ではこのところ冴えない展開を余儀なくされている。先週はみずほFGが年初来の安値を更新したほか、他のメガバンクも安値圏で推移した。みずほFGの配当利回りは約4%に達する場面も見られたが、それにしてもなぜメガバンクがここまで売られたのだろうか?

国策、景気、金利動向を反映

メガバンク株の特徴の一つに「国策、景気、金利動向」に敏感な傾向がある。

たとえば、みずほFGの株価は2012年末の時点で157円であったが、いわゆる「アベノミクス相場」と呼ばれる日本株上昇で2014年1月には240円の高値を付けている。アベノミクスによる景気刺激策と金融緩和策を好感し、約1年で50%もの上昇を演じたのだ。日本政府が「リフレ政策」へと舵を大きく切ったことで、メガバンクはその象徴として外国人投資家の買いも呼び込んだと言える。

その後、みずほFGの株価は2015年初まで210円〜180円のボックス圏で推移したあと、同年6月には280.4円まで急騰する。2014年末の202.5円からおよそ半年間で約40%の上昇だった。その原因となったのが、米国の「利上げ観測」だ。

銀行の本業は、顧客から預かった預金を貸し出しや投資に回して「利ざや」を稼ぐことだ。金利の上昇は運用商品の利回りが上がるため、銀行にとっては「利ざや」の改善要因となる。実際に米国で利上げが実施されたのは2015年12月なのであるが、株式市場ではかなり早い段階から「先取り」して世界中の銀行株が買われたのだろう。

メガバンクの株価は国策、景気、金利動向に敏感である。これは日本に限らず、世界の銀行株に共通して言えることである。

米利上げ期待の後退で売られる

ところで、今年7月にみずほFGの株価は日経平均株価の2万円回復を好感して一時208.9円の高値を付けたものの、その後は下げトレンドを余儀なくされていた。この背景には、米国の「利上げ期待の後退」を指摘することができる。

米FRBは6月に利上げを行った。市場では今年中にあと2回の利上げが実施されるとの見方が有力とされていた。ところが、米国の消費や物価関連の経済指標に「景気のスローダウン」を示すものが目立ち始め、さらに地政学リスクの上昇などもあって「利上げはあと年に1回出来るか出来ないか…」という見方に変化し始めている。

実際、8月29日に米長期債利回りは2.08%まで低下。昨年の米大統領選直後以来約9カ月半ぶりの低水準をとなった。金利の上昇期待は大きく後退したと言えるだろう。こうした状況を背景にメガバンク株が軒並み売られたと見られる。

メガバンク株が再び人気化する余地も

もっとも、現在のメガバンク株は割安になりつつあることも確かだ。

みずほの配当利回りは3.98%で、日経平均採用銘柄の平均1.83%の倍以上だ。PERは8.7倍と日経平均のPERの13.7倍を大きく下回る。ユーロ圏では量的緩和策を段階的に弱める「テーパリング」の可能性が芽生えているほか、日銀もいずれは金融緩和の出口へと向かうこともないとは言えない。日米欧の金利動向次第ではメガバンク株が再び人気化する余地を残しているだけに、今後の動向を注視したい。(ZUU online 編集部)