政治家はしばしば「日本がこのままでは財政破綻する」などといって国民の不安をあおり、消費税の増税を迫る。著者は政治家が良く使う「財政破綻」「国債暴落」「ハイパーインフレ」「年金破綻」といった問題は、具体的なデータを検証するとたいていが根拠のないものだとわかると説く。さらに、補助金や増税という上記問題への解決策は、甘く的はずれなことが多く、結局は国民がツケを払わされることになると、実際の数字をもとに批判している。

著者の上念司氏は『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』(講談社+α新書 2016/9/21)や『日本経済を滅ぼす「高学歴社員」という病』 (PHP文庫 2017/6/23) をはじめ、経済をテーマにした書籍を多数上梓する経済評論家だ。

『タダより高いものはない』

著者:上念 司
出版社:イースト・プレス
発売日:2017/8/10
価格:930円(紙版、税込み)

日本経済は財政破綻していない

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「年金破綻」や「国債暴落」が起こる根拠としてよく挙げられるのは、日本が財政破綻状態にあるということだ。著者は日本が財政破綻状態にあるという指摘や、まもなく財政破綻するというのは真っ赤なウソだと一蹴する。

著者は日本政府の総債務は確かに1000兆円以上あるが、多額の借金を背負っているかのようなイメージ操作がなされていると述べ、債務だけではなくバランスシートの反対側にある資産を見るべきだと主張する。

この解説に使用されるバランスシートが特徴的だ。著者は日銀のような中央銀行は政府の子会社なのだから、日銀と政府を連結したバランスシートで財務状況を検証すべきだと説く。このバランスシートでみると、政府資産は世界最大規模であり、債務から資産を差し引いた純債務で見た場合、日本が抱える債務は100兆円~200兆円程度であると述べる。

さらにアベノミクスの効果で2015年から2016年の間に資産が106兆円増加し、純債務は54兆円も減少している点を指摘し、日本経済は急速に回復し、財政再建はすでに終了していると結論づけている。

最低賃金が上がるとやはり失業者が増える