日経平均予想レンジ19,371~19,824円

今週は、北朝鮮の弾道ミサイル発射(29日)を受けた地政学リスクの高まりを警戒して、日経平均は一時下値支持線の200日線を下回った。

その後、米国株式への影響が限定的だった上、良好な米経済指標の発表をきっかけにドルに買戻しが入り、19,700円台への自律反発を見せたことで、地政学リスクを嫌った動きはいったん落ち着いてきた。

海外の焦点

北朝鮮は「軍事作戦の第一歩でグアム島を牽制するため意味ある前奏曲」と述べている。昨年は建国記念日に核実験を実施しているだけに、9/9の建国記念日までは世界を揺るがしかねない。市場では、こうしたリスク内包下では慎重姿勢を崩すことはできないとの見方が広がっている。

米国では、トランプ政権の弱体化が懸念されている。バノン首席戦略官が去って、ケリー首席補佐官とマクマスター補佐官の米軍出身者主導となり、政権は安定すると考えられるが、経済対策は議会が主導で、軍人やトランプ家は担当外となる。

従って、9月は連邦政府の債務上限引き上げ問題に関する議会対策が重要課題となる。ムニューシン財務長官とコーン国家経済会議委員長では、議会対策には不安が残るとの見方が強い。これまで米国株は議会対策のまずさを大目に見てきたが、債務問題の混乱も想定されるだけに、注意深く見守っていきたい。

また、30日トランプ大統領は税制改革をテーマに演説を行った。現行35%の法人税率を15%に引き下げるとの主張を繰り返したが、市場の反応は限定的。20~25%でまとめようとしている議会との乖離が目立ち、トランプ氏の意向は変わらないかもしれないが、法律を決めるのは議会だ、との指摘は多い。

国内の焦点

テクニカル面では、下値支持線の200日線を下回ったものの切り返してきた。取引時間中の200日線割れは米大統領選の開票報道を受け、相場が大きく調整した翌日(2016/11/10)以来となる。リスク回避ムードが広がる中で、8/18-8/30の足が下値でのアイランドリバーサルを形成したこともあり、底入れ感が強まるには25日線(19,692円)付近を明確に上抜けることが求められる。

来週の株式相場

以上、来週は名実共に9月相場入りとなるが、引き続き米国政治、北朝鮮情勢、米金融政策の動向を睨みながら自律反発から方向感を探る展開と捉えている。日経平均のレンジは上値は、8/15高値19,824円が意識され、下値は8/29窓埋め19,371円が目処となる。

株式見通し9-1

伊藤嘉洋
岡三オンライン証券 チーフストラテジスト